This is Not here - *//LIKE TEARS IN RAIN

Chanel 14SS Haute Couture Collection

Sebastien TellierのパフォーマンスをBGMにセットし、Grand Palaisで行われたKarl LagerfeldによるChanel 2014年春夏オートクチュールコレクション。カールによると今回のセットは、"a futuristic nightclub"とのことで各所のレビューでは"Cambon Club"と呼んでいましたね。

ボレロのようなクロップド・ツイードジャケットにコルセットを合わせ、膝上丈のスカートを基本形にして進行するランウェイショー。Tim Blanksがレビューしているように、女性を自由にしたChanelというブランドでコルセットを用いるというのはカールなりのジョークといったところでしょうか。
シルバーのエルボーやニーパッド、そして、今回のコレクションのキーとなっていたMassaroによるパイソン/レース/真珠/ツイードを用いたスニーカーがスポーティーに煌めく。モデルが軽やかにスキップ等をしながらウォーキングをしていたのは、これがクチュールコレクションであることを忘れさせますね。前述のコルセットとこのスニーカーで全体のバランスを取っているとも言えます。カールは、「とてもアンドロジナスでボーイッシュ、そして、とてもフェミニンな傾向があります。しかし、スティレットヒールでも、プラットホームシューズでも、ルブタンでもありません。」と話していましたね。

Christian Diorのコレクションと同様に爽やかで快活な軽やかさがありますが、Chanelはパステルカラーを点在させることで効果的に色を利用していたかなと思います。描かれる女性像はChanelの方がとても若く、お転婆娘的な印象さえあったと言えますね。

あるメディアにおいてそこに流通するメッセージの内容はそのメディアの特性によって規定される。自分の考えや思いを誰かに伝えるためにはメッセージを記号として外部化し、それを相手に届ける必要がある。公的なメッセージならば郵便を、急ぎの用件は電話を、公的でも急ぎでも無い用件はメールを、不特定多数の相手にたわい無い話をするならばTwitterを、といったように我々はメディアをメッセージの内容とそのシチュエーション等によって無意識に選択しているが、これらは逆説的にそのメディアの特性によってそこに流通するメッセージの内容が規定されていると言える。

翻って、ファッションというメディアにおいてもそのメディア特性がそこに流通するメッセージの内容を規定している。ファッションとは着用者のヒューマニティ(メンタリティ、アイデンティティ、etc.)を表現すると同時にそれらを強化・拡張するというメディア特性を持つ。その特性がファッションというものを規定しており、従ってデザイナーはその時代に合わせた男性や女性の内面性を含めた理想像を描くことになる。
Christian DiorとChanelというビッグメゾンが"Lightness"にフォーカスしたクチュールコレクションを今回行ったことの意味は、きっとそういったところにあるのでしょうね。

via wwd.com vogue.com nytimes.com dazeddigital.com tFS

via pleasemagazine.com

Christian Dior 14SS Haute Couture Collection

Rodin Museumの特設テントにValentine Schlegelの作品から影響を受けたオールホワイトのスペースをセットして行われたRaf SimonsによるChristian Dior 2014年春夏オートクチュールコレクション。
今回のコレクションについてラフは、「芝居がかった要素を取り外して、よりリアリティを与えることについて考えていました。」「デザイナーとして、ショーにおいて女性にファンタジーを誘発することと同様に女性にリアリティを与えることの両方の義務があります。」と話していましたね。

繊細なファブリックに円形カットワークを多用し、フェミニティとソフトネスにフォーカスして展開された今回のコレクション。トランスパレントなレイヤリングによって澄んだ水を思わせるドレスの透明感は、描かれる女性像が軽やかで瑞々しいことを示唆する。多孔的で透過性の高いドレスの開放性は、快活な女性のメンタリティをそのまま具現化したようでもある。

Mark HolgateSuzy Menkesらが指摘するようにAndre CourregesやPaco Rabanne、Pierre Cardinといった1960年代フューチャリスティック・フィーリングが微かにありましたね。ラフの場合はクレージュ等をそのまま参照するというよりも、Miuccia Pradaを通して参照している感じがあるかなと思います。

