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RICH magazine issue 02: 2011 Winter "Beautiful Moment"

RICH magazineの第2号。
青山ブックセンターに寄ったら置いてあったので買ってきました。
今回も田島一成と加茂克也の作品が載っていたりするので、気になる人は手に取ってみると良いかなと思います。

via www.richmagazine.jp

Chanel 11SS Haute Couture Collection

Karl LagerfeldによるChanel 11SS Haute Couture Collection。
インスピレーションソースは、Coco Chanelのポートレイトも描いたMarie Laurencin。Karl Lagerfeldは1908年から1930年代までの若い頃の彼女の作品が好きとのこと。ちなみに、Coco ChanelはMarie Laurencinが描いたポートレイトをあまり気に入らなかったようですね。

コレクションのカラーパレットは、パステル・ピンクや仄かに色が加えられたグレーにシルバーなど。そこへブラックをアクセント的に用いることによってコレクション全体が甘くなり過ぎないようにカウンターを当て、バランスを取っていました。色のムードに関してはVilhelm Hammershoiの影響もあったようで、コレクションは光や色、ファブリックの軽さや柔らかさ、そして、透過性への言及として展開していましたね。

シルエットはAラインベースに、クラシック・ツイードジャケット、セパレートされたバレエ・フラットシューズ、タイトなスパンコール・パンツにスリットボタン・デニム、シルクサテンのティアード・スカートドレスなど。イヴニングはトランスパレンシーでソフトネスなドレスをフィーチャーしていました。チョーカーにイヤリング、ウエストの垂らしたベルトやリボンも上手く機能していたかなと思います。

Karl Lagerfeldが"embroidery of light"と呼び、Amanda Harlechが「蜘蛛の巣の上の朝露」と表現したLesage, Montex, Hurelによる刺繍の他にも、Karl Lagerfeldがインタビューで話しているMademoiselle Pouzieuxによるガロン(ジャケットなどの縁の部分)も見所でしたね。また、ランウェイショーがStella Tennantで始まり、Kristen McMenamyの花嫁によってクローズする演出も印象的だったかなと思います。

Christian Diorとは対照的にクチュールをRTWのように解釈し、シルエットやボリュームによってドライヴされるのではなく、アトリエのテクニックをクロージングの中に詰め込んで、内側の煌きとして発露させているのが素晴らしいコレクションでしたね。

via chanel-news.chanel.com style.com fashion.telegraph.co.uk nytimes.com runway.blogs.nytimes.com fashionwiredaily.com tFS

Christian Dior 11SS Haute Couture Collection

John GallianoによるChristian Dior 11SS Haute Couture Collection。
インスピレーションソースは1940年代から50年代に掛けて活躍し、Christian Diorのアートワークも手掛けたファッション・イラストレーター、Rene Gruau。

コレクションはレッドやマゼンダをポイントとしたシックなカラーパレットを用い、Rene Gruauのイラストレーションのタッチを各Lookに巧みに反映。ブラシのストロークによる「かすれ」や「入り・抜き」、水彩画のようなカラーの濃淡といった要素を上手く組み込んでいましたね。色の明暗(濃淡)に関しては、フォトグラファーのIrving Pennの影響についてもSuzy MenkesやTim Blanksはレビューで指摘しているところです。

ファブリックはクチュールらしく、立体的で彫刻のように。チュールやシルクは多層化し、ボリューミーに。ブランドのサインであるペプラム・ジャケット、アワーグラスを強調する存在感のあるベルト、ペンシルやサンレイ・プリーツのスカート、フロア・レングスのツイストされたドレス、Stephen Jonesによるヘッド・ドレスは縦方向に立ち上がっているのが印象的でしたね。

Christian Diorのクチュールコレクションのテーマやインスピレーションソースは、メゾンの歴史に関連性のあるものだけがピックアップされ続けている感があって、あまり大きな変化が無いかなと思います。クリエイションとして大きな冒険をしないのでハズレもないのですが、面白さという点で言えば少し弱いかなと思ったり。オートクチュールの顧客視点で言えば、ビジネス的にはこれが正解なのかもしれませんけれど・・ね。

via style.com vogue.com fashion.telegraph.co.uk nytimes.com fashionwiredaily.com tFS

Yves Saint Laurent 11-12AW Men's Collection

Stefano PilatiによるYves Saint Laurent 11-12AW メンズコレクション。
テーラリングをボディコンシャスな方向性で再構築し、オーバーサイズのアウターウェアも登場させた今回のコレクション。カラーパレットはネイビーやグレーなどのシックなカラーをベースに、インナーのタートルネックやシャツにグリーンやイエローなどの色を入れる感じでしたね。

