This is Not here - *//LIKE TEARS IN RAIN

Christian Dior 14SS Collection

Rodin Museumの特設テントにフローラル・ガーデンをセットして行われたRaf SimonsによるChristian Dior 2014年春夏コレクション。コレクションのタイトルは、"Against Nature"。
リアルとフェイクの入り混じったランウェイの花々が指し示すように、「自然物と人工物の並置」がコレクションのキーとなっていましたね。Raf Simonsのシグネチャの14SSコレクションも自然物と人工物の並置がテーマとしてありましたが、それをそのまま流用してのクリエイションとなっており、今現在の彼の興味関心がそこにあることを窺わせます。

ランウェイショーは、デコンストラクトされたクロップド・バー・ジャケットにプリーツ・スコート(スカートのようなショーツ)を合わせたDaria Strokousからスタート。カラフルで少しトロピカルな雰囲気のカラーパレットに、ジャングルに住むようなエキゾチック・レザーを用いたLady Diorがリゾート感を仄かに漂わせながらデフィレは進行する。

メゾンへの敬意として多用されるプリーツは斜めに引かれ、貝殻のような趣きを持ち、深海に住むマーメイドのように美しく女性を描く。Raf SimonsのJil Sander時代を彷彿とさせるコットン・ピンストライプのシャツドレス、クロップド・ニットやノーカラーのスプリングコートにはRaf Simonsらしくユースカルチャーから引用したクラブやスクール・エンブレムを配置し、"Alice Garden"や"Primrose Path"といったコンセプチュアルなワード・アートをさり気無くドレスにタイプする。シースルーのオーガンザ・スカートには立体的なボックスシルエットのノースリーブ・ダブルコートを組み合わせ、花のつぼみのような膝上丈のシルクシフォン・スカートが女性の中の少女性を優しく静かに表現。多くのLookで見られたネックレスは、海草のような雰囲気がありましたね。

フィナーレでは、ディオールのアイコンである千鳥格子をエンブレムに用いたバー・ジャケットのセットアップ・スーツやメタリック・シルクを用いたジャガード織りのイヴニング・ドレスが登場。ストラップレスのコンパクトなボディスにボリューミーなスカートを合わせたLookは、いつものようにポケットに手を入れてのウォーキングでしたね。

ラフによれば、「私の(Christian Diorでの)最初のコレクションは、(自身とディオールの)統合に関するものでした。」「今回のコレクションは、転換に関するより多くのものです。そして、私はそれを現代化するという観点からハードにプッシュしました。私は、もっと「私」が欲しかったのです。」とのこと。Christian Diorという歴史あるメゾン(自然物)に自身のアイデア(人工物)をより多く侵入させるという試みが今回のコレクションにはあり、それは美しく生い茂った庭園を「より危険で、より有毒に」することを意味する。

フィナーレ直前のVlada RoslyakovaのLookでは、バー・ジャケットの後身頃にフローラル・パターンのフレアをあしらっていましたが、ライヴストリーミングを観ながら絶対何か仕掛けがあるLookだなと思っていたので予想通りといった感じでした。今回のコレクションは、アシンメトリーや異素材ミックスによる切り替えし、エンブレムの使用といったようにマニアックな方向でヒネリが効いているものが多く、人によっては好き嫌いが分かれるかなと思います。13-14AWのクチュールコレクションに比べるとフレッシュさが復活し、だいぶ持ち直した感がありましたが、ラフの意図した通りにRaf Simons濃度は今までよりも色濃くなっていますね。

よりデザイン性が増し、新しいシルエットやフォルムとそのハーモニーを再発明することに注力されたコレクションは、Suzy Menkesがレビューの中で指摘するように彼の「感情」から生まれたものではなく、彼の「知性」から生まれたもの。Christian Diorという船が港から出航し、近海から沖合へと進み行く中で必然的に彼のクリエイションはよりスリリングに成らざるを得ない状況ですが、このままどこへ向かうのか?というのは不安と期待を抱かせつつも、とても気になるところですね。

via dior.com style.com wwd.com vogue.com runway.blogs.nytimes.com tFS

The Structure of a Fashion Consumer Society

Saint Laurentで200足限定のローラースケートが販売、というニュースが少し前に報じられていましたが、最初に思ったのはChanelのフラフープ・バッグやJil Sanderのペーパー・バッグのようなことがしたかったのかな?ということでした。奇を衒ったアイテムというのはランウェイショーでは登場しやすいと思うのですが、コレクション外のアイテムとして登場するのは少し珍しいかなと思います。

Chanelのフラフープ・バッグやJil Sanderのペーパー・バッグは、シリアスなランウェイショーの中にさり気無く配置されることによってそのコントラストとランウェイショーのストーリー性を帯びることでハロー効果を生み出し、アイテムとしてのアイデンティティを獲得することに成功していますが、Saint Laurentのローラースケートはコレクション外のアイテムなのでアイテムとしての文脈が希薄なために物語性や単一性を獲得することができていないかなと思います。また、つくり手のジャスト・アイデアによる軽いノリで製品化された単なる内輪ウケのアイテムのような気がしなくも無いのが少し痛いかなと・・。

ランウェイショーという儀式は、各アイテムに洗礼を行い、作品として新しい生命を与えることを意図した人工的なシステムであって、それはある民族における祭りや成人の儀式と同義だと言えるでしょうか。デフィレという深淵において神託される物語性を、リニアに進行し、プルバック不能な時間という概念が作品の最新性という側面から単一性を補強する。
ブティックにおいてコレクションアイテムとそれ以外のアイテムには明確にヒエラルキーが存在し、デフィレに登場したアイテムを頂点とした階層構造を成す。そしてそのヒエラルキーは基本的にそのまま着用者のヒエラルキーへとスライドされ、コレクションアイテムを購入し、着こなす者が当該ブランドの顧客であり、カスタマー・ヒエラルキーの上位にテンポラリーに配置される。

