This is Not here - *//LIKE TEARS IN RAIN

Jil Sander 12-13AW Collection

Raf SimonsにとってJil Sanderでのラストコレクションとなった2012-13年秋冬コレクション。
彼の説明によれば、女性の家庭生活の日常とその美しさを描くことが今回のコレクションのフォーカス・ポイントだったようですね。

ラフの友人でアントワープのMark Colleによるラン、バラ、チューリップを用いたモダンなフラワー・アートをランウェイの上に飾り、ショーは静かにスタート。淡いピンクやベージュのロマンチックな色合い、重さを感じさせないオーバーサイズコートの柔らかいシルエット、胸元で優しくコートを押さえる女性の繊細な仕草、ドレスやコートとフレンドリーなランジェリーにジャンプスーツ、アシンメトリーなスカートの抑制のきいた表情、PVCファブリックの前衛的な響き。
朝の寝室のベットから夜のディナーに出掛けるまでの女性の日常をモーニング・ランジェリーからカクテルドレスといったLookでランウェイに表現していましたね。ランウェイを彩ったガーデン・フラワーは、モダンな住居のダイニングテーブルの上に飾られた切花のようにも見えたかなと思います。

過去三シーズンに渡って紡がれた「クチュール三部作」から蒸留された純度の高いミニマリズム、そして、これまでコレクションを積み重ねて深めた技巧のレベルと確固たるブランドの美学によって、ランジェリーやドレスとコートのロマンチシズムの揺らぎの中でミニマリズムはその過飽和点を超える。時代に限定されないモダニズムとインテリジェンスを持って描かれるフェミニティはどこまでも澄んだ穏やかさを持ち、比類なき優雅な美しさをピュアな女性の内面性に発芽させる。
ランウェイというキャンバスの上にデザイナーによって描かれるある種の理想形。ファッションというものの本質はその内面性にあることをいつも教えてくれるデザイナーの一人がJil SanderでのRaf Simonsでしたね。

旅路のクライマックスに相応しいコレクションと、フィナーレの後の鳴り止まないスタンディング・オベーション。2005年以降のJil Sanderでの密度の高い約7年間は彼にとって血よりも濃い関係性をブランドと、そして、そのファンとの間に築くには十分であった。Jil Sanderというブランドに出会えたRaf Simons、Raf Simonsというデザイナーに出会えたJil Sanderというブランド。過去の点と点を線で結んでみるならば、互いが共鳴し合いクリエイションを深めていくそのプロセスは相思相愛だったと誰もが認めるでしょう。

ブランドにはヒストリーがあり、ランウェイにはストーリーがあるように、ファッションにはいつの時代もドラマがある。別れというものはいつの時もビター・スウィートな瞬間であるが、神のいたずらとは面白いものでJil Sanderというブランドにはまた創業者によってその歴史を紡ぐというドラマが待っていた。こうしてこの世界はまた流転し続けていく。

Raf Simonsの今後はまだ正式発表されていませんが、今までJil Sanderでのステキなコレクションを観れたことは個人的にとても幸せに思います。レディスのコレクションに関して言えば、もう少し観ていたかった気もするのですけれど・・。
彼とJil Sanderの今後については、引き続き要注目といったところですね。

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Problems of the Fashion world...

We Are All Guilty for This Mess
Suzy Menkesが書いている文章なのですが、最近のファッション業界について歯に衣着せぬ指摘をしていますね。
デザイナーがチェスの駒のように扱われていること、コングロマリットの経営手法、デザイナーがハリウッドスターであるかのような高額な給料を要求するために弁護士を雇うこと、Twitterが現実を歪曲してゴシップを拡大させることなど、他にもいくつか書かれていますが、問題点はいろいろありますね。いずれも、少し時間を掛けて考えてみたい問いばかりです。

