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Burberry 20-21AW Collection

Riccardo TisciによるBurberry 2020-21年秋冬コレクションのテーマは、"Memories"。
Central Saint Martins時代にロンドンに住み、卒業後、いくつかのビジネスを経験した後、インドでの生活を始め、自身のコレクションを制作したという彼のマルチカルチャーな過去が投影された今回のコレクション。

ブランドのアイデンティティとなるトレンチコートはコンプリケート・カスタムなフォルムで複雑さを増し、チェックパターンは視覚的にLookに複雑さを与える。フロア丈のバイカラーロングコート、光沢のあるシルクチェックのスカーフシャツ、鋭いテーラリングやコートと組みにされるプリーツ・ファブリック。スナップボタンのキルティングやシアリングジャケットに、ギャザーにアクセントを置いたスカート。

複数のシャツをコラージュしたトリッキーなケルベロスシャツやブロック・ストライプのオーバーサイズ・Vネックニットは、スニーカーと合わせてRiccardo Tisciらしくストーリートカジュアルでまとめ、逆にドレスなどに用いられたチェーンメイルの宗教性を帯びる生々しい使い方は彼のハードな一面を垣間見せる。そして、バーバリーチェックは、彼の記憶と共にあるマドラスチェック(インドに由来。)へとモーフィング。

細かいディティーリングの積み重ねによる各Lookの情報量の向上がコレクションの核にあり、その複数性の集合として複合的、且つ、散逸的に発露されるコレクションが今の英国の複雑な空気感と符合する。表向きは滑らかでクリーン、カジュアルでありつつもその内部は多層的で複雑であり、深淵には宗教性や民族性のシリアスな緊張感が流れる時代の空気と彼のクリエイション。

就任時から繰り返し多用されるベージュを中心としたアースカラーのパレットは、サステナビリティやカーボンオフセットへのブランドとしての頷きと呼応し、散見されたフェイク素材の使用は多様化する世界への配慮である。多くのブランドが一時の流行り病のように同様のステートメントを発しているが、経済活動促進のための環境配慮というコントラディクションは結果的にグリーンウォッシュになる危険を常に孕む。

総論としてはまとまりに欠けたコレクションであり、シーズンを重ねるごとにブランドの遺産とRiccardo Tisciのカラーが融和しつつあるとは言え、人々がイメージするBurberryの分かり易いトレンチ・チェックのビジネス・マーケティング的な部分を陽だとすれば、Riccardo Tisciのパーソナルな資質に基づいたクリエイションは陰としてコレクション内に内在していると言えるでしょう。その混迷の黄昏が今のブリティッシュネスだと言われればそれまでではありますが。

via vogue.com wwd.com vogue.co.uk nytimes.com businessoffashion.com tFS

posted by PFM