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Maria Grazia Chiuri and Pier Paolo Piccioli interview by Giancarlo Giammetti - Interview Magazine

Interview MagazineのサイトにアップされているValentinoのMaria Grazia ChiuriとPier Paolo Piccioliのインタビュー記事が面白いですね。インタビューアーはValentino Garavaniのビジネス・パートナーを48年間務め、現在は同社のHonorary Presidentを務めているGiancarlo Giammetti。インタビューは、今から12年前にValentinoでアクセサリー・デザイナーとして働き始めたChiuriとPiccioliが、Alessandra Facchinettiの後任として2年半前にValentinoのクリエイティブ・ディレクターに就任したという話から始まります。

面白いと思った話題を順を追って簡単にピックアップしておくと、Suzy Menkesが彼らのコレクションを保守的で驚きが足りないと評したことに対してPiccioliが、ファッションには一貫性が必要だと思っているのでワイルドでクレイジーなコレクションをやる時分ではなかったと答えていますね。そして、近年のファッションは「イメージ」がサルトリアル・ディティーリングとワークマンシップを意味するトラディッショナルなファッションに打ち勝った、というChiuriの指摘は消費社会論などではずいぶん前から言われていることですが的確ですね。つまり、「我々はイメージが中身よりも重要である時代に生きている」、と。

ただ単に衆目を集めるランウェイショーを行うことは、ランウェイと同時にブティックでも(顧客に対して)有効であるコレクションをデザインすることよりも簡単である、というのも頷ける話。ランウェイ映えする服や雑誌のエディトリアル映えする服が必ずしもブティックで実際に手に取って、袖を通して、良いと思える訳ではないということですね。
コレクションをデザインすることは自己満足のために服をつくることではなく、偉大なデザイナーであるValentinoやSaint Laurentがそうしたように、その服を着る女性のことを常に考えるということである、と。何か芸術的なことをしたいと思うなら、私はアート・インスタレーションをするつもりです、というPiccioliの発言はあくまでもリアリティのある作品をつくる彼らしいなと思います。

そして、インターネットによって情報が流通する今日におけるファッション・ショーの有効性についての話に関しては、顧客の欲求がブティックにアイテムが並ぶまでの6ヶ月間持続するだろうか?とGiammettiが懐疑的な発言をし、一般的なランウェイショーを行わないTom Fordを引き合いに出して話が展開していきます。

ChiuriがTom Fordに対して、彼はコレクションを披露する革新的な方法を確かに見つけたと言いつつも、ファッション・ショーの本当の問題点は存在理由を持っていないブランドの飽和にあると指摘。フィロソフィーや明確なレゾンデートルを有しないブランドのショーがファッションウィークにおいて飽和し、本当の意味でのファッション・ショーの有効性が発揮できていないというのはありそうな話ですね。グレシャムの法則みたいな感じでしょうか。

そして、ここでTom FordのしていることをPiccioliが「パッケージング」と表現しているのがとても面白いです。プレゼンテーションの違いというものは、言うなれば包装の違いである、と。ブティックも言うなればパッケージングであって、ブティックでのアイテムの陳列の仕方やショッパーも「イメージ」のための「パッケージング」と言えるかなと思います。正に中身よりもその外側(イメージ)が重要になっているということですね。Tom Fordのコレクションに中身が無いとは言いませんが。

更にPiccioliは続けて、Tom Fordはブランドのファウンダーであるので彼のイメージとライフスタイルは彼が提示する服とイコールとなる、と。しかし、我々や大方のブランドはそれとは違った何か他のものを表現しなければならないと言い、Valentinoに関してそれはある特定の女性の精神にあるとのこと。
ある特定の女性の精神に関して彼は、「もし仮にValentinoに関して何か最も重要なものがあるとするならば、それは女性がValentinoを着ているとき、女性が美しいと感じるということです。美しさとは彼の仕事の中心部分(core)にあるのであって、それは周辺要素(element)ではありません。それゆえ、その精神を捕らえることは繊細で意味深い仕事なのです。」と話していますね。

この後も、そのValentinoの精神を捕えて、その美しさの概念をどのように更新するのか?ということについてインタビューは進んでいくので、時間のある時にでもチェックしてみると良いかなと思います。

posted by PFM