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Nicolas Ghesquiere speaks his abrupt departure from Balenciaga.

BoFにSystem magazineによるNicolas Ghesquiereのインタビューの抜粋がアップされていますが、やはり彼がBalenciagaを離れた理由は経営陣との意見の相違にあったようですね。Nicolas Ghesquiereのクリエイションやアイデンティティを尊重も理解せず、売れるか売れないかのビジネス的視点のみで物事を判断していくビジネスライクな経営手法に嫌気が差したという感じでしょうか。作品制作の技術や研究云々よりも売買可能な服であるかどうかにしか興味が無い経営層は、ファッションを愛していると言いつつも、最も純粋にセンスが求められるファッションをヨーグルトや家具の一種を製造するのと同じようにしか認識していないため、現在、Balenciagaのプロダクトは複製可能で均質なモノに変わりつつある、と。

そして、そういった状況に陥らないためには自分の周囲にファッションというものを適切に理解し、ラグジュアリーという領域を敬慕する然るべき人たちが居てくれる必要があるとのこと。ファッションに対するヴィジョンを自分自身が持つ必要性があるけれども、それを推進させるのを手助けしてくれる(Miuccia PradaにおけるPatrizio Bertelliのような)パートナーやデュオが居なければならない、と話していますね。インタビューからは彼がBalenciagaでとても孤独を感じていたのが伝わってきます。

多くの人がBalenciagaとNicolas Ghesquiereの関係性は磐石でこのまま半ば永久的に続いていくものだと思っていた中での辞任でしたが、これはBalenciagaからの解雇ではなく、彼自身の選択としての離別であったのでもちろんリスクもありますが、Balenciagaから自分の名前を解放するという意味でポジティブに捉えているようです。
次の章に備えてファッション業界で起きていることに注視しているという彼ですが、シグネチャに関する言及もありつつ、今後、彼がどういった選択をしたとしても刺激的で多くの可能性が開いているというのは正にその通りと言えるでしょうね。

Christian Lacroix for Schiaparelli

Christian LacroixがSchiaparelliのためにスペシャルコレクションをデザインするというニュースが報じられていますね。
7月のオートクチュール期間中に21 Place Vendomeで、15のクチュール・ピースが披露されるようです。Christian Lacroixによれば、「しかし、それは(私の)ファッション界への復帰ではありません。私はSchiaparelliの中心的な存在になるつもりもありませんし、キャットウォーク・ショーも行いません。それはシンプルに彼女のコレクションを再訪問するというアイデアです。」とのこと。

tFSでは早速コレクションの内容が予想されていますが、Salvador Daliとのコラボによる"Lobster Dress"や"Tears Dress"に"Shoe Hat"、そして、"Skeleton Dress"といったアイデアを用いたシュールリアリズム的なコレクションになるのか気になるところですね。

Tom Ford talks 2013-14AW Collection

WWDにアップされているBridget FoleyによるTom Fordのインタビューがとても面白いですね。
彼のファッション界への復帰後、初となるランウェイショーで披露された2013-14年秋冬コレクションですが、多くのエディターの評価は彼が予想していたものよりも、とても低いものだったというのを彼自身が認めているのが結構意外な印象を受けます。

"Cross Cultural Multi Ethnic"と題されたTom Fordのコレクションはグラフィックとカラーがオーバーロードを起こした多民族的なものでしたが、自分の感想としてはSaint Laurent by Hedi Slimaneと同じく古臭さが感じられるコレクションだったかなと思います。
繊細さを欠いた過剰なグラフィックパターンのゴリ押しや色彩設計、サーフェスの処理が粗野に見えるマテリアル、そして、彼の専売特許である耳元で漏れる吐息のようなセクシャルな色気の不在、など。それらが80年代の香りを纏って表現されてしまっていたのが13-14AWのコレクションだったかなと。Tom Fordの説明によれば最初から80年代を意識していた訳ではなく、結果的に80年代の雰囲気になったとのことですけれど。

ランウェイショーで服が良く見えなかった理由を重厚な雰囲気であった会場(ロンドンのLancaster House)に求めていますが、どうなのでしょうね。豪華な会場で過剰な服を披露するブランドは、間々あるような気もしますが。個人的にはエディと同じように今の時代の空気を捕らえきれていないことにその理由があるのでは?と思いますね。ブランクがあるのでどうしてもまだ勘が戻っていないのではないかなと。

そして、エディターからポジティブな反応を得ることができなかったことを誠実に受け入れつつ、次のシーズンに目を向けて前向きに話をしているのが、自信家のTom Fordにしては意外な感じがします。今回のコレクションの失敗から何かを学び、軌道修正を図ろうとしているのが興味深いところで、エディも少しは見習うべきなのでは・・と思ってしまった次第。ファッション・ジャーナリストに関してもTom Fordは、「今までジャーナリストを出入り禁止にしたことはありません。」と話していたりしますし。

今回のような過剰なコレクションを提示しておきつつも自身のことを商業的なデザイナーだと話しているのが彼らしいですね。そして、ミニマリズムにウンザリしているというのも面白いところです。

Tom Fordというブランドを10年以内に世界のラグジュアリーブランドのトップ5までに成長させる、という目標も彼らしい分かりやすい話で、最後の"We live in the future, we don't live in the now."という言葉が彼の今後に期待をさせますね。

