20160628 2336
アントワープにあるSinksenfoor遊園地をモチーフとしたジェットコースターのレールのようなオブジェをランウェイにセットして行われたKris Van AsscheによるDior homme 2017年サマーコレクション。クリエイションのベースは、2016-17年ウインターコレクションからの継続となるものでしたね。
多用される赤と黒のストライプにハーネス、若さとストリートを感じさせるノースリーブのチェックシャツやテーラリング、スケーターパンツに影響を受けるバギーなボトムスにフランケンシュタインのような継ぎ接ぎだらけのデニム。シースルーのニットウェアは爪痕を持ち、遊離した糸はスーツに垂れ、セットアップにあしらわれたハトメやステープラー・ピンは2015年サマーコレクションのシューズにもあったアイデア。ショーの終盤では、日本人アーティストである亀井徹 のダークなフラワーペイントがパッチワークやデニム、缶バッチを飾る。
ヴァンアッシュがインタビュー において「モダニティとはアイデアの合成にある。」と説明するように、秩序と無秩序、ニューウェーブやパンクにゴス、スポーティーとコンテンポラリーといった要素をストリートウェアとテーラリングにミックスしてショーは進行していましたね。Tim Blanksがレビュー するように、無秩序やダークな要素があったとしても彼のクリエイションは最終的にはクリーンで几帳面な作品に着地します。つまりそれは、Tim Blanksが続けて書くように、混沌であったとしても厳しくヴァンアッシュのコントロール下に置かれているということですね。
いつものようにフロントローでショーをチェックしていたKarl Lagerfeldは、「(ショーが)素晴らしいと思いました。最高とまではいかないが、彼のベストの1つ。」と話したようです。
自分は1st Lookの赤と黒のストライプを見た段階ですぐにウインターコレクションの継続であることが分かったのですが、ウインターよりは相対的にショーピース的なLookが多かった印象ですね。インヴィテーションの"FUNFAIR"の文字を見た時は少し不安もあったのですが、終わってみればウインターから引き続き良い方向に推移して来ているかなと思います。テーラリングに軸足を置きつつもカジュアルやストリートのバランスもほど良くあるかなと。このまま小さくまとまらずに変化をして行ってくれるかが個人的には気になるところです。
via dior.com wwd.com vogue.com
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1983年から2015年までの32年間、Karl LagerfeldがChanelで行った150以上のコレクションを収録した"CHANEL CATWALK: The Complete Karl Lagerfeld Collections" が面白かったのでご紹介。
この本は600ページ以上ありますが、全てのコレクションの全てのLookが載っている訳ではなく、Lookはピックアップして掲載されています。1983年から時系列に見開きで1コレクションを紹介する形式となっており、左端に簡単なコレクションの解説が載っています。
こちらは1983年春夏オートクチュールコレクション。カールのChanelでの最初のコレクションですね。
Coco Chanelの1920、30年代のデザインからインスピレーションを得たものとのこと。
1984年春夏コレクション。
中央や右下のLookはデニムを使ったものとなっており、初期から素材としてデニムが用いられていたことが分かります。
1984-85年秋冬コレクション。
スキーやアイスホッケーをモチーフとしてコレクションに取り入れていますね。
今でもスポーツはテーマとして使われることがありますが、こちらも初期から行われていたことが分かります。
1985年春夏クチュールコレクション。
左のLookはJerry Hallで、右がInes de la Fressangeですね。
1987-88年秋冬クチュールコレクション。
80年代のコレクションではイネスがとても多く写っており、彼女の時代だったことが良く分かります。
90年代に入って、1991年春夏コレクション。
右端でサーフボードを持っているのはLinda Evangelistaですね。
1992年春夏コレクション。
左はClaudia Schiffer。
1993年春夏クチュールコレクション。
左はKate Mossですね。
1995-96年秋冬クチュールコレクション。