アンクル丈のトラウザーやファブリックのチェックパターンからはブリティッシュ・トーンが漂っていましたが、ピラーティによるとあまりそういう意識は無かった様子。全体的にクラシックな雰囲気でランウェイ終盤のダブルのスーツはらしいな、と思いました。でも、個人的にはもう少しモード寄りのコレクションが見たかったり。
モデルのキャスティングでは、Yuri Pleskunが歩いていたのが気になった感じですね。

via style.com wwd.com fashionwiredaily.com showstudio.com tFS

Lanvin 11-12AW Men's Collection

Lucas OssendrijverとAlber ElbazによるLanvin 11-12AW メンズコレクション。
Lucas Ossendrijverの話によれば今回のコレクションは、クロコダイル・レザーローファーにハイキングブーツをミックスするなど、クラシック・ピースとモダニティの緊張関係によって駆動されたとのこと。テーラリングにはスポーツウェアの影響もあり、ボタンにマグネット・ボタンを採用したLookも登場していましたね。
一方、Alber Elbazの説明によると「通常、若者について話をする時、それは「クール」か「セクシー」であり、「エレガンス」は年を取った人々を記述する際に使われる言葉です。しかし、我々は若者に対してエレガンスを齎したかった。」とのこと。

ルカの話すクラシックはダブルスーツやシャツにネクタイ、ワイド・トラウザーといったアイテムとして表現され、スポーツウェアとしては登山やトレッキングをリファレンスとしたロープ型のベルトやダウンジャケット、バッグに付いたカラビナなどがあった感じですね。
エルバスの話すエレガンスに関しては、Tim Blanksがレビューの中で指摘するように平静と抑制をエンファサイズすることで実現しようとしていましたね。具体的には、斜めに被ったハット、マフラー、シャツとレイヤードされたハイネックニットなど。各要素が身体を包み込み、Lookに落ち着いた雰囲気を与えていたのが印象的です。

Dazed Digitalのインタビューの中でルカがフェイバリット・ピースとして挙げているのがLook17のキャメルコートなのですが、このLookにはフォックス・テイルが付いていて、これについてTim Blanksの記事の中で"Yes, because everyone has a foxy side,"と答えていたのが個人的にちょっと面白いなと思いました。

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Raf Simons 11-12AW Collection

Raf Simons 11-12AW メンズコレクション。
インヴィテーションに書かれていた文字は、"the Rise of the Craftsman", "Fall of the Prince", "Dead Prince College"。
イタリアのFuturenet Groupとのパートナーシップの解消報道が流れており、今回のコレクションの生産中止などを含め、今後のことが心配な状況の中で行われたランウェイショー。

青春期と成熟期のミックス、そして、クラフトマンへの敬意を表現したコレクションは、ダッフルコートやニット、PVC素材のワイド・トラウザー、そして、スーツといったアイテムによって展開。ラウンドショルダー・シルエットにボクシーなジャケット、ネオプレン・コート、カレッジ・スウェットやロングニットなど。色やグラフィック・パターンも用いつつ、フォーマルさとカジュアルなユースカルチャーを組み合わせている感じでしたね。丸みを帯びたシルエットによってドライヴされている部分が結構あったと思いますが、個人的には彼の直線的なカッティングの方が好きかなと・・。そういう意味で言えば、11SSっぽさをもう少し残してくれると良かったかなと思いますね。

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Dior Homme 11-12AW Collection

Kris Van AsscheによるDior Homme 11-12AW Collection。タイトルは、"ENFOLD / UNFOLD"。
11SSコレクション"Lessness"において行われたファブリックやシルエットの流動性に関する調査は、今回の秋冬コレクションにおいても引き続きメインテーマとなったようですね。ただし、秋冬は春夏に比べて固いファブリックとレイヤードになるため、単純に春夏と同じ方法論では実現が難しく、ノー・インサイドライニング・コートなどでは両面カシミアにする等をしているとのこと。プリーツ入りのトラウザー、ハット、トレンチといったクラシックな固いメンズ・ワードローブを如何にしてルーズに快適に表現できるか?という考えがコレクションのベースにあったようです。この辺は彼の設計思想の基本となる部分ですね。

Kris Van Asscheのシグネチャのコレクション・レビューの際にご紹介したInterview Magazineの記事において、Dior Hommeとシグネチャの違いについて彼が話している部分があるので簡単に書いておくと、彼がコレクションをつくる時は想像上の男性についていつも考えているとのこと。そして、その架空の男性は自分と共に成長し、進化をする、と。Dior HommeとKris Van Asscheにおいてその男性はわずかに異なるが、結局のところ同じ原則を共有するのだとか。

