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Christian Dior 17SS Collection

Christian DiorでのMaria Grazia Chiuriのデビューコレクションとなった2017年春夏コレクション。
創業70年の歴史あるファッション・ハウスにおいて初の女性デザイナーとなった彼女が選んだテーマは、フェミニズム。

テーマに沿うように、男性選手と女性選手が着用するユニフォームがほぼ同一であるということから今回のコレクションの主要なインスピレーションソースとなったフェンシング(ジャケット)を中心にデフィレはスタート。メンズウェア要素として、Dior HommeからHedi Slimaneが遺したbee刺繍に、Kris Van Asscheがよく配するクラシカルなCD刺繍を施したシャツやスニーカー。そして、ショルダーバッグのベルトはDior Hommeのベルトがモーフィング。

スポーティなニッカーボッカーズに、切りっ放しのクロップド・ホワイトデニム。マスキュリンなバイカージャケットにはフェミニンなチュール・スカートを併せる。Beyonceの"Flawless"にも引用され、今回のショーのFront Rowにも招かれたChimamanda Ngozi Adichieの"WE SHOULD ALL BE FEMINISTS"や"DIO(R)EVOLUTION"がプリントされたスローガン・Tシャツ。ショーのイヴニングでは、Le Bateleur、La Lune、Le Penduといったムッシュ ディオールと馴染み深いタロット・モチーフの刺繍に、フルレングスのレースから透けたランジェリーには"CHRISTIAN DIOR J'ADIOR"といった言葉遊びがされる。

Sarah Mowerも書いていますが、デビューコレクションからかなり攻めてきたのは驚きましたね。もう少しロマンチックな感じで無難にまとめてくるかと思っていましたが。成否は別にして、フェンシング等から影響を受けたスポーティ・エレメントはChristian Diorとしては面白く、また、Dior Hommeからアイデアを引用するのは新しさがあったと思います。ただ、スローガン・Tシャツやブランド名を連呼する時代を感じさせる直接的なタイポグラフィ、ランウェイ後半のValentino時代から馴染み深いフルレングスのチュール・ドレスにあしらわれたブランドの遺産である昆虫や植物、タロットをモチーフとした刺繍(Alessandro MicheleによるGucciを想起させる。)は表現としてストレート過ぎますね。ストレートな表現は、露骨さや稚拙さを感じさせ、スマートさに欠けるでしょう。素材(アイデア)はよく火を通した上で調理し、クリエイションとして昇華させる必要があります。

John GallianoからRaf Simons、そして、各アーティスティック・ディレクター交代劇の間に担ったデザインチームのコレクションと比較すると作り込みも甘く、完成度も足りないと言わざるを得ないでしょうか。Diorに皆が期待する煌きもかなり減じているのは厳しいですね。キウリによれば、今回のコレクションは6週間という短い期間で制作されたものとのことなのでその辺も影響しているとは言え、それならば今回の春夏コレクションはスキップすべきだったと個人的には思います。コレクションはBernard Arnaultの事前チェックが入っていると思うのですが、よくアプルーバルを出したな、と思うLook/アイテムもありましたので。

新しいことに挑戦するという方向性はあっているので、あとはそれにクオリティが伴うかどうかという問題になりますね。今回の彼女のコレクションを見る限りでは今後の不安の方が大きいのですが…、さて、どうでしょうか。

via dior.com vogue.co.uk wwd.com nytimes.com nymag.com businessoffashion.com dazeddigital.com tFS

posted by PFM