右側はNaomi CampbellとKate Moss。
1997-98年秋冬クチュールコレクション。
右端はStella Tennant。
2000年代に入って、2002-03年秋冬コレクション。
左はNatalia Vodianovaですね。
2003年春夏コレクション。
右端はMariacarla Boscono。
東京で行われた2004-05年 Paris-Tokyo メティエダールコレクション。
2005-06年秋冬コレクション。
左からFreja Beha Erichsen、Gemma Ward、Lily Donaldson。
2007年春夏コレクション。
左からIrina Lazareanu、Raquel Zimmermann、Freja Beha Erichsen。
2010年代の紹介は省きますが、こんな感じで2015-16年秋冬クチュールコレクションまで掲載されています。
Chanelが時代を超えて愛される理由は、ブランドの遺産を核にして時代の空気を取り込んで上手く変化に対応できているということにありますね。それはブランドの遺産(ツイードジャケットなど)の間口が広く、潜在的有用性に富むということもありますが、それを最も支えているのはカールを中心としたチームの創造力と言えるでしょう。
コレクションの変遷という資料的価値もありますが、起用されるモデルの変遷を見ていくだけでも面白いのでオススメの書籍かなと思います。お値段もそんなにしないので、気になる人は手にとってみると良いですね。
20160619 2240
Interview MagazineにDior HommeのウィンターコレクションのAD CampaignでもフィーチャーされているA$AP RockyとKris Van Asscheの対談記事 がアップされていますね。
クリスはベルギーの何も無い小さな町で育ったということ、一人っ子だったので一人で部屋に篭りスケッチをしていたということ、祖母に服を作って貰った思い出、彼がファッションについて学んだ最初のものはアントワープのデザイナーではなく、Jean Paul Gaultierで、その後、マルジェラやラフ、ドリスにアンといったデザイナーたちについて学んだということを話しています。当時はゴルチエの時代だったとのこと。
ロッキーはニューヨークのハーレム育ちで、小さい頃はフットボールやバスケットボール選手、そして、半分冗談として薬の売人になりたかったと話しています。でも、いずれも父親に却下されたとのこと。ちなみにクリスは、幼い頃、母親にお花屋さんは良い仕事かどうか聞いたことがあると話しています。花屋というのが可愛くてクリスらしいですね。ムッシュ ディオールも花を愛していましたが、クリスも幼少期から花は好きだったようです。
アントワープのロイヤルアカデミーを卒業後、インターンシップを経てアシスタントを6年得られたことは幸運だったと語り、現実について多くのことをその期間に学んだとのこと。しかし、アシスタントとして働くことは基本的に他の誰かの夢を実現するために働くということであって、少し欲求不満を感じていたという。
いつかある日、人は自身の夢を実現したくなりますと言い、ただの偶然ともクリスは話していますが、アシスタントを辞めて自身のブランドを開始することに決めたとのこと。それは自身の名を冠したブランドが欲しかったのではなく、創造的な自由が欲しかったのだと彼は説明しています。ここでロッキーが、心の平穏(創造的な自由)を追い求めたとしても、より多くのプレッシャーがそこにはある、と指摘しているのはその通りですね。
ブランドとして成功していたDior Hommeのデザイナーを引き継ぐことについて、当時、クリスの親友の全員が彼を止めたが、この地球上においてデザイナーとしてそれほど早く成長できる場所は、多くの専門家と社内アトリエを持つDior以外にはないという理由からその任を引き受けたとのこと。最初の3、4年は全てのショーにおいてバズーカ砲を向けられる(ようなプレッシャーを受ける)ことを意味していたとしても私はここに居ましたとクリスは話す。
そして、大部分は財政的な理由のためにシグネチャー・ブランドを停止状態にしたと語る。自身のブランドも成長をしていたが、どんどん成長を続けているDiorとの関係性があまりに複雑になってしまったとのこと。いつしか自分が思うほど上手くやれていないと感じるようになり、シグネチャーをしていても多くの喜びがなくなってしまったので、人生において厳しい決断をしなければならなかったと話していますね。