Anna BattistaがPaolo Scheggiの作品と川久保玲によるComme des Garcons Homme Plus、そして、今回のChristian Diorのコレクションについて論じているのが面白いですね。
Comme des Garcons Homme Plusは1981年のコレクションっぽくもありつつ、ジャケットのポケット部分をカットすることで機能性を無効化するという提案がありました。もちろんそこには、カットされた穴から覗くインナーによって視覚効果を齎すというデザインの意図があります。ちなみに、ガスマスクのようなJulien d'Ysによるヘアスタイルは同様に「穴」をモチーフとしつつも、ヒンズー教の象神「ガネーシャ」をイメージしたもので、"Holy"と"Holey"のダブルミーニングになっていますね。

Christian Diorのパンチング・カットワークも同様に「空間と視覚効果の並置」という意図がそこにはあり、また、スポーツウェアのメッシュ構造のような通気性という(着用者を快適にする)機能を実現していますね。「空間と視覚効果の並置」とは、ミニマリズム的に言えば「空間を視覚化する」(今回の場合は、ファブリックをカットすることでその空間を視覚化することに成功している)ということになります。
1つのアイデアで複数の問題を解決しているというのが、カットワークというテクニックの有用性を指し示していると言えるでしょうか。

「(コレクションにおいて)コンセプトが無いことは、本当に初めてのことです。それは、より非常に抽象的です。」というラフの説明がありましたが、今回のコレクションは最近表出してきたRaf Simonsらしさや彼のクセがほぼ消失していたかなと思います。ほぼ1つのアイデアで最初から最後まで展開されているというのも単調な印象を与えましたね。Pre-Fallの方が多様性があって良かったかなと。tFSでは、Balenciaga by Alexander Wangのようだという指摘もありましたが、分かり易いスウィートなコレクションが若手デザイナーっぽさを感じさせたのだと思います。こういった点についてラフはもちろん自覚的であり、それでもなお今回のコレクションを提示するに至ったのだと思うのですがどうでしょうか。

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Dior homme 2014-15 Winter Collection

Tennis Club de Parisにパーケットのランウェイを設置して行われたKris Van AsscheによるDior homme 2014-15 Winter Collection。Front Rowの各シートにはインヴィテーションにもコラージュされていたスズランの花が置かれていたようです。

胸ポケットにスズランの刺繍やブローチがあしらわれたピンストライプのスリーピース・スーツ、13SSコレクションのメタルボタンにも使われていたクレストを用いたチャーム付きのピンホールカラー・シャツ、ジャケットやタイにはスズラン、スター、ハートのアイコンと"30 AVENUE MONTAIGNE"、"CD"といった文字がタイポグラフィされたラインが走る。

ポルカドットやスターを点在させたセットアップ・スーツやシューズ、ロング丈のファー・コート、ムートン・レザー、アメカジ色の強いブルー・デニム、ランニングシューズ、6ポケット・ブルゾンにカーキ色のミリタリー・エレメントなど。ランウェイショーは進行するにつれ、フォーマルの中にインフォーマルな要素を侵入させていくことで多様性を企図していましたね。クリスによれば、"imposing more variety"とのことで、多様性はオータムコレクションから継続のようです。多様性について彼は、「(コレクションには)一つのタイプの男性像ではなく、多くがあります。」「これはクローン(人間)であるということよりも、個々人の個性についてです。」と話していますね。
しかしながら、いつものようにテーラリングのクオリティの高さとそれ以外の要素とのアンバランスさが気になったかなと思います。デニムの使い方は全体的にもう少し研究が必要な感じでしょうか。前任者であるHedi Slimaneや他ブランドのような安易な使い方はしないという彼の姿勢は好きですけれど。ドロップショルダーのオーバーサイズコートは引き続きの提案でしたね。

フォーマルなものにインフォーマルな要素を加えるように、ある要素の中に違う要素を加え、化学反応を起こさせることでエネルギーをそこから取り出すという手法はクリエイションにおいて(使い古された手法ですが)ベターな方法と言える。クリエイションとは速度では無く、加速度であり、加速の際に感じるグラヴィティや化学反応の際に生じる熱量の総和を意味として包摂する。デザイナーは確実なものを不確実なものにし、安定しているものを不安定なものに意図的に撹拌を起こさせる。

