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Christian Dior 14SS Haute Couture Collection

Rodin Museumの特設テントにValentine Schlegelの作品から影響を受けたオールホワイトのスペースをセットして行われたRaf SimonsによるChristian Dior 2014年春夏オートクチュールコレクション。
今回のコレクションについてラフは、「芝居がかった要素を取り外して、よりリアリティを与えることについて考えていました。」「デザイナーとして、ショーにおいて女性にファンタジーを誘発することと同様に女性にリアリティを与えることの両方の義務があります。」と話していましたね。

繊細なファブリックに円形カットワークを多用し、フェミニティとソフトネスにフォーカスして展開された今回のコレクション。トランスパレントなレイヤリングによって澄んだ水を思わせるドレスの透明感は、描かれる女性像が軽やかで瑞々しいことを示唆する。多孔的で透過性の高いドレスの開放性は、快活な女性のメンタリティをそのまま具現化したようでもある。

Mark HolgateSuzy Menkesらが指摘するようにAndre CourregesやPaco Rabanne、Pierre Cardinといった1960年代フューチャリスティック・フィーリングが微かにありましたね。ラフの場合はクレージュ等をそのまま参照するというよりも、Miuccia Pradaを通して参照している感じがあるかなと思います。

Anna BattistaがPaolo Scheggiの作品と川久保玲によるComme des Garcons Homme Plus、そして、今回のChristian Diorのコレクションについて論じているのが面白いですね。
Comme des Garcons Homme Plusは1981年のコレクションっぽくもありつつ、ジャケットのポケット部分をカットすることで機能性を無効化するという提案がありました。もちろんそこには、カットされた穴から覗くインナーによって視覚効果を齎すというデザインの意図があります。ちなみに、ガスマスクのようなJulien d'Ysによるヘアスタイルは同様に「穴」をモチーフとしつつも、ヒンズー教の象神「ガネーシャ」をイメージしたもので、"Holy"と"Holey"のダブルミーニングになっていますね。

Christian Diorのパンチング・カットワークも同様に「空間と視覚効果の並置」という意図がそこにはあり、また、スポーツウェアのメッシュ構造のような通気性という(着用者を快適にする)機能を実現していますね。「空間と視覚効果の並置」とは、ミニマリズム的に言えば「空間を視覚化する」(今回の場合は、ファブリックをカットすることでその空間を視覚化することに成功している)ということになります。
1つのアイデアで複数の問題を解決しているというのが、カットワークというテクニックの有用性を指し示していると言えるでしょうか。

「(コレクションにおいて)コンセプトが無いことは、本当に初めてのことです。それは、より非常に抽象的です。」というラフの説明がありましたが、今回のコレクションは最近表出してきたRaf Simonsらしさや彼のクセがほぼ消失していたかなと思います。ほぼ1つのアイデアで最初から最後まで展開されているというのも単調な印象を与えましたね。Pre-Fallの方が多様性があって良かったかなと。tFSでは、Balenciaga by Alexander Wangのようだという指摘もありましたが、分かり易いスウィートなコレクションが若手デザイナーっぽさを感じさせたのだと思います。こういった点についてラフはもちろん自覚的であり、それでもなお今回のコレクションを提示するに至ったのだと思うのですがどうでしょうか。

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