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Jil Sander 12SS Men's Collection

過去2シーズン続いていたネオンカラーから離れ、ダークトーンのカラーパレットによって描かれたRaf SimonsによるJil Sander 12SS Men's Collection。モデルのヘアスタイルでも表現されていたように、油膜のようなリキッド・テイストを伴ったコレクションはJil Sanderの領域よりもRaf Simonsの領域でのクリエイションといった感じでしたね。

スクールボーイのようなハイウエスト・ショーツにRaf Simonsが"urban scout wear"と呼んだパイソン・テクスチャー等によるボディバッグ、曲線を描くクロッシェセーター、PVCコートにジャケットなど。彼の選択だということが一目で分かる抽象性を含んだそれらの組み合わせは、未完成な感覚をコレクションに与えていたかなと思います。今回のコレクションはRaf Simonsの領域に留まるものでしたが、未完成感という要素はミニマリズムにおいても重要なファクターですね。それは不確実性としてコレクションの中で機能させることができます。

一般的にミニマリズムとは対象から情報を省いていき、極端な単純さや単純化されたパターンの反復性によってある空間や領域において逆説的に何かの存在を感じさせるという表現手段であって、それらは基本的にニュートラルでナチュラルな性質を保有し、ある意味で言えば中立性を支持する概念だと思います。ただ単にベーシックでプレーンなものをミニマリズムと呼ぶことがありますが、ミニマリズムとは基本的にvisibilityの向こう側に何かが存在していなければならないですよね。
今回のコレクションのように暗く生々しさのある方向性で、ピュアな中立性や穏やかさも失われた条件下において成立し得るミニマリズムがもし仮に存在するのならば・・ということは何となくコレクションを見ながら思ったことです。

WWDによるとRaf Simonsの契約は更新されたようなので、Jil Sanderでの彼のクリエイションは今後も引き続き観れそうですね。彼の代わりになるデザイナーは自分の中では思い付かないので、クリエイティビティという側面から言えば契約更新の判断は間違いではないと思いました。

via style.com nytimes.com vogue.co.uk showstudio.com tFS

posted by PFM