Dior HommeとKris Van Assche。その2つは何よりも心の有り様であって、連続的に彼の心の中で意見を交わす。Dior Hommeのファースト・コレクションの際、2つをマスマティカルな方法によって区別しようとしたけれど、後になってその2つの宇宙は同居することができることを思い付いた。コレクションの制作においては、もはや2つを区分することについてではなく、利用可能なクリエイションの実現手段が違うというテクニカルな現実について考えている。そして、その結果としてコレクションは根本的に異なったものとなる。
Kris Van Asscheでは非常にパーソナルな必要性からコレクションを開発し、私はKris Van Asscheというブランドの最初のクライアントだった。Dior Hommeでは、自分の嗜好に従う部分もあるが異なる種類のカスタマーについても考えている、とのこと。

いつものように意訳しているので詳細は原文をご参照頂ければと思うのですが、上記のようなことを踏まえた上でコレクションを見ると見方が変わって面白いかなと思います。

話をコレクション・レビューに戻して。
シャンデリアに暖炉、フレンチドアをランウェイにセットして行われたショーのカラーパレットは、チョコレートにブラック、グレー、シルバー、そして、終盤に登場した目の覚めるようなレッド。包み込むようなソフトな質感のファブリックに、レイヤードされたクロージング。ハイネック・ニットはシンプルながらノーブルなその静かな美しさを伝え、それとは対照的にunravelingなニットにはもう少しカジュアルな若さのようなものがありましたね。ジャケットやコートの前身頃が展開し、内側の切り替えしが見えるというアイデア。ワイドブリム・ハットはアーミッシュのように。ワイドパンツのドレープは流動性への頷きがあった感じですね。

シグネチャよりもシャープでソフィスティケートされた雰囲気がコレクションにはあったかなと思いますが、どうでしょうか。マテリアルとテーラリングのテクニックによってソリューションを実現するという方法論。そしてそれを積み重ねていくのが彼らしくて良かったかなと思います。

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Ann Demeulemeester 11-12AW Men's Collection

Ann Demeulemeester 11-12AW メンズコレクション。
18世紀後半から19世紀に掛けて生きたイギリスの詩人で画家の"William Blake"が現代に蘇ったとしたら、それはどのようになるだろうか?という想像がクリエイションのスターティング・ポイントとなった今回のコレクション。

闇を表現するモノトーンのLookをキャンバスに見立て、そこにはジャケットを舞う雪を通して表現された空、水彩画のような揺らぎによって映し出された水などが描かれ、そして、コレクションのカラーパレットは、オレンジは炎を、ゴールドは太陽、そして、ブルーは海をイメージ。彗星のプリントが夜空を駆け、ペガサスのメタファーとしてモデルには馬毛による髪飾りがセットされていました。

アンのクリエイションの中でレザーは常に重要なマテリアルですが、今回はクロップド・ジャケットなどに組み合わされていたシルクの層を持つレザー・パンツが面白いアイデアでしたね。彼女曰く、トランスパレンシーなシルクとコントラストを描く今回のレザーは自由な精神を表現しているとのこと。

ポエティックでロマンチックなモチーフを散りばめて描かれる男性像は繊細な美しさと強さが同居しており、いつものように彼女にしか表現できないコレクションだったかなと思います。

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John Galliano 11-12AW Men's Collection

John Galliano 11-12AW メンズコレクション。インスピレーションソースは、バレエダンサーの"Rudolf Nureyev"。
John Gallianoによると、"The idea of hope, discipline, dreams - the way he fled Russia,"とのこと。

ランウェイショーはヌレエフの出生地であるロシアからスタートし、その後、バレエ界で彼が成功するというストーリーを表現したもの。ショーが進むに連れて移民のようなLookが徐々にバレエ・タイツやラグジュアリーな服へと変化していくのが面白いですね。

ハイ・ボリュームの亡命者Lookでは編まれた髭と積もった雪が雰囲気を出し、次のパートでは、スカーフとヘアスタイル、メイクによって性差を超えた同性愛への言及を。ランウェイ中盤にバレエ・パートを挟みつつ、後半は再度ロシアへ帰還しますが、そこにはもう亡命者のような面影は残っていない、という。

ヌレエフの人生をそのまま描いたという訳ではありませんが、一人の人間の人生をリファレンスとしたコレクションはガリアーノのクリエイションに上手くマッチしていてとても良かったのではないかなと思います。