Interview with Kris Van Assche, The Ice on Fire - Liberation.fr

Liberation.frでのKris Van Asscheのインタビュー記事が面白かったので、今シーズンの話とDiorに関する部分のみ少し書いておきましょうか。
13SSコレクションのメタルボタンにあしらわれたモノグラム(クレスト)は、1951年にムッシュ ディオールによって発表されたドレスのカフスに初めて使われたデザインとのこと。そして、コレクションのインスピレーションソースには海軍の影響とは別にイタリアの照明デザイナーであるGino Sarfattiがあったようで、"Light"は文字通り光と軽さを意味し、光がランウェイショーのセットデザインへ、軽さはいつものように彼のつくる服へと昇華されているようですね。

Hedi Slimaneから引き継いでDior hommeでデザイナーを務めていることについては、女性が「装飾」が好きであるのに対し、男性は「正当」であることを好むように、男性のためのラグジュアリーとはロレックスやオメガといった腕時計のような技術やノウハウに関するものであり、それが本当の男性のためのラグジュアリーであるということを理解した時、Diorで自分の進むべき道を見つけたとのこと。彼がアトリエワークにフォーカスする理由をスイス時計に例えているのは、とても分かりやすい説明で納得できる感じですね。

ムッシュ ディオールは決してメンズウェアをつくりませんでしたが、Christian Diorというメゾンのヘリテージとしてディオールの精神性をを考慮する必要があり、ムッシュのデザインする服は外側よりもその内部構造に重きがあったとのこと。よって、徐々に服の外側をミニマイジングすると共に内部をマキシマイズし始めることをクリスはしたようですね。
また、ムッシュは自身を革命家と看做すことをせず、彼は何よりも人々をより美しくしようとしていました。素晴らしい精度と美しさの中にさり気無さが伴うような仕事がムッシュにはあったので、それを彼はメゾンの遺産と認識しているようです。

他にも、彼が生まれ育った村(Londerzeel)が死ぬほど退屈であったという話や保守的な彼の両親と少し風変わりで彼に影響を与えた祖母の話、そして、シグネチャ・ブランドの話など、インタビューの話題は多岐に渡るので気になる人は一通り読んでみると良いかなと思います。


Christian Dior Women's Bag Event at Dior Omotesando

写真は、dior.comから。そういえば、少し前からDior Magazineで日本語記事の配信が始まっていますね。仏語や英語とタイムラグ無く配信してくれると便利で良いかなと思います。

それで、今日はDior表参道でウィメンズのバッグに関するちょっとしたイベントがありましたね。1Fで行われたのですが、内容は2013年春夏コレクションのスカーフを首に巻いたバー・ジャケットのセットアップスーツとジャケットドレスを着た海外のモデルさん2人が"Diorissimo"、"Lady Dior"、"Miss Dior"、そして、今シーズンのランウェイでお披露目された"Dior Bar"を持ってウォーキングをするといったものでした。

"Dior Bar"は、その名が示すようにバー・ジャケットをイメージしてつくられており、バッグの側面にパールのような口金が付いているのが特長的ですね。ジャケットはボタンを留めても外しても自由に着れるように、"Dior Bar"も金具を留めても外しても好きに使えるようになっているのが「ジャケットのようなバッグ」という意味で面白いデザインだと思いました。

また、モデルさんが着用していたRaf Simonsによる13SSコレクションがとても素晴らしく、バッグよりもコレクションアイテムを着用したモデルさんを見ることができたのが結構貴重だったかなと。ウィメンズのイベントも個人的にはとても楽しいので、今後も機会があれば是非チェックしていきたいですね。

Saint Laurent by Hedi Slimane exploring YSL's Archives

Hedi SlimaneによるSaint Laurentのコレクションは、実はYves Saint Laurentのアーカイヴへのリスペクトが存在していたというが面白かったのでご紹介。元々は、tFSで話題になっていた話です。

上の写真は、1968年のSaint Laurent Rive Gauche Collectionからの光沢のあるブラックトレンチコート。
エディに通じる雰囲気があると言えばありますでしょうか。

そして、こちらはイヴ自身の写真ですが、エディっぽく見えなくもない・・でしょうか。

最初の写真は、1971年春夏のオートクチュールからとのこと。
2番目の写真は2013年春夏のアイテムで、最後はPre-Fall 2013のLook(Sky Ferreira)ですね。

そして、2013-14AWのSaskia de BrauwのLookは、1968年秋冬のオートクチュールからの引用だったのでは?との指摘。

こうして並べて見ると確かにYves Saint Laurentへのリスペクトがあるように見えなくもありませんね。Saskia de BrauwのLookは一番それっぽい感じ。それ以外は無理矢理感が無くも無いので。エディはある程度意識してやっているとは思いますけれど。

ただ、(多くのデザイナーに言えることですが)過去のアーカイヴを再現するだけで「リスペクト」というのは安易と言えるでしょう。クリエイションとはそんな単純なものではないのですから。そして、Saint Laurent by Hedi Slimaneが直面している最大の問題は、そういった「リスペクト」云々以前のところにある訳ですけれど、ね。