Versace 12-13AW Collection

Donatella VersaceによるVersace 2012-13年秋冬コレクション。
今回のコレクションは1997年のGianni Versaceのラストコレクションをテンプレートに、兄が遺したクリエイションへ敬虔な祈りを捧げたもの。

カラーパレットはブラックをベースに、イエローやオレンジにシルバーといったVersaceのキーカラーをセット。十字架モチーフのゴシック・テーマをフィーチャーし、膝上丈のボディコンシャスなドレスによってショーは進行する。
スタッズ・レザーによるストラップレス・ドレスにタイトなチェーンメイル・ドレス、モトジャケットには緩やかなフレアスカートを組み合わせ、アストラカンによってコートのような趣を与えられたハードなドレスにV-E-R-S-A-C-Eと綴られたタイポグラフィ・ドレス、セパレート風のドレスはバックル・ストラップによるメッシュがVersaceらしいフェティッシュなカットアウト効果を出していましたね。
イヴニングではシンプルに縫い目を用いたシームドレスや、スパンコールとシルバーメタリック・メッシュによるドレスなどが登場。デイウェアからスムーズにイヴニングへと移行できていたのが印象的だったかなと思います。

Pat McGrathによるメイクアップとGuido Palauによるヘアスタイルは、ヴェルサーチ・ロックンロール・ガールをイメージしたものですが、今回のショーは、90年代の空気感、宗教性、レトロな未来主義、ロックンロール、といったように多くの要素がミックスされていて見る角度によって見え方が違いますね。ただ、ドナテラのコレクションはジャンニへの賛歌がすべてのベースになっているので、過去への再訪という意味ではそれらは全て共通したものを持っているとも言えるでしょうか。

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Prada 12-13AW Collection

テーマから出発するのでもなく、コンセプチュアルなものでもなく、ファッション自体に集中し、ファッションが持つ純粋な喜びをコレクションで表現したかったというMiuccia PradaによるPrada 2012-13年秋冬コレクション。ファッションが持つオプティミズムとは好きな服を着たときの誰も否定することができない幸福感にあり、その重要性と美しさに関する女性についての考えが今回のコレクションと言えますね。

ハイウエスト・ジャケットやトップコートといった直線的なカッティングによる強度を伴ったテーラリングをメインディッシュに、Pradaらしいジオメトリック・グラフィック・プリントを多用しながらショーは展開。Lookの鋭度を上げるローゼンジ型のクリスタルなどによるハードウェアはフューチャリスティックな空気を運び、ファニーなメアリージェーンやロイド・サングラスが遊び心をコレクションに加える。
仄かにレトロさが漂うモダニズムに未来主義の要素を加え、それらを両輪として相互参照しながら描かれる女性像。ブラックやオレンジを用いたGuido PalauによるヘアスタイルとPat McGrathによるメイクアップはミウッチャが望んだという"Virtual Princess"を適切に表現していたかなと思います。

久しぶりにアイロニーや過剰さををほとんど感じさせないウェアラブルなコレクションは、きっと今年の冬にスマートな女性をステキに魅せることでしょうね。

最後にWWDのレビューが面白かったのでピックアップ。

WWD wrote:
When she came out for her bow, Prada stumbled briefly atop a pair of her own demonstrative shoes. Somewhere, in secret, a model smiled.

ミウッチャも少しだけモデルの気持ちがわかった感じでしょうか(笑)。
こういう部分も含めてファッションとランウェイには面白さがありますね。

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Gucci 12-13AW Collection

19世紀のデカダンなロマンチシズムにタペストリー、透明度と戯れることと多くの1970年代。
これらの要素をミックスして表現されたFrida GianniniによるGucci 2012-13年秋冬コレクション。