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Givenchy 11-12AW Men's Collection

Riccardo TisciによるGivenchy 11-12AW メンズコレクション。
停電によって90分遅れで開始されたランウェイショーは、ロットワイラーをフィーチャーしたプリンティング・コレクション。
今回のコレクションのインスピレーションソースとして、Dazed DigitalのインタビューでRiccardo Tisciは、"I wanted to do a collection that was dedicated to my childhood and the three things I was obsessed with was the suburban Italian boy who's never travelled abroad, and rottweiler dogs which you could not get hold of in Italy in the 70s, and the American actor Jerry Lewis. The collection was super high ironic chicness. "と話していますね。

ランウェイショーは、彼らしくストリートウェアをリファレンスとしたギャングスター・トーンの要素に滑らかな質感のテーラリングを組み合わせたもの。レターマンジャケットのレイヤードやボマージャケット、カナディアン・チェックのシャツ、ハーフパンツにレギンスはいつもの感じで、ソールがスニーカーのような(ニーハイ)ブーツも目を惹きました。
全体的に宗教的な雰囲気はかなり薄くなっていて、各所のレビューでも書かれているようにKanye WestやJay-Zっぽさが強かったかなと思います。

モデルのキャスティングに関してはアメリカの海兵隊員を起用したりもしていたようですが、10-11AW AD Campaignに起用されたJoan Smalls、11SS AD Campaignに起用されたDaphne GroeneveldとSaskia de Brauwをキャストしていたのが気になりましたね。

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Comme des Garcons Homme Plus 11-12AW Collection

川久保玲によるComme des Garcons Homme Plus 11-12AW コレクション。テーマは、"Decadence"。
デニム、ブロケード、U2 tee、ピンストライプ、フリル・カフス、バスローブ・コートなど、異なったカルチャーをミックスし、それらを終末観によって統合していましたね。tFSでもコメントされていましたが、ガリアーノの場合だとファッション・サーカスになってしまいますが、彼女の場合はあくまでも現実の延長線上の幻として描いているのが印象的。モッピーなウィッグを髪に付けたモデルも雰囲気を出していたかなと思います。

シックでダークトーンのカラーパレットの中では、オリエンタリズムとしての朱色が際立っていました。数Lookでしか使われていないのにコレクション全体に影響を与えていて、ヒストリカルな色の強さを再認識させられた感じがあって面白かったですね。

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Kris Van Assche 11-12AW Men's Collection

Kris Van Assche 11-12AW メンズコレクション。
先日のInterview Magazineのインタビューの中でKris Van Asscheが答えているように、彼のクリエイションのフォーカス・ポイントは、"スーツの再発明に関する連続的な再検討と再定義"ですね。少年がやがて大人になり、社会に出る際に着る成熟さの象徴としてのシンボリックなクロージングであるスーツ。それを如何にして新鮮に、そして、快適に再構築できるかが彼のクリエイションの軸に存在しています。

今回のコレクションに関してクリスによれば、「とてもアーバンで、クールなもの。スーツをスポーティやグランジーな手段でクールにする方法。」とのこと。カラーパレットはブラックを中心とし、キャメルブラウンが差し色的に使われていましたね。10-11AWでもあったチェック・パターンは今回もグランジから。フォーマルとアーバン・カジュアルが出会うことで描かれるリラックス感は彼らしさに溢れていますね。着易さの表現としてボタンではなくジッパーが多用され、足元までのレングスのカーディガンやオーバーサイズなアイテムはルーズな緩さがあったと思います。

前述のインタビューやWWDでも報じられていたようにEastpakとのコラボによるバッグも登場していましたが、これは12SSも引き続きあるだろうとのこと。コレクションで使われていたショルダーバッグはLookと上手くマッチしていて、良い感じだったかなと思います。通常、ジャケットにショルダーバッグは肩が潰れたりして違和感を感じるのですが、彼のこの提案はそれでも尚、快適さが保てるという表現なのかなと思いました。

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Junya Watanabe MAN 11-12AW Collection

渡辺淳弥によるJunya Watanabe MAN 11-12AW コレクション。
Woody AllenとDiane Keatonによる映画「Annie Hall」のサウンドトラックをBGMとし、ランウェイに置かれたベンチの周りをウォーキングする形で行われたショーは彼らしくアメリカへの言及としての展開。ジャケットにピーコート、ダッフルコートやブラック・レザーのブルゾン、そして、ノースリーブ・ダウンジャケットなど。お馴染みのアイテムばかりでしたが、今回はフェア・アイルやチェックパターンがフィーチャーされていましたね。ジャケットのラペルがリブになっていたのは個人的に目を惹きました。

