This is Not here - *//LIKE TEARS IN RAIN

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ある朝、いつものように眠い目を擦りながら起き、とあるFM番組を聴いていた。カーテンの間から漏れる朝の自然光が部屋の壁を伝い、その強度が少しずつ増すことで朝の時間の流れを僕に教える。TVの無い生活を始めてからどれぐらい経つだろうか。無いなら無いで特に生活に支障は無い。ラジオやネットで天気などの日々必要な情報は得られる。その他にも、地面の無い世界で生活している今の自分にはあまり天気予報の重要性は高くないというのもある。一番気になるのは時間だろうか。これも人工物ではない所から時間の流れを把握する術を少しずつではあるが身に付けるようになった。やがて日は暮れ、僕の髪は伸びる。豊かさと時計の針を見る時間は反比例するのだろうとぼんやりと考えた。それでも忙しい日々は変わらなく続く。その先には何も待っていない。そんなことを思いながら。
最初聴いたときは誰の曲かわからなかった。その後、それが彼の曲だとわかった時には納得がいった。誰がつくったかは重要ではなく、良いと自分が感じたモノから制作者を辿っていくといういつものプロセス。このプロセスは大事にしたい。そしてその感覚。
Thousand Knives.
有名過ぎるほど有名なのかもしれないが、そういったものにとても無頓着な自分は今頃知った。いつも周回遅れ。普通の人が目をつぶってできることが自分にはできない。少しいつもズレている。でもまぁいい。周りがどうとか、メディアがどうとかそういうのはいらない。
このアルバムはすべてピアノで演奏されている。1978年に発売された1st solo Albumの中の原曲がどうなのかわからないが、このアルバムのヴァージョンはピアノの音が良いと感じた。もう一つの音は、クラッピングというらしい。中間のRMIの音は昔の映画っぽい感じがした。クラッピングについて調べてみると、Steve Reichという人物がいることも知った。ミニマル・ミュージック。これはとても好きだ。同じ旋律が繰り返される。繰り返されるからこそ微小な差異がわかるようになる。差異と反復の関係。
Tibetan Dance.
この曲もとても聴きやすい。ピアノはやはりシンプルが良い。そしてとても優しい。二曲とも細かい音が多く密度が高いような気がする。線が細くテクニカルな感じか。以前書いた、Keith Jarrettもそういう部分がある。
いい創作物はどこかで感じた感覚を再生させるのが良い。自分が知らない素晴らしいものはまだまだたくさんあると思うが、それらが最終的に到達する自分の感情はほぼ同じような気もする。メディアやプロセスが違うというか、器が違うだけなんだろう。たぶん。きっと。

posted by PFM