ブラックを中心にパープルやワインレッド、ネイビーにフォレスト・グリーンやダークオリーブといったカラーパレットをセットし、ブロケードにジャカード、ベルベット、ファー、シルク、レザーといったマテリアルを誘惑的に用いてコレクションは進行する。
ミリタリージャケットにクロッチパンツ、オーバーサイズ・アウターウェアにクロコダイル・ライディングブーツといったクロスオーバーする男性性。アンドロジナス・ボヘミアン。シルクパジャマなどに描かれた追憶の花、ダークでミステリアスな夜想曲。フェザードレスはフェティッシュな深淵を眺め、トランスパレンシーなシフォンブラウスやイヴニングに登場したブラックのチュール・ドレスはファム・ファタールな香りをランウェイに運ぶ。

オーバーサイズな部分はオーバーサイズに、タイトな部分はタイトにしてメリハリがあったのが個人的に観ていて面白かったかなと思います。マニッシュでグラマラスな表現は流石に上手いですね。tFSなどではGivenchyっぽさが指摘されていましたが、Riccardo TisciのGivenchyはもっと宗教性があるので似ていると言えばそうですが(モデルの眉毛が無い辺り・・笑。)、結果的に描かれる女性像はちょっと違うかなと思いますね。

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Burberry Prorsum 12-13AW Collection

Christopher BaileyによるBurberry Prorsum 2012-13年秋冬コレクション。
メンズコレクションと同様に都市と地方の各要素をミックスして展開されたコレクションのタイトルは、"Town and Field"。ランウェイショーはナチュラルで豊かなアースカラーをピグメントに、ツイード素材やベルベットにキルティングといったファブリックを用いてカントリー・カルチャーを楽しむアーバンな女性像を描いていく。

インパクトのあるオーバーサイズ・ベローズポケットが付いたトレンチコートにウエストラインにアクセントを付けるスウィートなルーシュ・リボンベルト、フレアの効いたウエービーで柔らかなペプラムジャケットにクロップドされたフィールド・ジャケットなどのアウターウェア、フローラル・プリントやティンセルなどによるペンシルスカートにスタッズが打たれたレザーグローブやクラッチバッグ、シャツやニットにはフクロウやキツネといった自然界のアニマル・モチーフをチャイルディッシュにあしらって。Hyde Parkに仮設された透明なテントに降る雷雨のシャワーの中、ストライプ・アンブレラを差して歩くモデルたちによってショーはフィナーレを迎える。

メンズと同じテーマでもやはりレディスのコレクションの方がバラエティに富み、女性のファッションというものの懐の深さとその可能性の広がりを感じさせますね。個人的にメンズとレディスのコレクションの違いというものを再認識させられたコレクションだったかなと思います。

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Christopher Kane 12-13AW Collection

Al Pacino主演の映画"Cruising"からのサウンドトラックをBGMにセットし、フォトグラファーであるJoseph Szaboの作品から影響を受けたというChristopher Kane 2012-13年秋冬コレクション。

ブラックから始まったカラーパレットはやがてブルーに変わり、そして、パープルからレッドへと移行。「パテントレザーとモアレ、フォックスファーとミンク、立体的な3D刺繍による鎖帷子。」とChristopher Kaneから説明があったように、主にこの3つの要素によってコレクションは進行していましたね。
Joseph Szaboの写真に映っていたティーンエイジャーがインスピレーションソースとなった「モアレ」の他にもピンストライプやレオパード、そして彼らしいフラワー・プリントなどのパターンが格子型のカクテルドレスでダンスを踊る。昔からあるものを新しく見えさせようとする意図を持ったプレーンなケーブルニット・セーターもランウェイの中では適切に存在感を示せていて良かったかなと思います。

少女趣味的な要素に少しだけ悪趣味な要素(今回は光沢のある縞模様(モアレ))を加えて、それによって作品の強度を増すという方法論。いつもの彼らしいやり方でのコレクションは流石に安定感がありますね。自分なりの色を持ち、コレクションを積み重ねながらファッションの世界を航海し続けられるデザイナーはそう多くは無いので彼のようなデザイナーには今後も注目していきたい、といったところです。

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Raf Simons to leave Jil Sander

