This is Not here - *//LIKE TEARS IN RAIN

Berluti 20SS Collection

パリにあるリュクサンブール公園の温室を会場に、Jean-Luc Godardの"Alphaville"の詩を読むAnna KarinaのオーディオクリップとAnne Clarkの"Elegy For A Lost Summer"をミックスしたFrederic SanchezによるサウンドトラックによってショーをスタートしたKris Van AsscheによるBerluti 2020年春夏コレクション。
メタリックディティール付きのAlessandroオックスフォードや、ヘムにスリットジッパーの付いたスラックスなど、コレクションは2019-20年秋冬シーズンからの継続としてワードローブを拡張し、その特質を増幅する。

ヴァンアッシュのサインであるクリーンで切れ味の鋭いシャープなテーラリングは、春夏シーズンらしくスリーブレスで、サマーブリーズに軽やかにその身を揺らす。可愛らしい表情を見せるローゲージのサマー・ホワイトニット、パンチングレザーのフーディーブルゾン、パティーヌはステインからペインティングの滲み絵へと深化し、メゾンのシグネチャである手書きのスクリットはグラフィックとして多くのアイテムの表裏縦横を飾る。

全身にドットのようにネイルヘッドが打たれたLookは、イタリアのフェラーラにあるBerlutiのファクトリー"Manifattura Berluti"の靴職人が口に釘を咥えて靴をつくる姿からインスピレーションを受けたもの。「それはアトリエの人々がピンを口に咥えていたようなものです。フェラーラは本当に私のアトリエです。この技巧は通常、(靴の)表面下にあります。しかし、それをアウトサイド化し、装飾として使いたかったのです。なぜなら(職人の技巧は)このブランドの一部だからです。」とヴァンアッシュは説明する。

テーラリングのハ刺し等を表面化させ、アトリエの技巧をクリエイションに取り入れたDior Homme時代と同様に、Berlutiにおいても職人たちへの敬意と絆を見ることができる。

サンライトイエロー、オレンジ、パープル、ブルー、シルバーグレーにパッションピンクからミントグリーンまで、高彩度の配色からDior Homme時代に見せたバーガンディのような繊細な色使いを含んだカラフルなカラーパレットはデフィレのテンションを上げ、多くの華をランウェイに咲かせる。Piergiorgio Del Moroがキャストしたメンズからウィメンズ、若者からシニアまでの多様な人種によって構成されたモデルたちは、コレクションの漸進主義的拡張とカラーパレットの広がりと同じくダイバーシティの歌を歌う。

Lynsey AlexanderによるメイクアップはウィメンズのLookが示すようにナチュラル仕上げであり、Anthony Turnerによるヘアスタイルはウェットな質感のオールバックで夏の気分をステージに運ぶ。

「それがメンズブランドであることに疑いようはありませんが、誘惑と戯れることでBerlutiの男性像を私が以前取り組んでいた男性像よりもセクシーにするのも良いのです。これは明確により大人で、よりセクシーです。それは誘惑と美しさに関するものです。」と今回のコレクションに関してヴァンアッシュは説明する。多くのウィメンズモデルのキャスティングに関しては、「世界は美しさを必要としているので、世界で最も美しい女性を連れてきて。」とPiergiorgio Del Moroに依頼したと言い、「強い女性が男性の背後にいると思いたい。」のだとその意図を語る。

Natasha PolyやLiu Wen、そして、Gigi Hadidがオーストリッチ・フェザーのテーラリング・セットアップでショーをクローズしたように、LVMH唯一のメンズウェア専門のハイエンド・ラグジュアリーブランドであるBerlutiにおいて、ウィメンズ混成のコレクションを発表するというアプローチは他ブランドにはできない芸当である。メンズ、ウィメンズの両方のラインを持つブランドが主にビジネスを優先した消極的理由で統合ランウェイを行う中、完全にメンズウェア中心の世界観からウィメンズに接近するという試みは興味深いものがある。

1895年にイタリアのAlessandro Berlutiによってシューメーカーとして設立された124年の歴史を持つBerlutiは、1993年にLVMHが買収。更に、2012年にLVMHがパリの老舗テーラーであるARNYSを買収し、Berlutiのウェア部門としたことで同メゾンのトータルブランドとしての歴史がAlessandro Sartori、Haider Ackermann、そして、現在のKris Van Asscheと流れる。

「それは伝統と現代的であることについてです。Berlutiが時代を超越したラグジュアリーについてだけであるべきだとは思いません。」とヴァンアッシュは語る。彼が確立しようとしているヴィジョンとイメージは、伝統的でありつつも現代的であり、現代的でありつつも伝統的なアティテュードにある。

遺産としてのレザーと伝統的なテーラリングに、それらのスポーティフィケイション。美しくありつつ、重厚さと遊び心を兼ね備え、コンテンポラリーで爽やかな男女が描かれたコレクションは、昨シーズンよりもBerlutiとKris Van Asscheの距離が縮まった完成度の高いものだったと言えるでしょう。

via vogue.com wwd.com businessoffashion.com

posted by PFM