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Maria Grazia Chiuri as Artistic Director of Christian Dior

Maria Grazia ChiuriがChristian Diorの7代目にして初の女性となるアーティスティック・ディレクターに正式に決まりましたね。いろいろな人選の噂がありましたが、結果的には手堅い選択といったところでしょうか。Dior側も短期間で頻繁にデザイナーが変わるのは避けたいというのもあると思うので、RTWからクチュールまで、年6回のコレクションを経験している彼女に白羽の矢を立てたのでしょう。

Vanessa Friedmanの記事ではSidney Toledanoの話として、今から約20年程前にDiorがJohn Gallianoのヘルプとしてバッグ・デザイナーを探していた際にキウリに会ったことがあると書かれていますね。キウリとPierpaolo PiccioliはFendiを去り、アクセサリー・デザイナーとしてValentinoにジョインした90年代後半の話のようですが、その時、彼女は「バッグのためだけに(Diorに)行くつもりはありません。グローバルなジョブがしたいです。」と断ったようです。そして、約20年後、巡り巡ってアーティスティック・ディレクターに就任した訳ですが、人生はどこでどうなるか分からないものですね。

昨年、Diorは50億ユーロ(5,550億円前後)以上の売上高があり、世界で195のストアを持ち、収益の5分の3は香水と化粧品によるものとのことで、服のみでは18億ユーロ(2,000億円前後)の売り上げがあるようです。引き続きValentinoはピッチョーリが単独でクリエイティヴ・ディレクターを務めることが発表されていますが、気になるのは今までコレクションを2人でどのようにデザインしていたのか?というところですね。二十数年も共に働いたということを考えると完全に役割分担ができていたか、表現したいものがだいたい同じだったか、といった感じだと思うのですが、どうなのでしょうか。尚、トレダノはDiorにキウリとピッチョーリの2人を連れてくることは考えなかったと話しています。

ちなみに彼女はシャツやテーラリングのビジネスをしているPaolo Reginiと結婚し、ローマに住んでおり、大学生の息子(Nicolo)と娘(Rachele)を持つ母でもあります。今後、パリに移り住むのか、ローマからパリに通うのかは現時点では不明のようですね。

Valentinoのコレクションはヴィクトリア朝やバレリーナ、教会のジプシーのようなものをインスピレーション・ソースにし、オーガンジーのようなシースルー素材を多用したソフトタッチのフェミニンなドレスや抑揚の効いたシックなLookが多いイメージがあり、プリーツ・スカート等もロングが多く、縦に長いシルエットが特長として挙げられるかなと思います。Christian DiorでのJohn Gallianoのスペクタクルなエモーショナルさや、Raf Simonsの鋭くグラフィカルなコレクションとは方向性が違うので、Diorでキウリがどういった方向性のコレクションを展開するのかは気になるところ。Valentinoもピッチョーリ一人になることでどのように変わるのでしょうか。

今までのValentinoのコレクションは、50前後から多い時には90を超えるLook数がありましたが、少なくともこれは減少する方向に行くかなと思います。また、Valentinoの延長線上でDiorでもコレクションを行うのだとすれば、クラシカルでおとなしい(直裁的に言えば地味な)感じになるでしょうね。個人的にはガリアーノやラフのようなデザイナーのパーソナリティが感じられる攻めたコレクションが好きなのですが、そういった方向には行かないかなと。経営陣もそういったデザイナーを今回はあえて選ばずに(ビジネスと両立できるそういったデザイナーは世界を探してもそうそういませんが。)、なるべく安定したデザイナーを選択していますので。
彼女のデビューコレクションは9月30日に行われる予定の2017年春夏コレクションとなりますが、例によって数シーズン、実際にコレクションを見てみるまで判断は留保となりますね。

Diorは今年で創業70周年を迎える節目の年となりますが、まずは基点となるデザイナーが安定し、その後、どのようにメゾンのストーリーを綴れるのかがポイントになるでしょう。

posted by PFM