Raf SimonsがJil Sanderのクリエイティブ・ディレクターを2月27日に辞任することが報じられていますね。Jil Sanderグループの公式声明によると25日に披露されるウィメンズの12-13AWがJil Sanderでの最後のコレクションになるようで、後任のデザイナーは数日後に発表されるとのこと。

Cathy Horynが書いているようにRaf SimonsはDiorと、そして、Jil SanderにはデザイナーのJil Sanderが戻るのでは?という憶測がありますね。現状では憶測の域を出ないので詳細情報待ちといったところですが、とても気になるニュースがイキナリ飛び込んで来た感じです。

Ralph Lauren 12-13AW Collection

英国のTVドラマ"Downton Abbey"をインスピレーションソースとして行われたRalph Lauren 2012-13年秋冬コレクション。
Ralph LaurenによるとDownton Abbeyは皆と同じように楽しんでおり、それは自分のテイストにとても近いものとのこと。しかし、今回のコレクションは単に流行っているドラマに関するものではなく、英国の遺産に関するタイムレスなステートメントをすることにあると話していましたね。

クラシカルなツイード素材のヘリンボーンやグレンチェック・パターンを用いたダブルブレストコートにカシミアのフェアアイル・セーターとジョッパーズ、ボーイッシュなスリーピース・スーツにベストを飾る懐中時計のゴールドチェーン、ジェントリーなボーラーハットと手に持ったステッキ、コレクションに変化を与える刺繍のされたバイカージャケットにコートなどを彩るオセロットプリント、ワインレッドやパープルといった潤いのあるベルベットスーツに胸元で輝くジュエリー、ホワイトシャツに結ばれたウィンザーノット・タイにプリーツの効いたブラックワイドパンツとスカート。
イヴニングでは1920年代の魅力としてのビーズで飾られたフラッパードレスにブラックとゴールドのオーストリッチ・フェザーのケープなどが登場。ドレスにもバイカージャケットを合わせて変化を出しつつ、最後はバイアス・プリーツを用いたゴールド・ラメのドレスでフィナーレを迎える。

英国の遺産とロマンス、合衆国の古き良き時代の豊かさ、それらを優しく包み込んだ温もりのあるランウェイショーは時間を超越した洗練された優雅さを持ち、良い映画を見た後のような素敵な余韻を与えてくれますね。

米国ファッション界の二つの帝国、Ralph LaurenとCalvin Klein。WSJのHeard on the Runwayが言うようにCalvin Kleinが常に新しいものの支持者であったならば、Ralph Laurenは常にクラシックなものの支持者であった。その二つのブランドがNYFWの最終日にショーを開催し、それぞれがアイデンティティとするモダニティとトラディションによってファッションウィークをブックエンドする。今回のRalph Laurenのコレクションもそれに相応しいロマンチックなショーだったかなと思います。

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Marc Jacobs 12-13AW Collection

城の遺跡をモチーフにしたRachel Feinsteinによるコンストラクションペーパーセットを背景に、ミュージカル"Oliver!"からのLionel Bartによる"Who Will Buy?"をサウンドトラックに使用して行われたMarc Jacobs 12-13AW Collection。
今回のコレクションの最初のインスピレーションソースはKenneth Angerによる1953年の映画"Eaux d'Artifice"だったという話がマークからありましたが、これはRachel Feinsteinによるセットやランウェイに影響を与えているように見えましたね。

Stephen Jonesによる"The Cat in the Hat"からヒントを得た特大サイズのフェイクファー・ハット、Kurt Cobainからのティンセルにルレックスやメタリック・パテントレザーの質感、セーフティピンによって留められたクロッシェ・ストール、Gloria Vanderbilt, Lynn Yaeger, Cindy ShermanにAnna Piaggiといった女性についての考え。ベル型のアンバランスなシルエットは童話性と幼児性を伴いながらミステリアスな可愛らしさをランウェイに描く。

tFSなどでも指摘されているように全体的にComme des GarconsやYohji Yamamotoの影響下にある感じがあったかなと思います。マイルドなJohn Gallianoという雰囲気も確かに。それらのブランドの濃さは無くなり、あっさりとコマーシャライズされているのが良くも悪くもMarc Jacobsらしいですね。

