Invisible Moment *//INCIDENTAL VANISHING STARS//
20071222 2304
the Little Match girl*0

HUgE No.042 February 2008

年末前の三連休初日。曇りだった空からは小雨が降り、気温も誰かの血圧のように低かった。暖房で結露した窓から外の世界に目をやり、「雨か…。」と心の中で呟いた。隣の駐車場に駐車してある車の下から猫がこちらの様子を窺っていた。どうやらこの週末の雨を憂いていたのは自分だけではないらしい。テーブルの上からコーヒーカップを手に取り、淹れたばかりの珈琲を一口だけ口に含んだ。その後、もう一度窓の外の駐車場に目をやったが猫は僕に後姿だけを見せていた。雨が本降りになる前に…と思い、疲れきった部屋の蛍光灯と半開きになったクローゼットに視線を移した。
取り立てて年末という気持ちはなかった。いつ頃からだろうか、あの空気や雰囲気を感じなくなってしまったのは。通信簿を貰って冬休み、なんてものとは無関係な存在になってしまってからだろうか。毎日同じ電車で同じ格好で同じ風景を見続けている僕は、真空パックされた冷凍食品のように世界の温もりから隔絶されてしまっている気分になった。街で流れる音楽やTV番組がクリスマスや年末を伝え、それが人々の中で暖かさに変わる。雰囲気のある音楽やクリスマスケーキは人々の空気感の共有を演出し、ある種の共同幻想として機能する。人々の心に灯ったその灯りは連鎖し、寒空の下、街角でマッチを売る少女まで届くのだろうか。
イルミネーションで彩られた街中を人々が行き交う。新しい蛍光灯と洋服を掛けるためのハンガーを手に持ち、信号待ちでマフラーに首をすくめた。冷たい空気と部屋を出る前に少しだけ付けた香水の香りが僕に自分の呼吸を自覚させる。相変わらず暗い顔をした空からは小雨が舞っていた。朝、窓の外の駐車場で目が合った猫はどうしているだろうか。そんなことを何となく思いながら、自動車用の信号に目を移した。横断歩道の信号が変わるまでにはもう少し時間が必要だと彼は答えていた。


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