アウターのエルボーパッチやパッチ・ポケット、8分丈パンツやロールアップされたデニムといった古典的なガジェットも各Lookの中で適切に機能していて、雰囲気を上手く出していたかなと思います。

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Yohji Yamamoto 11-12AW Men's Collection

山本耀司によるYohji Yamamoto 11-12AW メンズコレクション。
18世紀のヨーロピアン・エレガンスを用いた昨シーズンに比べて、彼らしくビッグシルエットへと回帰した今回のコレクション。グレーのヘリンボーン・フランネルやブラックのリネン素材を用いて描かれるビッグシルエットのセットアップ・スーツ、ウォーキングするモデルが片手をポケットに入れていたのが印象的なロールアップされたワイドパンツ、赤い唇やスケルトンなどがインタルジア・パターンと共に描かれたセーター、お馴染みのモチーフであるバードをあしらったコートやグローブ、ランウェイ後半に登場した真っ赤なビロード・コート、そして、最後を飾った詩的な響きのあるエロチカ・プリントのシルク・コート。

若者から成熟した初老の紳士まで、そして、痩せたモデルからチャビーなモデルまでをキャストしたランウェイショーはSuzy Menkesがレビューに書いているように、「すべての人のためのファッション」といった趣があったかなと思います。

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Rick Owens 11-12AW Men's Collection

Rick Owens 11-12AW メンズコレクションはいつものようにブラック、ホワイト、グレーをカラーパレットとし、ジオメトリックなカッティングとレイヤード・スタイルによって宗教的な雰囲気を含んだタフな男性像を描いたもの。反復的ではありますが毎回微妙な変化がコレクションにはあって、それがとても彼らしいかなと思います。少しずつ前に進んでいく感じですね。

ランウェイショーはレザー素材のコートとブレザーを中心に、ボトムにはレイヤードされたスカート、足元にはブーツを。スリーブ・レスやフード、ハイネックといったディテール、ジッパーの用い方はいつものように。ダッフルコートに使われていたメタル素材のトグルが個人的に目を惹きました。また、メタル・プレートが使われたLookもいくつかありましたね。Tim BlanksがBandoleerっぽいとレビューしていましたが、そんな感じもしましたでしょうか。ブーツのジッパーが空きっぱなしになっていて、ハイカットスニーカーのようなシルエットになっていたのも面白かったかなと思います。螺旋を描くジッパーもリックらしいアイデアでしたね。

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Gucci 11-12AW Men's Collection

Frida GianniniによるGucci 11-12AW メンズコレクション。
ブランド創設90周年をセレブレートするランウェイショーは、Gucciらしく70年代のトーンによって展開。コレクションはシックなカラーパレットにワイド・ラペルでロープド・ショルダー風のセットアップ・スーツを中心とし、そこにクロコダイルやオーストリッチといった素材のコートやブレザーなどを組み合わせたもの。

ここ数シーズンを踏襲するようにギラギラした感じはあまりなく、あくまでもシックにウェアラブルにまとめていましたね。インナーのシャツなどにもグラフィック・パターンは使用せず、シャツ・タイにもシンプルなニットを合わせていました。ボトムに関してはトラウザーがフレアになっていたのが気になった感じでしょうか。

「リファレンシャルでもノスタルジックでもなく、新しい物語が欲しかった。」というフリーダの発言がありましたが、作品として新しさに関する言及は(例えある程度完成度を犠牲にしたとしても)もっと欲しかったかなと思います。

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Prada 11-12AW Men's Collection

Miuccia PradaによるPrada 11-12AW メンズコレクション。
Frederic SanchezによるサウンドトラックはMotorheadやMetallicaなどをBGMにセット。ダーク・トーンのコレクションは、ボックス・シルエットのスクウェアな3Bジャケットやコート、スウェード素材を用いたアーガイル・パターンのジャケット、ルレックスによるVネックニットなどによって展開。四角いレザー・トランクバッグなどからはレトロな香りが漂っていましたね。

特定のテーマや単一的なインスピレーションソースを持たない、ランダム且つ、内向的な雰囲気のミステリアスなアンバランス感は、作品全体の強度を上げる役割を果たしていたかなと思います。

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Burberry Prorsum 11-12AW Men's Collection

