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Christian Dior 12SS Haute Couture Collection

デザイナー代理を務めるBill Gayttenによる第二のクチュールコレクションとして提示されたChristian Dior 12SS Haute Couture Collection。Bill Gayttenから説明があったように今回のコレクションのテーマは、"an X-ray of Dior"。

レッドとヴァイオレットを加えたモノクローム・カラーパレットに、トランスパレンシーに薄い層を成すファブリックがアトリエの技巧を露出させる。クラシックで静かに美しさを放つ花の刺繍と千鳥格子、クロコダイルを用いて表現されるブランドの遺産としてのバージャケット、ムッシュ ディオールの"Elegance must be the right combination of distinction, naturalness, care and simplicity,"という格言が描かれた豊かなボリュームのスカート、アトリエのクラフトワークの賛歌としてのステッチ、柔らかなグラデーションを描くマルチレイヤーのクリノリン、ドレスの裾に煌きを与える眩いスパンコール、クチュールらしくスケール感のあるイヴニングドレス。

多くのFashion LoversがChristian Diorという名前を思い浮かべて思い描くChristian Dior像をそのまま体現するようなコレクションは、デザイナー不在の緊張感のあるこの状況下において適切に機能していますね。John Gallianoにあった過剰さが無くなり、クライアント・フレンドリーで丸くなったコレクションはとても分かり易い優雅さと安心感を与えてくれます。ただ、ブランドのアーカイヴを用いたマーケットイン的な手法はビジネス的に言えば短期的な戦略であって、長期的な視点で言えばやはりChristian Diorを再創造するような才能あるデザイナーが必要不可欠ですね。ハイファッションの世界はデザイナーを核にしたツリー上の組織構造がメインであることは(それが昔からある古い組織構造だったとしても)今後も変わらないでしょうし。

今回のコレクションをFWDのGodfrey Deenyがヘミングウェイの"grace under pressure"という言葉を引いてレビューしていたのが印象的だったのですが、この言葉は「プレッシャーのある状況下においても優雅に。」という意味。苦しい状況や困難な状況においても平静を保ち、優雅であること。それをヘミングウェイは「勇気」と呼んだようですが、Bill GayttenのChristian Diorが教えてくれることは確かにそういうことなのかもしれないですね。

via style.com vogue.com nytimes.com guardian.co.uk fashionwiredaily.com tFS

The Day Before Dior.
Scenes from the Christian Dior haute couture atelier.

via tmagazine.blogs.nytimes.com

posted by PFM