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Do you like Fashion Brand New Logos?

画像は、ブランドロゴの変更前(左)と変更後(右)をまとめたもの。
主にBrand Newのものを使用しています。Brand Newに無かったものは各ブランドの公式サイトから。

以前、HYPEBEASTで記事が書かれていましたが、こうして並べてみると各ブランドのロゴは確かに似てきていますね。これはファッションブランドに留まらず、最近のコーポレートアイデンティティは同じような方向性で変更を加える傾向にあるかなと思います。
ちなみに、こちらで指摘されているようにChristian Diorも最近では大文字で「DIOR」と表記する方向に変わってきています。

ブランドロゴが似てきている理由に関して前述のサイトでいくつか考察がされていますが、まずサンセリフ体+大文字にするというのは視認性の向上があります。セリフ等の余分な装飾を削除することによってロゴの単純さを上げ、大文字にしてフォントウェイト(太さ)をアップすることで視認性を上げることができます。カーニングもどちらかと言えば詰めることでコンパクトにし、これも視認性の向上に寄与していると考えられます。

視認性が上がるとロゴはより直感的になり、消費者の限られたアテンションの中で分かり易さとインパクトを強めることができ、注意を惹くことや記憶に残る可能性が上がるという利点があります。また、セリフ体とサンセリフ体に関して言えば、デジタル世代はサンセリフ体に相対的に慣れているということも一理あるかもしれません。

ロゴの上や下にサブタイトル的にPARISやLONDON、ROMAといった都市名を入れる傾向もありますが、これも地名との関連性によって消費者に記憶させる効果やデザインテイストを連想させる効果を狙ったものと言えるでしょう。これは都市イメージのハロー効果を期待したものと受け取ることもでき、あざとさを感じる場合もあるので注意が必要です。

単純化されたロゴは、拡大・縮小に対してスケーラブルであるため、デジタルを含む多くのメディアで綺麗に表示・印刷することができるということや他のデザインと合わせ易いという利点もあります。そして、TFLで書かれているように商標法の観点で言えば、単純化されたロゴは商標権の保護範囲を広げることができるという直接的な利益もあります。

そもそもブランドがロゴを変更する意図は、現代の美的価値に沿わせ、そのブランドのビジネスやアイデンティティをより表現することにより、他ブランドとの差別化やマーケットに対して新鮮さを齎すということが挙げられます。ブランドのクリエイティヴ・ディレクターが変更になった場合などにロゴに変更が加えられるのは、今後、このブランドに変革を齎すというステートメントになります。

Riccardo TisciによるBurberry、Raf SimonsによるCalvin Klein。更には、Courregesのロゴ(抽象的な図形を使ったものですが。)を手掛けたPeter Saville。Kris Van AsschによるBerlutiはM/M (Paris)によるもの。ドイツのデザインスタジオであるBureau BorscheはBalenciagaやRIMOWAのロゴを手掛けています。

著名なグラフィックデザイナーがロゴ変更を担当するのは、そのデザイナーのハロー効果を期待したものと言えるでしょう。ただし、同じデザイナーやデザインスタジオが複数のブランドのロゴを手掛けるとデザインが均質になり、差別化が難しくなる場合があります。

ロゴの均質化に関しては、グラフィックデザイナーに発注するブランド側の意識も大いに関係しており、自分たちのビジネスやアイデンティティを理解せずに競合や他ブランドと同じような系統のロゴデザインを発注したり、デザイナーに提示された複数のデザイン案の中から最近の流行りというだけで他ブランドと同じようなロゴを採用して安牌を切るといったことも問題点として挙げられるでしょうか。もちろん、データに基づいたトレンド予測と慎重なマーケティングによって、ロゴの均質化が結果的に起きているということも考えられますが。

かつてのブランドロゴは地位や名声、富の象徴として機能し、それを剽窃するブートレグによって偽物やパロディ商品が流通するという構図がありました。この構図は現在も基本的には続いていますが、最近の単純化されたブランドロゴはステータス性よりも親しみやすさを持っており、過去の厳粛なブランドロゴと意味合いが変わってきているのは確かです。最近のハイファッションでは、ブランドロゴをTシャツ等に大きく描いたロゴマニアやワナビー向けのトレンドがありますが、ブランドの敷居を下げるという意味ではブランドロゴ変更のトレンドとシンクロする部分があります。

大幅なロゴデザインの変更はブランドの歴史を断絶する効果もあり、一長一短があります。各ブランドは、ロゴ変更を行う際にそのロゴがブランドのヘリテージから引き出されたものであり、ブランドの歴史との関連性をエクスキューズとして付ける場合がありますが、それがどこまで意味を成すかは不明です。最近のハイファッションの世界はデザイナーも頻繁に変わるため、ブランドの歴史における連続性の希薄化は進行中です。

ブランドロゴが重要であることに疑義はありませんが、ブランドロゴよりも取り扱うプロダクトやその品質、クリエイションの先進性の方が重要でしょう。ファッションがそうであるように、あくまでもブランドロゴは中身が伴って初めて意味を成します。短期利益を重視し、マーケットへの一時的な新鮮さと引き換えに小手先でロゴを変更し、結果的に均質なロゴの中に埋もれるのだとすれば中長期的な利益を毀損している可能性があります。

ラグジュアリーとはトレンドを模倣することではない、という意見には同意です。ラグジュアリーとは時間を超越した永続的な価値観に関する何か、であったはずです。

posted by PFM