Christopher BaileyによるBurberry Prorsum 11-12AW メンズコレクション。
1960年代初期のBurberryのAD Campaignにあったレインコートのイメージをインスピレーションとし、英国の天気に関する調査としてBurberryらしくコートにフォーカスを当てた今回のコレクション。Christopher Baileyが"Burberry weather boys"と呼んだように、雨や霧、風や雪などの気象シチュエーションが各Lookに影響を与えているとのことで、フィナーレの雨の演出もこの辺から来た感じですね。

カラーパレットはランウェイ前半に若干の色を配置し、中盤から後半に掛けてはブラウンやベージュ、ブラックなどのダーク・トーンで。ボックス・シルエットなコート、ハットやコートの襟などに用いられていたジャガーミンク、クルーネックやVネックのモヘアニットなど、全体的にフェミニン・タッチで描かれていたのが印象的でしたね。ボトムは基本的にスラックスで、スニーカーを用いたLookが3Lookだけありましたが、あとはビブラム・ソールのようになっていたウイングチップが目を惹いたかなと思います。

過去2シーズン続いていたミリタリーテイストのハードなトーンからソフト路線へ変化しましたが、個人的にはもう少しシャープな雰囲気の方がプローサムには似合うような気がします。メンズの可愛らしさに関して言えば、PRADAなどはコンパクトに上手く表現する感がありますね。

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Jil Sander 11-12AW Men's Collection

Raf SimonsによるJil Sander 11-12AW メンズコレクション。
今回のコレクションのスターティング・ポイントはJil Sanderの初期のメンズウェアへの再訪だったようですね。そしてそこにはアーミッシュの影響もあったとのこと。
ランウェイショーのBGMには映画「The Social Network」のサウンドトラック(Nine Inch NailsのTrent Reznorが担当)も使われていましたが、映画自体は日本でも土曜日から公開が開始されており、自分も映画館で視聴してきたので結構タイムリーだったりします。映画はとても良くできているので、気になっている方は映画館に足を運んでみると良いかなと思います。

マテリアルとテクスチャーにフォーカスし、現代的なアプローチと解釈によって再訪されるJil Sanderのメンズウェアへのルーツ。カラーパレットは春夏コレクションから引き続きカラフルでしたが、春夏よりも全体的にシックな印象でColor Explosionという感じではありませんでしたね。ランウェイショーは家具などに使用される工業素材のウールを用いたスーツから始まり、ナイロン素材のキルティング・ファブリックによるカットソーなどを多用。マルチポケットのアノラック・パーカーなどはウィメンズの11SSコレクションにあったアイデアですね。スタイリングに関しては、レイヤードのタートルネックやニットが古典的ではありますが良かったかなと思います。

インスピレーションソースやテーマに頼ったコレクションではなく、地に足の着いた、ブランドのDNAとしてのミニマリズムを体現するコレクションは、奇を衒ったアヴァンギャルドなデザインだけが必ずしも新しさへ通じている訳ではないことを思い出させてくれますね。

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Dolce & Gabbana 11-12AW Men's Collection

Domenico DolceとStefano GabbanaによるDolce & Gabbana 11-12AW メンズコレクション。
"Sartoria Eccentrica"をテーマとし、Front Rowに招いたBryan Ferryの曲をサウンドトラックとして行われた今回のランウェイショー。Bryan Ferryの"The Price of Love"などのデザインはTシャツのプリントにも使われていましたね。

コレクションはテーラリングにフォーカスしつつ、カラーパレットの(ワイン)レッドやストライピングを効果的に使用。ジャケットの着丈は短めの印象で、ローライズのマルチポケット・パンツにサスペンダー、トリルビーや黒縁メガネなどはティピカルなDolce & Gabbanaですね。デニムはテーパードが入ったものが目に付きました。ファーを用いたLookもいくつかありましたが、全体的に大人しかったかなと思います。

tFSでも指摘されているように、ここ数シーズンの彼らのクリエイションはノスタルジア過剰な感じがしてしまいますね。経済不況からウェアラブルなシシリーへ回帰したまでは理解できるのですが、そろそろ新しさへの言及があっても良いかなと思うのですがどうでしょうか。

via style.com wwd.com

Gareth Pugh Mini-Collection at Pitti Uomo

Pitti Uomoで公開されたRuth HogbenによるNatasa VojnovicをフィーチャーしたGareth Pughのショートフィルム。サウンドトラックはGareth Pughのランウェイ・ミュージックも手掛けているMatthew Stoneによるもの。"I like the idea of mixing hard with soft, masculine with feminine and light with dark. And for this show I wanted create the notion of a figure emerging from darkness into the light"というGareth Pughの発言にもあったように、今回のフィルムでは闇の中から発現する光の概念を表現したかったようです。

