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Chanel Pre-Fall 2020 Metiers d'Art Collection

コレクションに名付けられた"Paris-31 Rue Cambon"が示唆するように、Grand PalaisにGabrielle "Coco" Chanelのアパルトマン且つ、サロンであった鏡の螺旋階段を再現して行われたVirginie ViardによるChanel 2020年プレフォール・メティエダールコレクション。
セットデザインにはSofia Coppolaが関わったようですね。また、Hamish Bowlesが書いていますが、Cocoの実際のアパルトマンはJacques Grangeによってリノベーションが計画されているようです。

巨大なシャンデリアが頭上から下されるとランウェイは明るくなり、刺繍ウエストベルトとカフスに力点をおいたクラシックダブルブレスト・ブラックコートを着たVittoria Ceretti(ショーのオープナーとクローザーを務める。)が螺旋階段を降りる。肩に羽織ったフリンジ付きのロングコート。白黒スプライスのジャケットとバッグを持つAmanda Sanchez。赤と青のカラーブリーディング・シャイニーカラーのコートにはレースラッフルのブラウスを合わせる。

Cocoと親交のあった画家たちを連想させる滲んだ絵の具のような効果を持つセットアップスーツに、鮮やかなブルーとオレンジの透け感のあるグラデーション・レースドレス。Cocoが幸運のお守りとした小麦の穂は、スパンコール刺繍としてチュールジャケットにあしらわれる。
スタンドカラーのキルティングコートに、滑らかなオフホワイト・シルクは優しく女性を包み込む。

カメリアやパール、No.5のパルファムボトルやスターモチーフのCCネックレスといった同メゾンのシグネチャー・アクセサリー。
ブラックとゴールドのインターレースチェーンは多くのLookにおいて多用され、2.55ハンドバッグのミニヴァージョンやランウェイで目を惹いたCocoに由来するバードケージバッグに留まらず、ノーカラーのラペルレスジャケットのパイピングといった部分にまで用いられている。足元もそれに呼応するように、リボンストラップのパンプスはゴールドとブラックのツートンカラーになっている。

Lucia Picaによるメイクアップは、アクセサリーやジュエリーが多用されるメティエダールコレクションに合わせて目元に顔料やクリスタルを用いてシルバーの煌めきを与えることで同様の効果を齎す演出をしている。また、いくつかのLookではブルゴーニュの光沢のある深い赤ワインをモチーフにした唇が描かれている。

Sam McKnightによるヘアスタイルは、ウェットな質感によるボーイッシュさとフレンチツイストを特長としたもの。また、ミディアムからロングまでのナチュラルヘアのLookでは女性がリアルに着けているようなヘッドバンドが用いられ、ロー・ポニーテールのLookではカメリアとブラックネットで装飾が施されている。

Jenny Longworthによるネイルは鏡の階段からインスパイアされたもので、光を反射する夢のような効果を齎すクリスタルとChanelのクラシックカラーにエレガンスベースのフェミニンさを加える。1つはChanelのモノグラムネイル、もう一つは底部にクリスタルをあしらったヌードネイル、最後は、底部にゴールドのクリスタルをあしらったLucia Picaが描いた唇に合わせた深いワインレッドのルージュネイルとなる。ダブルCはChanelのクラシックコードへの頷きであり、ディティールに注意を払うメティエダールコレクションそのものへのオマージュでもある。

18回目を迎えた今回のメティエダールコレクションは、タイトルが指し示すようにChanelというブランドの全体宇宙のグラウンドゼロへの帰還であり、Karl Lagerfeldから継いだVirginie Viardが改めてChanelを再訪したもので、デフィレの中で何度もリフレインされるハウスコードがその証左となる。

ラガーフェルドのメティエダールコレクションはParaffectionの高度なアトリエの技術を最高水準まで解き放ち、賛歌を捧げることに主眼を置いていた。テクニカルなコレクションはしばしば過剰さを伴うものであり、相対的にメティエダールは細かいディティールの装飾性が強く、情報量の多いLookの完成度はどこまでも上がっていく。ラガーフェルドとアトリエのクリエイティヴィティの丁々発止な駆け引きは、時に王室的なエレガンスやある種の宗教性を発露するに至った。

翻って、ヴィアールのメティエダールコレクションはこれまでのコレクションと同様にプラグマティックでウェアラブルである。
偏りが少なく平均的であり、アトリエワークの何かをフィーチャーし、全面に押し出すといった部分はかなり少ない。漂う空気感もリアルなB.C.B.G.レベルに留まり、アーティスティックな何かを感じさせる突き抜けたダイナミズムはそこには存在しない。

メティエダールコレクションはラガーフェルドがChanelに遺した大切なコンセプチュアルコレクションであり、他のブランドにはないものである。デザイナーを裏から支え、Chanelの本質を定義するものは普段、スポットライトを浴びることのないアトリエの職人たちであり、それをいつまでも忘れないために年に一度の祝祭空間として設定されている。

Chanelに期待することはラガーフェルドがそうであったように、地に足をつけつつもファンタジーを描くことにある。
もちろん、ラガーフェルドと同じことを繰り返す必要はない。同じことができる人間なんてものは現代にほとんど存在しないのだから。必要なのは未来から過去を振り返った時にラガーフェルド期とは違ったヴィアール期という識別可能な未来のヴィジョンを伴うストーリーを語ることにある。

最後に、2020年の第三四半期にパリ北部のポルト・ドーベルヴィリエにParaffectionの11のアトリエが入居し、600人ほどの職人が勤務することになる"19M"(デザインはRudy Ricciotti。)がオープンする。「19」は19Mの住所となるパリ19区とCocoの誕生日(8月19日)に由来し、「M」はフランス語のMetiers d'art(クラフト)、Mode(ファッション)、Main(手)、Maison et Manufacture(メゾンとマニュファクチュア)を意味する。

これはBruno Pavlovskyが説明するように、アトリエの職人たちに対するChanelの絶対的な愛情を証明する建築物である。
アトリエを集約したこの拠点がChanelにとって将来的に重要な場所になることは間違いなく、Chanelとアトリエの職人たちの長い恋物語はこれからもずっと続いていくことを意味しているのでしょう。

via wwd.com businessoffashion.com tFS