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TADAO ANDO: ENDEAVORS - THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO

国立新美術館開館10周年を記念して行われている安藤忠雄展 -挑戦-。
9月30日の夜になんとなく六本木に行ったのですが、偶然、その日は六本木アートナイトというイベントが行われており(初めて知ったイベントだったのですが、FASHION'S NIGHT OUTみたいなものだと理解しました。)、国立新美術館が22時までやっていたので安藤忠雄展を観てきました。

アートナイトの展示作品もあったのですが、人のあまりいない夜の暗い美術館は普段とは違う雰囲気で良い感じでしたね。静かな美術館や博物館は好きなので、スタッフの方は大変だと思いますが定期的に夜まで開館するようにして欲しいなと思った次第です。

6つのセクションに分かれて展示されている安藤忠雄展のボリュームはかなりの量となっており、自分は20時頃に入館したのですが閉館が近づいてきたため、後半はちょっと駆け足で観なければならなくなった感じです。2時間では足りなかったですね。実際に実現したプロジェクトのみならず、企画案のものも多数展示されていますので。それぞれの建築物の説明や模型、液晶画面にその建築物の映像を流す等、とても充実した内容となっています。映像は数分あるものもあるので、YouTubeにでも全部アップして欲しいな、と思いながら観ていました。

住吉の長屋等、実際に住んでいるクライアントの感想や、なぜ安藤忠雄に依頼したのか?といった各クライアントへのアンケートも模型等と一緒に展示されており、実際に住むのは大変そうだな…というリアルな印象も受けましたね(笑)。クライアントの本音に近い感想まで隠さず展示してしまうというのが安藤忠雄らしいと言えば、安藤忠雄らしい感じがしました。

屋外には安藤忠雄の代表作の一つとなる「光の教会」を原寸大で再現したものがあり、ここは撮影が自由になっていました。また、屋内展示場では直島プロジェクトが撮影できるようになっています。

有名建築家の作品というと、ユニークなデザインをした建築物の派手なイメージ図が真っ先に思い浮かぶと思いますが(「有名建築家」という記号に対するある種テンプレ化されたイメージですが。)、会場の中で個人的に印象に残ったのは和紙に描かれた図面ですね。
当たり前ですが、建築物には構造計算等が必須であるように、全ては緻密な計算に裏打ちされているということ。空想的な建築物も地に足の着いた地道な計算が必要ということですね。普段は見ることができない図面が展示されていたのとても印象深かったです。

今回の展覧会の図録には安藤忠雄の直筆サイン+彼の過去作品の簡単なスケッチが描かれており、サービス精神旺盛な感じになっています。サインもスケッチも1冊1冊異なっていましたし。そういえば、展示物にも彼の手書きで説明が書かれていたりもしましたね。

そして、図録には浅田彰が「安藤忠雄のストア派建築」という安藤忠雄論を寄せており、こちらも面白い文章になっています。安藤忠雄は大阪人であると同時に真のコスモポリタンなのだ、と評していたりしますね。あと、安藤忠雄は確かに「しゃあない」とよく言っている印象があるな、と浅田彰の文章を読みながら思いました(笑)。

建築への真摯な態度と、どういった状況に置かれても前向きな姿勢であること。
そんなポジティヴなエネルギーを感じさせる展覧会は12月18日(月)まで行われているので、一度足を運んでみることをオススメします。

posted by PFM