3月にパリで行われる予定のウィメンズの11-12AW Collectionのムードボードとしての意味合いもあった今回のコレクションですが、各所のレビューでも書かれているように目に付いたのはカラーパレットとして使用されたゴールドとブルーですね。Dazed Digitalのインタビューによると、ゴールドはフィレンツェの風景にあるゴールデン・トーン(文中の"gold gates"は、天国の門などを指している感じでしょうか)からで、ブルーは宗教画からキューをとって純粋さとフェミニティを表現していたようです。

個人的にはフィルムよりもランウェイ方式を期待していましたが、彼のどこかフューチャリスティックなスタイルがフィレンツェの歴史に出会うことでカラーパレット等に変化が起きていたのが面白いミニコレクションだったかなと思います。インタビュー中でも彼が答えているように、ストレッチ素材のファブリックによるフロア-レングスのロング-グラマラス・イヴニングドレスは、ランウェイショーでもフィーチャーされるのを見てみたいなと思いましたね。

via style.com telegraph.co.uk

Karl Lagerfeld speaks of the Emmanuelle Alt's New Gig

WWDのアーティクルに対してfashionologieがポストしていましたが、今後、Emmanuelle AltはBalmainとIsabel Marantの仕事は行わずに編集長としての仕事に専念するようですね。Carine RoitfeldのBalenciagaとMax Maraの件がもし仮に事実だとすれば、Conde Nast Franceのこの決定にはそれも影響しているのかなと思います。

そして、Emmanuelle Altに対するKarl Lagerfeldの"Her style is her big shoulders, long legs, tight jeans, sleeves up to the elbow, one hip out," "I personally like her. She's a handsome French woman. She has a style, but is it enough to make a whole magazine?"という指摘は同意できますね。個人的に思うのは彼女がEditor-in-chiefという役職において自分の趣味をどこまで出すか?という表現の多様性の問題なのですが、これについてはKarl Lagerfeldが言うように、彼女が雑誌を2、3号出すまで判断は保留になるかなと思います。そして、"As editor in chief, she may blossom,"というのは期待したいですね。

その他、Inez van Lamsweerde and Vinoodh Matadin, Giambattista Valli, Mario SorrentiらのコメントもWWDの記事には載っているのでチェックしてみると良いかなと思います。

New Editor-in-Chief of Vogue Paris... Made Film at Dior Homme...

Emmanuelle Alt, redactrice en chef de Vogue Paris
Carine Roitfeldの後任としてVogue ParisのEditor-in-chiefにEmmanuelle Altが就くことが決定したとのこと。事前にいろいろと噂が流れていましたが、最終的に彼女に決まったのは順当な感じですね。今すぐドラスティックな変化が必要な訳でもないと思うので。
Cathy Horynの記事の中でFabien Baronが彼女のことを"She's more commercial than Carine - in a good way," "She's looser, more connected to the street."と表現しているのですが、誌面の表情はそういう方向性で少し変化する感じでしょうか。tFSでは、彼女のinaugural issueのカバーはBalmainのジャケットとIsabel Marantのパンツを穿いたDaria Werbowyだよね?、なんてコメントもあってちょっと笑ってしまいました。

A Tailor Made Film at Dior Homme
1月10日にDior HommeのオフィシャルサイトにフォトグラファーのWilly VanderperreがVictor Nylanderをフィーチャーした11SS Collectionのショーケース用の55秒間のショートフィルム"The Time I Had Some Time Alone"を公開するという話題。Karl LagerfeldがBaptiste Giabiconiを撮影したADと一緒にこのビデオのスチールもADとして使用されるようですね。

Scott Schuman's Visual Life... Inez and Vinoodh feat. Jo Ratcliffe...

少し前にアナウンスしていたサーバの移転が一通り完了したのでご報告しておきます。DNSの浸透に関しては、このエントリーが今まで通り読めている方は特に問題ないはず。もし何か不具合がある場合は教えて貰えると助かります。

Intel Visual Life: The Sartorialist
The SartorialistのScott SchumanをフィーチャーしたIntelのVisual Lifeのためのムービー。
エンベットしてあるYouTubeの映像のコメント欄を見ていて思い出したので書いておきますが、彼が撮影に使用しているカメラはCanon EOS 5D Mark IIなのですよね。

