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Gucci 15-16AW Men's Collection

Frida Gianniniが予定よりも早く退任したため、Gucciのヘッド・アクセサリー・デザイナーであるAlessandro Michele率いるデザインチームによって提示されたGucci 2015-16年秋冬メンズコレクション。サウンドトラックに使われたのは、Tom Fordによる映画「A Single Man」の"Stillness Of The Mind"。

Frida Gianniniが描いたジェット族のような戦闘力高めの服から中性的な気だるさを含んだ服への転換は、Gucciというブランドにおいては確かに変化がありましたね。一週間程度の短い期間でコレクションの内容を大幅に変更してランウェイショーは行われたようですが、中性的な男性モデルに混じって女性モデルが歩いていたのもGucciとしては新しさがあったでしょうか。ただし、それらは、Gucciというブランドにおいては、という但し書きが付きます。

Vanessa Friedmanのアーティクルを読んで思ったのは、この短期間でフリーダがつくっていたであろうコレクションをどこまで変えたのか?ということ。Alessandro Michele率いるデザインチームが本当にほぼゼロから作り直したのか、もしそうだとすればランウェイショーというものは一週間程度でできてしまうものなのだろうか?ということですね。
フリーダが予定よりも早く去ることになった理由は定かではありませんが、ショーの一週前に彼女がいなくなったとすれば、通常はそのままフリーダが制作していたコレクションを完成までもっていって提示するか、ショー自体を取り止めるということになるでしょう。それが今回のような形でショーを強行したのは、一刻も早くGucciのイメージを刷新したかったというKeringの思惑なのでしょうか。ビジネス的側面から言えば、ショーを中止するという選択肢は最初から無かったと考えるのが妥当ですね。個人的にはビジネスよりもブランドイメージを優先して、ショーを中止してプレゼンテーション形式で提示するのも手としてはあったと思います。

多くのデザイナーはランウェイショーを自身のアイデアを世に提示するための、ある意味で神聖なものと捉えていると思います。そういった考えも昨今のメディア状況の変化によってランウェイショーのショービズ化やエンタメ化が進み、徐々に希薄になってきているのかもしれません。時代の流れと共にランウェイショーの立ち位置自体も変化しつつあるのは事実ですが、絶対的に時間が無い中での付け焼刃的なものではなく、きちんと料理されたクリエイションとしてのランウェイショーを個人的には求めたい、と今回は思った次第ですね。

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Maison Margiela 15SS Artisanal Collection

First Lookから明らかにそこには「変化」がありましたね。ショーが進むにつれて思い出される懐かしい感覚。約4年振りのファッション界への本格的な復帰。改められたブランド名を背負って新たな出発となったJohn GallianoによるMaison Margiela 2015年春夏アーティザナル・コレクション。

"Big Spender"をBGMにセットして行われたランウェイショーは、ガリアーノが描く色気のあるロマンチシズムを帯びた女性像が主となり、メゾンのアイデンティティであるシュルレアリスムはGiuseppe Arcimboldoのようなファウンド・オブジェクトによるだまし絵的な表現として付帯的に存在する。ボリュームとレングスを伴った大胆なカッティングに、流動性を伴うファブリック。仄かに香るエレガンスとデカダンス。シュールな奇妙さや捕らえ所が無いような感覚はかなり薄れ、それらは大人の女性が小気味好くデコンストラクションされたアーティスティックな服を纏っているかのような雰囲気を醸し出す。
装飾的にオプションとして存在するシュルレアリスムは、「不思議の国」の感覚を服に描写する。少女性や無邪気な幼児性を不完全性として用い、その可笑しさを可愛らしさに翻訳することでロマンチックな女性像に遊び心と強度を与える。

意味内容を捨象した非意味的なブランドとして存在していたMaison Martin Margiela。思いもよらなかったJohn Gallianoという世界とのマッシュアップによりその抽象性に輪郭を与えられ、非意味的なものから意味を有したものへ、混沌から秩序へ、飛び道具的なブランドからよりセオリー通りのメインストリーム側へと引きつけられる。

彼がデザイナーに就任した時はどうなることかと思いましたが、結果を見てみれば既に完成度はとても高く、さすがはJohn Gallianoといったところですね。メゾンのコードを的確に捉え、巧くコントロールしている感じがあったと思います。個人的には久しぶりに彼のコレクションが見れたので服やドレスにもう少しツヤや煌きがあっても良かったかなとも思いましたが(ノスタルジー)、それはそれでマルジェラというブランドとしてはどうなんだろう?という気もしますね。
あとは、Comme des Garconsをよりアダルトにしてエロチシズムとロマンチシズムを加えるとこんな感じになるのかな、ということや、全体をもっとハードにして死生観を加えればAlexander McQueenっぽくもなるかな、といったことも何となく思いました。そういう意味では、刺激的なマッシュアップだったと思います。

コンセプチュアルなシュルレアリスムをヴィジュアル的なスペクタクルやファンタジーとして、その矛盾する2つの概念をガリアーノがどのように解釈するのかというのは、今後、注目したい点ですね。既に確立した世界観の中から新しいものが生まれる可能性は、きっとそこにあるのでしょうから。

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