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Rick Owens 20SS Collection

Palais de Tokyoの噴水の周囲をランウェイとして、シャボン玉の演出を用いて行われたRick Owens 2020年春夏コレクション。
オウエンスの母親のConnieはメキシコ人であり、父親のJohnは農場で働く移民労働者の権利を守るスペイン語と英語の翻訳ソーシャルワーカーとして働いていた。ショーに付けられた"TECUATL"という名は、彼の祖母のMixtecとしての旧姓から取ったもの。ショーのBGMとして使われたものは、1930年代から50年代にかけてのメキシコ映画を象徴する女優であるMaria Felixが出演する映画の劇中歌をサンプリングしたカスタム・ランウェイミックス。

ドイツで生まれ、バウハウスで学び、テキスタイル・アーティストとして活動したJosef and Anni Albers。1930年代にバウハウスとドイツを離れた彼ら夫妻は、メキシコの考古学を探求する。ピラミッドやヒエログリフをインスピレーションソースとした彼らの還元的なモダニズムは、今回のコレクションにおいてドレスのショルダーストラップや複雑に通された紐が特徴的なボンバージャケットとして具現化される。

カラーパレットは、モノトーンを基調としつつ、メキシコ人建築家であるLuis Barraganのピンクやイエローといったカラフルな色彩をストーリーに取り込む。多くのモデルが頭に被ったファラオのようなヘッドピースはマスク・アーティストのWintercroftによるもので、Fritz Langの映画に出てきそうなアステカの王冠がイメージされている。

鋭いショルダーシルエットのスパンコールは、母親がプエブラの教会のページェントで着ていた民族衣装であるチナポブラナの影響を受ける。ニットドレスは、ジオメトリックな平面とラインで身体をトレース。足元を飾るのは、存在感のある厚底クリアヒールのフューチャリスティック・カウボーイブーツ。

アメリカのカリフォルニア州ポータービルで育ち、フランスのパリに住み、イタリアで服を生産している彼。「国境が開かれていなければ、こうしたことはできない。」と話す彼は、アメリカとメキシコの国境の壁に言及し、その壁が彼や両親の間の壁になることを懸念している。

ガーゴイル使いである彼のゴシック要素と、自身のルーツとなる母親の故郷であるメキシコの探求。
ショーの映像を見ると分かりますが、シャボン玉の演出が良いですね。彼の無骨さの中にある詩的な響きを見事に表現しています。Rick Owensというブランドの魅力は、一見すると大味に見える何かの裏にあるインテリジェンスや繊細さにあるのですから。

via vogue.com wwd.com nytimes.com businessoffashion.com tFS

posted by PFM