Spying On Kate Moss
Inez van Lamsweerde and Vinoodh MatadinがKate Mossを撮影したBalmain 10-11AWのADの撮影風景に、イラストレーターのJo Ratcliffeがアニメーションを付けたショートフィルム、"Everglade"。タイトルは映像のBGMとして使用されているAntony and the Johnsonsの同名の曲から取ったようですね。Jo Ratcliffeのインタビューもアップされているので、こちらも是非。

WWD INTERVIEW with Rei Kawakubo

年末に北京にオープンしたI.T Beijing Marketに関する川久保玲のWWDのインタビューが話題になっていますね。HypebeastThe Cutなどでもポストされていますが、全文と思われる文章はこちらにあったのでご参考まで。インタビューの内容は際どい質問がいくつかあってとても面白いです。

話題を簡単に紹介しておくと、インタビューは30?40年前の中国と現在の中国の違いから始まり、Comme des Garconsのコレクションへのアプローチとモチベーション、日本市場の縮減とファストファッション、過去に行ったH&Mとのコラボレーションについて、UNIQLOでのJil Sanderの仕事について、自身の引退と後継者問題、会社の株式公開の可能性、リテイル・コンセプトとビジネス、破産保護を受けているYohji Yamamotoについて、そして最後は、若手デザイナーについて、といった流れになっています。
それぞれの質問に関する回答はいずれも彼女らしく、経営者としての側面も垣間見ることができますね。

Givenchy 11SS AD Campaign

Mariacarla Boscono, Daphne Groeneveld, Natasha Poly, Iris Strubegger, Saskia De Brauw, Stephen Thompson, Pablo Otero, Jonathan Marquez.
Photographed by Mert Alas and Marcus Piggott.

via givenchy.com

Tom Ford 11SS Collection

Tom Fordのオフィシャルサイトに11SS Collectionがアップされていますね。
サイトトップで流れている映像も良い感じ。
ADのウィメンズモデルは、Abbey Lee Kershawですね。

The fashion of Bottega Veneta's Tomas Maier

年末にThe CutfashionologieでポストされていたNew YorkerのTomas Maierの記事が面白かったので、彼について少し書いておきます。

Guy LarocheやSonia Rykiel、Hermesなどを経て自身のブランドを1997年に開始し、当時、Gucciグループのクリエイティヴ・ディレクターを務めていたTom Fordからジョブ・オファーを受けて2001年にBottega Venetaのクリエイティヴ・ディレクターに就任したTomas Maier。Vanity Fairの2008年の記事によると彼は一度Tom Fordからのオファーを断ったようですが、後日考え直してオファーを受け入れたようです。そしてそれは非常に大きな挑戦になったとのこと。

破産の危機にあったBottega Venetaを過去9年間で売上高を800%アップさせた彼の功績に大きく寄与しているのが、ブランドのサインとなっているイントレチャートによるCabat Bag。職人によってハンドメイドで編まれるシリアルナンバー入りの各シーズン500個限定のバッグは他のブランドのバッグと違い、ロゴや装飾、金属部分が排除されているのが特徴的。Bergdorf Goodmanなどの高級リテーラーが取り扱いを申し出るもTomas Maierはこれを拒否しており、Bottega Venetaのブティックのみでの取り扱いとなっているとのこと。ちなみに彼はCabat Bagを"It Bag"と呼ばれるのを嫌っているようです。

その他の話題としては、彼はフロリダに住んでおり、ミラノが好きではないこと(コーヒー・ソーサーとスプーンの話はちょっと笑ってしまいました)、元々彼のファースト・ネームは"Thomas"だったが、ラスト・ネ?ムとシンメトリーにするために"h"を抜いて"Tomas"としていること、90年代において"Tom Ford for Yves Saint Laurent Rive Gauche"や"Dior by John Galliano" といったようにブランドにデザイナーの名前を付けて呼ばれることがあったがそれを彼は望まなかったこと(デザイナーの個人崇拝という考えを嫌うこと)、といったことも書かれていますね。

ここにはピックアップしなかった話題もあるので、気になる人はリンク先を読んでみると良いかなと思います。

2011

年末はあっと言う間に過ぎてしまい年も明けてしまいましたが、今年もいろいろ書いたり撮ったりしていければ良いなと思っているのでお暇な人はお付き合い頂ければ、と。

このサイトに関してですが、今月半ばぐらいに掛けてサーバ関連で少し作業を行う予定で、ドメインのDNSの切り替えのタイミングなどでは一時的に更新が反映されなかったりするかもしれません。その場合は時間を置いてアクセスして貰えれば大丈夫かなと思います。ちなみに基本的にバックエンドの作業なので、フロントエンドはほぼ変わらない予定です。

via guardian.co.uk