Dior Hommeというビッグメゾンのメンズラインと自身のインディペンデントなブランドを比較するのは無理がありますが、どちらもメンズウェアであり、Dior Hommeで彼はある程度自由にやれていること等からどうしても比較をしてしまい、ビジネス的にもDiorの方が上手くいっているので、それならDiorに集中するという選択をした感じでしょうか。シグネチャー・ブランドに関してクリスは、再始動しないと想像するのは難しいと話しているので、Dior Hommeでのビジネスとクリエイションが上手くいっている間は無いと思いますが、いつの日かは再始動するのでしょう。シグネチャーを開始した28才の頃を思い出して、私は若く、少し単純だったので、全世界が私のコレクションを待っていると思っていました(笑)と話しているのは若気の至りで微笑ましいですね。
Diorとはクオリティであり、ラグジュアリーであり、それはファッションの最も高いレベルのものであると言い、自身のブランドにもそれに類似したアプローチを必要とすると話しています。
ファッションを複雑にするのは同時に多くのことが得意でなければならないということにあり、予算の管理はしばしば創造的な部分と一致しない傾向があるため、それに動じない強い意志が必要であり、多くの人々を理解している必要があり、全ての最新の映画を観る必要があり、全ての最新の博覧会を観る必要があり、アートを理解し、いくつかの言語を話さなければならず…といったようにファッションの難しさをクリスは説明しています。
Dior Hommeのアーティスティック・ディレクターへの就任の報を受けた時のことをロッキーに聞かれるとクリスは、次の3ヶ月間、ベッドの下に隠れたくなりました、と言い、素晴らしい興奮と死ぬほどの怖さが混ざりあった状態にあったと答えていますね。アーティスティック・ディレクターについてDior側と数週間に渡って話し合いをした結果、次第にそれが魅力的に見えてきたとのことですが、クリスは最初の電話を覚えていると言い、自身のブランドで働いている時にDior側から黒塗りの車が遣いとしてやってきたので、それはとても映画のようだったと述懐しています。
A$AP Rockyは今週末の25日にパリで行われる予定のDior Homme 2017年サマーコレクションのランウェイショーに招待されているようです。Kris Van AsscheがDior Hommeのアーティスティック・ディレクターに就任してから来年で10年目を迎えますが、引き続き素敵なコレクションに期待したいですね。
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via dior.com
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via rafsimons.com
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良い出会いがあったので久しぶりに音楽ネタを。
最近よく聴いているのが、Joey Negroの"Remixed With Love Vol.2" 。Joey Negroが手掛けた曲は好きでよく聴くのですが、今回のMixは全体的にとてもクオリティが高いです。どれも好きなのですが、一曲挙げるとすればやはり"Love Ballad (Joey Negro Jazzy Reprise)" かなと。ストリングス、ピアノ、スキャットがジャジーに良い仕事してます。
Joey Negro繋がりということでもう一曲。個人的にとても好きなのがThe Sunburst Bandでの"The Secret Life of Us"をFrankie KnucklesとEric KupperがMixしたDirector's Cut Signature Mix ですね。ハウスミュージックとしてかなりの完成度で、その疾走感と隙のないクオリティが好きです。
あと、先日何となくポップな曲が聴きたくて買ったのが、Justin Timberlakeの"CAN'T STOP THE FEELING!" だったりしますが、彼はMichael Jacksonの"Love Never Felt So Good"でフィーチャーされたりしてましたね。個人的にはマイケルオンリーで良いのに…と言った感じですが、その"Love Never Felt So Good"をDavid MoralesがFrankie KnucklesをトリビュートしてMixしたのがDM-FK Classic Tribute Mix 。原曲の良さを引き出して、ハウスに綺麗にまとめているのがとても好きです。