今回のランウェイショーにおいて、CFDAによるモデルのキャスティングの推奨年齢に関するガイドラインである16歳を下回るモデルを起用したことでちょっとした問題を引き起こしていましたが、あくまでも「推奨」なのでお咎めは無い様子。On the Runwayのコメント欄にあるチャイルド・モデルとチャイルド・アクターの違いという視点は読んでいてちょっと面白いなと個人的に思いました。子役が良くてモデルがダメという考えは一見、矛盾があるような気がしなくも無いのが面白いですね。

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Alexander Wang 12-13AW Collection

"a surrealist approach to fabric manipulation."という説明がAlexander WangからあったようにPre-Fallコレクションのテーマであった「トロンプルイユ」を継続した2012-13年秋冬コレクション。

12SSシーズンと同様に鏡をステージにセットして行われたランウェイショーは、ブラックとホワイトにワインレッドを加えたダークトーンのカラーパレットを用いての展開。シュリンク・ラップにラミネーション、ラッカーなどのアイデアを駆使したファブリックの質感コントロールによってトロンプルイユの効果(異なったファブリックのように見せる)を発現させるという方法論によってコレクションはドライブされる。
ラミネートされたツイード素材に光沢を持った滑らかなサーフェス、ツヤを消したマットな質感、クロスハッチにコルゲートといったファブリックの表情がバイカージャケットやコートの上で表現され、Alexander Wangらしい都市的でスポーティな空気を含んだLookが描く女性像はクールなストリート・ガール。

ランウェイ中盤から後半に掛けてはロングフリンジを用いたLookも登場し、一旦モデルが引き上げた後に始まったセカンド・パートではテーラリングの影響を感じさせるLookでまとめていましたね。

センタースリットのカーフスキン・スカートにレザー・ニーブーツの組み合わせはロングコートを着ているような雰囲気で、そのマニッシュな強さは今回のコレクションによく合っていたかなと思います。メッシュのタートルネックをマスクのようにしていましたが(なんとなくLee Alexander McQUEENを思い出させますね。)、インナーのアイテムの存在感を高める方法としては面白いやり方でしたでしょうか。

アフターパーティーを行わないという報道が先日あった今回のAlexander Wangのショーですが、ラストルックでGisele Bundchenが登場していたように、パーティーを行わない理由は「モデルのキャスティングで予算を使い果たしたからでしょう。」という指摘は何となく当たっているような気もしますね(笑)。
日本を含むアジアの多くの地域でブティックをオープンさせる計画があるAlexander Wang。現在の世界の経済状況の中で拡大したビジネスを軌道に乗せられるかどうかというのも今後は気になるところでしょうか。

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Jason Wu 12-13AW Collection

台湾生まれのアジア系アメリカ人デザイナーのJason Wu。昨年、9歳まで住んだ台湾にデザイナーになってから初めて父親と共に旅行したことがテーマの端緒になったという今回のコレクション。
"What is Chinese?"という問いに対する回答としての2012-13年秋冬コレクションは、軍隊の影響としてのマオジャケット、Qing Dynasty(清朝)のチャイニーズ・ブロケードに王朝のエンペラーとエンプレスが身に付けた毛皮、そして、Anna Mae WongやMarlene Dietrichらによる1930年代のハリウッド映画"Shanghai Express"、これら3つの要素がインスピレーションソースになっていますね。

