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Dior Homme 11-12AW Collection

Kris Van AsscheによるDior Homme 11-12AW Collection。タイトルは、"ENFOLD / UNFOLD"。
11SSコレクション"Lessness"において行われたファブリックやシルエットの流動性に関する調査は、今回の秋冬コレクションにおいても引き続きメインテーマとなったようですね。ただし、秋冬は春夏に比べて固いファブリックとレイヤードになるため、単純に春夏と同じ方法論では実現が難しく、ノー・インサイドライニング・コートなどでは両面カシミアにする等をしているとのこと。プリーツ入りのトラウザー、ハット、トレンチといったクラシックな固いメンズ・ワードローブを如何にしてルーズに快適に表現できるか?という考えがコレクションのベースにあったようです。この辺は彼の設計思想の基本となる部分ですね。

Kris Van Asscheのシグネチャのコレクション・レビューの際にご紹介したInterview Magazineの記事において、Dior Hommeとシグネチャの違いについて彼が話している部分があるので簡単に書いておくと、彼がコレクションをつくる時は想像上の男性についていつも考えているとのこと。そして、その架空の男性は自分と共に成長し、進化をする、と。Dior HommeとKris Van Asscheにおいてその男性はわずかに異なるが、結局のところ同じ原則を共有するのだとか。

Dior HommeとKris Van Assche。その2つは何よりも心の有り様であって、連続的に彼の心の中で意見を交わす。Dior Hommeのファースト・コレクションの際、2つをマスマティカルな方法によって区別しようとしたけれど、後になってその2つの宇宙は同居することができることを思い付いた。コレクションの制作においては、もはや2つを区分することについてではなく、利用可能なクリエイションの実現手段が違うというテクニカルな現実について考えている。そして、その結果としてコレクションは根本的に異なったものとなる。
Kris Van Asscheでは非常にパーソナルな必要性からコレクションを開発し、私はKris Van Asscheというブランドの最初のクライアントだった。Dior Hommeでは、自分の嗜好に従う部分もあるが異なる種類のカスタマーについても考えている、とのこと。

いつものように意訳しているので詳細は原文をご参照頂ければと思うのですが、上記のようなことを踏まえた上でコレクションを見ると見方が変わって面白いかなと思います。

話をコレクション・レビューに戻して。
シャンデリアに暖炉、フレンチドアをランウェイにセットして行われたショーのカラーパレットは、チョコレートにブラック、グレー、シルバー、そして、終盤に登場した目の覚めるようなレッド。包み込むようなソフトな質感のファブリックに、レイヤードされたクロージング。ハイネック・ニットはシンプルながらノーブルなその静かな美しさを伝え、それとは対照的にunravelingなニットにはもう少しカジュアルな若さのようなものがありましたね。ジャケットやコートの前身頃が展開し、内側の切り替えしが見えるというアイデア。ワイドブリム・ハットはアーミッシュのように。ワイドパンツのドレープは流動性への頷きがあった感じですね。

シグネチャよりもシャープでソフィスティケートされた雰囲気がコレクションにはあったかなと思いますが、どうでしょうか。マテリアルとテーラリングのテクニックによってソリューションを実現するという方法論。そしてそれを積み重ねていくのが彼らしくて良かったかなと思います。

via style.com wwd.com fashionwiredaily.com dazeddigital.com showstudio.com tFS

posted by PFM