Invisible Moment *//INCIDENTAL VANISHING STARS//
20090212 0122
intermission...*0

空調によって整えられた少し乾燥した部屋の中で、PCのモニタを眺め疲れた僕は、椅子の背凭れに寄り掛かりながら結露した窓の外をぼんやりと見ていた。今にも泣き出しそうな薄暗い曇り空は窓の外のすべての世界を灰色に染め、街の体温の低さを誰かに静かに伝えている。先週から続いていた風邪気味の体調が僕を部屋の中に閉じ込めていた。

東京で過ごす何度目かの冬。
この季節の空気の刹那さは、心の中に何か抽象的な感情の痕跡を残していく。

僕は少し薄暗い部屋の中で椅子から立ち上がり、少し前に沸かした珈琲をカップに注ぐと、ソファに居場所を移した。
一口だけ珈琲を口に含み、カップをテーブルに置く。あの独特の香りが鼻腔を伝わる。

主を失ったPCのモニタがスリープに切り替わり、部屋の中にはエアコンの低い動作音が響き渡る。
加湿器から出る霧がその風によって刻々とカタチを変えていたが、彼の健闘空しく部屋の湿度計は低い値を指したままだった。

久しぶりの休日。
少しずつ流れていく緩やかな時間が、忙しい日常とコントラストを描く。
普段あまり考えることができない、ぼんやりとした思考や感情に輪郭を与えるために、
ふと立ち止まって何かについて考えるという時間がいつも僕には必要だった。

手が届きそうで届かない、その何かに触れたくて、人々は何かをつくり、何かを描き続ける。
それは何も才能豊かな人間だけがそうなのではなく、世の中を生きる人々の多くがそうなのではないか。
そして、その人々の描く夢の総和が社会を前に進めていく。

薄暗い部屋の中でソファに座り、日常の中の自分を振り返りながら思考の断片を拾い集めていく。
少なくとも自分が何か文章を書いたり、ものをつくったりする理由は何となくそこにある気がした。

そんな取り止めの無い思考を拾い集めていくと、すぐに僕の両手はいっぱいになった。
そしてだんだんと意識が遠くなっていき、いつしかソファに横になっていた。

僕はエアコンのリモコンに手を伸ばし、電源を切った。
その際、手の甲に触れた珈琲カップの冷たさが時間の経過を感覚的に僕に教える。
短い電子音の後、程なくしてエアコンとその室外機の音が止んだ。

妙な静けさが部屋の中を支配する。
閉じた瞼の裏には、体温の低い窓の外の風景が微かに見えたような気がした。


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