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Future of generative AI

Photography by Stable Diffusion

1億100万ドルを調達したStability AIですが、AWS上で4000以上のNVIDIA A100のGPUクラスターを使用しており(その後、その数は5400を超えた。)、クラウドの運用コストが5000万ドルを超えているという話がありますね。ただし、これはR&Dによって学習モデルのトレーニング等を効率化することで、費用圧縮ができるとEmad Mostaqueは主張しているとのこと。

同社の広報担当によるとIBMのRed HatやMongoDBといった大規模OSS企業と同様のビジネスモデルを想定しているようですね。一般消費者には無料版を提供し、大規模な顧客向けには有料のプレミアム版を提供するといった形式。そして、より長期的には多くのコミュニティやプロジェクトを通じて収益を上げていくことに関心を持っているようです。

Stability AIの資金調達の翌日に1億2500万ドルの資金調達を発表したのがAIコンテンツプラットフォームのJasperですが、同社はAIを用いてBlog記事用の文章やコピーライティングをサポートするサービス(OpenAIのGPT-3を利用。)を提供しています。
CEOで共同創業者のDave Rogenmoserが話しているようにAIは一過性のものではないでしょうね。最近、彼らはJasper Artも立ち上げています。あらゆるツールに"generative AI"が入り込み、コンテンツを生成し、人間にサジェストすることで生産性を高める方向に作用する流れ。AIがプログラミングをサポートしてくれるGitHub Copilot等もありますね。

Dave Rogenmoserは、よりニッチな形でAIはパッケージ化されていくと話しています。ファーストフード店のワークフローを改善するものや、法律業務を行うもの等、各分野に特化した学習モデル。もしくは、1企業1モデルといった感じで専用学習モデルを持っても良いのかもしれませんね。Dave Rogenmoserも話していますが、個人でも自分の声のトーンや文章ライティングを学習させたモデルを持てば便利に使うことができますね。
YouTuberがYouTubeに投稿した過去動画から学習モデルを自動生成でき、追加で動画を撮影しなくても指示さえすれば新作動画が自動生成できるようになれば、YouTubeは更にコンテンツ爆発を起こすことになるでしょう。文章、音声、映像、といったモデルの学習に使うことができるコンテンツを既に握っているプラットフォームは既存コンテンツと学習モデルでサブスク・ロックインさせればビジネスになりそうです。

AIは、無から有を生み出すのではなく、既存のアートワークの抽象的な特徴を数学的抽象表現を用いて分布させた多様体(manifold)をベースに、その多様体から入力されたプロンプト周辺の特徴量をランダムサンプリングし、複雑な確率論的近似によってパスティーシュしているという説明は概念として理解しやすいです。
記事の筆者はAIアートの問題点として、学習モデルのトレーニングにおける文化資本の搾取、クリエイティビティが身体性や関係性、社会文化的な文脈から切り離すことができるという考えが広まる、といったことを挙げつつも、クリエイティビティの諸問題よりも最大の懸念はAIの社会実装にあると述べています。

英国のBrexitや米国のDonald Trumpの大統領選挙で果たしたCambridge Analytica社の役割、米軍の戦闘用ドローンの強化や監視データの分析にGoogleのTensorFlowが使われたProject Maven、AmazonやNetflixからUber、Spotify、Airbnbに至るまでの労働力の自動搾取、アルゴリズム取引で発生した2010年のNYダウにおけるFlash Crash、Instagramの子供たちへの日常的な精神的暴力など、AIアートは北半球グローバルカントリーのPrediction Ideology(未来予測とその制御・支配を求めるイデオロギー)のためのソフトなプロパガンダであるとのこと。記事にはありませんでしたが、中国の芝麻信用も同じようなものですね。
アートにおける結論としては、予測不能な機械学習ツール、トレンドから外れたアートワーク等を挙げつつ、AIのハイプ・サイクルに乗らないアーティストが重要という話で締めくくられています。

既にネットも社会も中央集権プラットフォーマーによるアルゴリズムが支配する世界になっているため、結論としては特に目新しいものはないですね。
AIを用いれば更にソフィスティケートされたきめ細やかな安心安全スマート支配が可能になりますが、"generative AI"も含めて、結局、人間は快適さには抗えないので、そちらに流れていくことになるでしょうか。

posted by PFM