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Gucci issue: Luxury Fashion identity

Gucciを去ることになったFrida Gianniniの件に関連付けて書かれているNYTimes.comのアーティクルがとても面白いですね。
フリーダがGucciにおいて自分なりのブランド・アイデンティティを確立することができなかったというのは確かにそうでしょう。シンプル・ベーシックでワードロービングなコレクションだけでは不十分ということですね。

ファッションの世界には作用・反作用の法則がある。コンセプトとファンタジーで知られているブランドがあったとし、そのブランドがベーシックでリアル・クローズなコレクションを行ったとすれば、それは「新しい」と受け手は感じるでしょう。つまり、ある一方(コンセプチュアルでファンタジックな服)からもう一方(リアル・クローズでベーシックな服)へ振り子のように振れることで、受け手には新しさを感じさせることができるということ。
デザイナーの就任にも同じようなことが言え、LVでMarc Jacobsの後任となったNicolas Ghesquiere、YSLでStefano Pilatiの後任となったHedi Slimane、そして、CDでJohn Gallianoの後任となったRaf Simons。直近で言えば、MMMへのJohn Gallianoの就任もこれに含まれるでしょうか。難解さと分かりやすさ、マキシマリズムとミニマリズム、ファンタジー・クローズとリアル・クローズ。
デザイナーには"you are only as good as your last show."という言葉があるように、ともすればそれは変化のための変化になりがちですが、手を替え品を替え新しさを演出しつつも、そこにはブランド・アイデンティティを育むための作り手としての一貫性やアイデアが求められますね。

Bridget Foleyが指摘するように、今日のラグジュアリー・ファッションの役割とは何であって、デザイナーの役割とは何なのか。"Gucci"という言葉を耳にしたときコンシューマーが想起するブランド・イメージとは何なのか。また、Keringとしては、それが何であって欲しいのか、ということが明確にならなければクリエイティヴ・ディレクターを誰に任命するのかというのは決まらないでしょう。
JackieやHobo、Bambooなどのバッグ、ホースビット・ローファー、その他のレザー・グッズ。そして、Frida Gianniniがアーカイヴから復活させたGrace Kellyのスカーフに基づくFlora、など。これらブランドの遺産は主にアクセサリーであって服ではありませんね。もちろん、ファッション(服)よりもアクセサリーの遺産が多いのはGucciというブランドの出自に由来します。
Francois-Henri PinaultがGucciというブランドにおいてファッション(服)にフォーカスを当て、推し進めるのであれば、良くも悪くも90年代の性的過剰なTom Ford identityを完全に無視することはできないだろう、と。2011年にフィレンツェで行われた同ブランドの90周年エキシビジョンではほとんどTom Fordに関する展示が無かったように、Gucciの歴史からそれらを抹殺したいという思惑が見え隠れするが、誰が後任デザイナーに就いたとしても多かれ少なかれ90年代にTom Fordが確立したGucciのイメージの影響は受けざるを得ないのかもしれません。

性的過剰なイメージの問題点は、インテリジェンスを欠いた消費・快楽主義的なそのイメージが現代にあまりそぐわないということにあるでしょう。そしてそれは、モノづくりに実直で誠実なクラフトマンシップ・イメージ戦略とはある意味で相反するイメージとも言えます。Chanelの"Metiers d'Art"コレクション、Christian Diorの"ESPRIT DIOR"エキシビジョンやHermesの"Leather Forever"エキシビジョンなど、コレクションやイベントにおいて職人技をフィーチャーすることによってクラフトマンシップでハイクオリティなイメージを醸成し、ブランドのハイプライスなアイテムに正当性を与えることで顧客に購入の正当性と動機を与えることがクラフトマンシップ・イメージ戦略の目的になりますが、この戦略が取り辛くなるというのはビジネスにおける障壁となるかもしれませんね。機械化やデジタル化が高度に進んだ先進国の高度消費社会においてクラフトマンシップ(アナログな職人の地道な手作業)というクリーンなステータス・イメージを訴求するということは益々価値が高まるとも言えるでしょうか。

ブランドの歴史に由来するレザーやアクセサリー、Tom Fordが遺したブランド・イメージ、現代におけるブランドのあるべき姿、クリエイティヴィティとビジネスの均衡点。Gucciに限らずデザイナーの交代劇の裏には多くの考慮すべきことがあるのは確かですね。