グレーに近いミリタリー・グリーンにブラックにレッドというカラースキーム。アーマーのようなキルティングにエポーレットなどによって強調されたショルダー。レザーグローブやバッグ、靴にも打ったスタッズ。ボディコンシャスなペンシルスカートにシェイプの効いたウエストとベルト。ブロケードやファーがエンプレスの空気感をコレクションに吹き込み、エレガントな攻撃性を持った強い女性像を描く。
イヴニング・パートのラスト2Lookはスリットがフロント部分に入っていますが、これは11-12AWでもあったアイデアで個人的に彼のデザインするドレスという意味で印象が強いですね。

マンダリンハットは少しパロディが入っていましたが、ショーのムードメイクとしては機能していた感じ。モデルの耳元を飾ったタッセルイヤリングもコレクションの雰囲気に良くあっていたかなと思います。

完成度も適切に担保され、全体的にとても安定したコレクションは見ていて安心感がありますね。コマーシャリズムに少し寄っている感は確かにありますが、NYFWということと成長期にあるデザイナーということを考慮すればこれぐらいのバランスが最適のような気がしますがどうでしょうか。

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Give Me All Your Luvin... Karl Lagerfeld is overrated... Fendi 12SS AD Campaign...

画像はMadonnaのGive Me All Your Luvin' (Feat. M.I.A. and Nicki Minaj)から。
曲がかなりポップで少し驚きましたが、スーパーボウルのハーフタイムショーもどんな感じになるのか気になるところです。

Is Chanel Designer Karl Lagerfeld Spread Too Thin?
Karl Lagerfeldは過大評価されているよね、という話題。Coco Chanelの遺産を拡大することには成功したけれど、彼自身のオリジナルのヒット作というのは存在しないのでは?という指摘は一理ありますでしょうか。文章中で書かれているように、「無制限な自由を与えられる時、ラガーフェルドは美的な物語を語るのに苦労する。」というのは分かる気がしますね。彼の多作な制作スタイルは、アレンジャーとしての才能がその多くを支えているというのはコレクションを見ていればよく感じることですし。
オリジナルの物語を語らなければならないという話は、コメント欄でも指摘されているようにAlexander McQueenのSarah Burtonにも最近言われていることですね。

そして、先日、Net-a-Porterで先行独占販売された新ブランドの"KARL"は、有名人がファッション・ブランドを開始するセレブリティ・コレクションに似ているというのも鋭い指摘。カールは既にアイコンになってしまっているので、しょうがない部分があるかなと思いますが。ただ、彼が自分の名を冠したブランドに固執するのは、やはりそこに何かがあるからなのでしょうかね。

Fendi Spring Summer 2012 Ad Campaign Making of
Arizona MuseをフィーチャーしたFendi 12SS AD Campaignのローマでのメイキングムービー。
AD Campaignはオフィシャルサイトで公開されていますが、メイキング・フォトはFacebookにアップされていますね。

Honest by Bruno Pieters

先日ローンチされたBruno Pietersによる新プロジェクト"Honest by"。キャンペーンにイェケリンが起用されているのがブルーノらしいですね。
Honest byに関してBruno Pietersのインタビューがアップされていますが、内容が面白かったのでいつものように簡単に書いておきます。現状ではオンラインのみでの展開ですが、日本でも実際に手に取ってアイテムを見ることができる機会が来れば良いですね。

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世界を旅した2年間の休暇の後、マハトマ・ガンジーの"Be the change you want to see in the world."(世界を変えたければ、まず自分が変わりなさい。)という言葉を格言にファッション・レーベル"Honest by"を開始したBruno Pieters。