安定は我々にルールや秩序、平和を齎すが、いつしかそれは「退屈さ」を惹起するようになる。線形を描く安定した世界は未来を計算可能で推測可能なものにするが、現代社会の高速クルーズの中で昨日と同じ今日が過ぎ、今日と同じ明日が訪れる状況下において我々がその先に希望を感じ取ることは甚だ難しい。多忙で平坦な日々は感情をフラットにし、先の見えた未来の中で人が輝きを帯びて生きることは困難であって、そして、自分の意思とは無関係に肉体は齢を重ね、いつか必ずこの世界から去らねばならぬ瞬間が万人に平等に訪れるという人生の有限性は生きる意味への疑問を加速させる。

ランウェイショーにおいてしばしば青春期のモデルが起用されるのは、未だ何者でもない若者(つまり、何者にでもなることができる若者)が秘める可能性への言及であり、デザイナー自身の作品とこの世界の可能性というフレーミングを孕む。ファッションに限らずモノを生み出そうとする人種は、世界が今とは別の世界で有り得たかもしれないということを夢想し、その可能性の総体とその中心を描こうとする者たちでもある。携帯電話や車といったインダストリアルデザインから電車の窓の外を流れる風景、そして、街行く男性や女性は今よりももっと美しく有り得たのではないか、と。

クリスがInstagramで種明かしをしていましたが、今回のコレクションのピンストライプ・テーラリングはムッシュ ディオールが着ていたサヴィル・ロウのスーツに、モチーフとして用いられていたスズランやスターといった記号はムッシュが愛したガーデンや熱心であった占星術などに由来するものですね。Tim Blanksがレビューしているように、Raf SimonsがChristian Diorのアーティスティック・ディレクターに就任したことにより、コレクションのインスピレーションソースはムッシュ ディオールを源流とするメゾンの神話へと回帰しましたが、それに呼応するようにKris Van AsscheによるDior hommeもChristian Diorのメンズウェアラインとしてムッシュ自身へと回帰したというのが面白かったかなと思います。

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"SAW YOUR FACE BEFORE" by Willy Vanderperre - A Film for Dior Homme

いつものようにWilly VanderperreによるDior hommeのムービーがアップされていますね。
今回はロサンゼルスで撮影されたもののようです。

ブティックでサマーコレクションの立ち上がりをチェックしてきましたが、まだそんなに多くのアイテムはデリバリーされていませんでしたね。パッチワーク系のシャツやデフィレのシューズ等は未入荷でした。パッチワークのジャケットはありましたが、パッチワーク部分はボンディングになっているのですね。チェックしていて耐久性やメンテナンス性が少々気になってしまいました。モードにそれを求めるのは少し違う気もしますが(笑)。異素材で切り替えしているようなアイテムも収縮率がそれぞれ素材毎に違うので、モノによっては耐久性に問題があったりしますね。

Dior homme 14-15AW Collection Preview

WWD.comに各ブランドの14-15AWのパリコレのプレビュー画像がアップされていますね。
上に載せた画像は、Dior hommeのインヴィテーションとプレビュー画像になります。

インヴィテーションはM/M (Paris)によるもので、キャンバスの裏/テーラリングのストライプ生地/鈴蘭がコラージュされていますね。"Superstition is the poetry of life."はゲーテの格言になります。
そして、プレビュー画像を見ると3Bジャケットの胸ポケットにエンブレムがありますが、植物か何かをモチーフにしている感じでしょうか。インヴィテーションのキャンバスの裏、鈴蘭といったモチーフ(アートとガーデン)は、ムッシュ ディオールとの関連性を思わせます。あと、シャツの襟はピンホールカラーになっていて、アクセサリーが付いているように見えますね。ジャケットの右前身頃にあるラインも気になるところ。

クリスのシグネチャーもプレビュー画像がありますが、ツイード?のクロップド・3Bジャケットが写っていますね。

1Lookだけでコレクション全体を想像するのは無理があるので、あれこれ考えながらコレクションが発表されるのを楽しみに待つとしましょうか。