Honest byにはエコロジカルでアニマル・フレンドリーな製造方法でプロダクトを生産し、材料や価格戦略について100%の透明性を確保するということ、伝統的な春夏/秋冬という2シーズン制のファッション産業モデルに選択肢を提供するという意味からタイムレスでシーズンレスな服をデザインすること、そして、多くの異なったデザイナーとコラボレーションを行うことにより、革新的で持続可能なレーベルを目指すという戦略がある。第一弾のデザイナーは"Honest by Bruno Pieters"というように本人が担当していますが、第二弾のコレクションが4月5日に予定されているように(デザイナーの名前はまだ伏せられていますね)今後も他のデザイナーとの協同が予定されているようです。
なぜHonest byがブルーノ単独のファッション・レーベルではなく、他のデザイナーにも参加をオファーしているのかと言えば、Bruno Pietersの美学が必ずしも好きではないクライアントに訴求するためとのこと。様々なルックスとスタイルを提供し、新しいオーディエンスにリーチしたいという考えがそこにはあります。

人工の化学肥料やホルモン製剤を使用せずに生産されたオーガニック・ファブリックは若干の限界がまだあるとは言え、過去10年の間に大きく変わったと話すブルーノ。IVN, GOTS, JOCA, Oeko-tex, SACLといった世界基準の証明書を取得したファブリックをHonest byでは使用しているようですが、一方でオーガニック・マテリアルが本当の意味で私たちの環境に良いのかどうかという懐疑的な議論が世の中にあることも事実。しかし、ブルーノにとってオーガニック・マテリアルが本当に意味あることなのかどうかは問題ではなく、彼の試みの目的はサステナブルではない現在のファッション産業システムに対する新しいソリューション及び、選択肢を見つけることに主眼があり、オーガニック・マテリアルを使用するという方法論はその最良の代案とのこと。
自身もベジタリアン(ビーガンではない)だというブルーノですが、インタビューの中でHonest byのファースト・コレクションをインタビュアーが「服のビーガン・バージョン」という表現をしていたのが個人的に面白かったです。

今回のプロジェクトを始める際、ブルーノが決定した最初のルールの内の1つは動物性素材を回避することであったが、今回のコレクションを通して結局それはあまり困難でないことが分かったという。人間が自分たちの目的のために動物を殺すことが現代の世界理想の範囲内においてもはや合致しないと話しつつも、誰にでも自分自身の信条を持つ権利があり、そしてそこには善悪が存在しないので私たちは常に個人の直観を信じて進まなければならないと話す。

Honest byには収益の20%を慈善事業に寄付するというルールがあり、寄付先は各参加デザイナーによって選択される。今回のBruno Pietersによるコレクションの収益はSebastian Indian Social Projects(SISP)という南インドの慈善団体に寄付されるが、これは2年前にブルーノがインドを訪ねた際にSISPが子供たちの教育を熱心に行っていたことに由来する。

価格透明度はクライアントが自分たちがお金で何を買っているのか、何を支持し、何に投資しているのかを正確に知るために重要なことであり、Honest byのプライス・ポイントは一見、高級ブランドと思われるかもしれないが、高級ブランドであることがゴールではなく、その価格は生産工程と生産量の結果によって決定される。よって、レーベルが成功し、生産量が増大すればプライス・ポイントは自動的に下落するという。
また、今回オンラインだけで売ることに決めたのは自分たちのマークアップ価格をオープンにし、且つ、ブルーノたちの要求に譲歩する覚悟のあるリテーラーを探すことがとても難しいと思ったから、というのが理由のようです。

6月末までカスタマーに個人のスタイル・アドバイスを行うという決定は、オンライン・ショッピングが時々とてもカスタマーを混乱させることがあるということと、また、カスタマーがよく理解せずにアイテムを買ってしまうことがあるのでデザインを彼らに説明したいからとのこと。例えば、コレクションの中でコートのように見えるアイテムがあったりするが、実際にそれはカーディガンとして着られなければならなかったりするので、そういったことを説明し、人々が彼らの購入品に満足してデザインを理解することを確認したいというのが動機のようです。

将来的には他の国にウエアハウスストアをオープンさせ、カーボンニュートラルを達成したとしてもカーボンフットプリントを減らしたいというブルーノ。インタビューの最後のオーディエンスへの言葉は、"Enjoy the opportunity."とのことです。