コレクションアイテムとそれ以外のアイテムにはストーリー性以外の物理的な純然たる違いは存在しないにも関わらず、カスタマーのメンタリティには購買を動機付ける明確な違いが存在しているのが面白いところですね。もちろんそれは、その時に購入しなければ再製品化される可能性がかなり低いという希少性も理由に挙げられるでしょう。ただ、いずれにせよパリやミラノといったコレクション/ブランドへの憧れや創り手へのリスペクトといったものが予め消費者側にインストールされていなければ機能しないものであることには注意が必要でしょうか。デフィレに登場したアイテムを買い求めることと、芸能人やセレブリティが着用したものを買い求めることは構造的に言えば同一であるということは今更指摘されるまでもないことですね。

ブティックにおいて新作のコレクションアイテムが最重要視されることは、モードの世界が「新しさ」を最重要項目として取り扱っていることに起因し、その「新しさ」はファッションを前進させるという(抽象的な)目的のためにこの世界に住む人々によってアファーマティブに定義された信条であり、その信条はビジネスを前進させるという目的を持ったビジネスマンとも共犯関係的にシェアされている。

安心・安全が予め保障されたコンビニエントな定番品やベーシックなアイテムに堕することなく、クリエイションを積極的に評価し、リスクを負って世界の法則を変えようと試みる創り手とその作品を尊重するということ。人に例えるなら、いつまでも好奇心旺盛で青春期を良い意味で忘れないということであり、世界の矛盾や不条理に挫けることなくその全てを受け入れて前進しようとする強さであり、初恋のトキメキや胸騒ぎを忘れないということ。ランウェイに登場するモデルの中心が10代から20代に掛けての年齢層であるということも、ある意味でこの事由に起因すると言えるでしょう。

ビジネスモデルを単純化すれば、「服を売る」というシンプルな物販ビジネスなのですが、そこに至らせるまでの仕掛けが大規模化・複雑化しているのが高度消費社会の特徴ですね。如何にして虚構の神話と共同幻想を醸成し、ファン(国民)を増やしてある種のネイションを構築できるかがキーになっている感じでしょうか。大半の顧客はブランドやアイテムの向こう側にあるイメージやシニフィエを消費している、というのは数十年前から変わっていない構造ですね。

Making of Christian Dior Haute Couture Spring/Summer 2011

Christian Dior 2011年春夏オートクチュールコレクションに登場した真紅のドレスのメイキングムービーがアップされていますね。この映像は、Royal Ontario Museumのエキシビジョン用の映像のようです。

John Gallianoの切れ味鋭いドレスはやはり良いですね。彼のレッドやブラックの使い方が好きだったな、と。方向性は違いますが、Raf Simonsのフローラルピンクの使い方もとても好きですけれどね。

Kris Van Assche, Dior Homme Omotesando...

今シーズンのKris Van Asscheの定番シャツは3万円台からの展開となっていますね。以前は5万円台での展開だったと記憶していますが、今シーズンはずいぶん価格が抑えられているな、という印象を持ちました。それもそのはずで、購入してから気付いたのですが、生産国がハンガリーになっているのですね。もちろん、前身頃下にあったKVA刺繍や第三ボタンのメタルボタンといったギミックも一切無し。シルエットは相変わらず美しいので購入して満足してはおりますが、ボタンの縫製等はちょっとよろしくない部分もあったりします。単なる個体差かもしれませんけれど。。

Kris Van Asscheのシャツに関しては、Rolled-sleeve Shirt(袖が腕まくりしてあるシャツ)等も持っていたりしますが、水洗い不可のドライクリーニング・オンリーだったりしますね。Dior hommeのアイテムもただのコットンシャツであれば(水洗い不可でも)普通に洗濯してしまいますが、そういう訳にもいかないデザインのものがあったりするので困ったものです。ドライだと水溶性の汚れが落ちにくいというのもありますし、そもそもその辺にあるクリーニング店では受け付けて貰えないため、百貨店系の白洋舎などに出さないといけないのが手間と言えば手間ですね。シャツは消耗品と言えばそうなのですが、好きなものはなるべく長く着たいというのが心情ですので。

クリスと言えば、10月に行われる表参道のDior hommeのリニューアルに合わせて来日するというお話があるようです。顧客のみのインヴィテーション・オンリーのイベントも企画されているようなので楽しみに待ちたいですね。
そして、2014年スプリングコレクションは、こちらの写真に写っているようなグラフィックがフィーチャーされたものになるようです。20世紀のアメリカの画家であるJackson Pollockの作品のような抽象的なグラフィックからインスピレーションを受けたコレクションになるようで、表参道のリニューアル記念の限定アイテムとして同様のグラフィックをあしらった財布が販売されますね。尚、スプリングコレクションの発表(プレビュー)は10月12日ですが、デリバリーは11月からになるようです。

Dior Omotesando 10th Anniversary

Robert PattinsonをフィーチャーしたRomain GavrasによるDior Homme Fragranceのフィルムが公開され、そして、表参道のブティックがリニューアルされることもパブリックに報じられるようになりましたね。9/21からは4Fでポップアップストアを開設し、10/12にグランドオープン。尚、9/6と9/13には"Friday Night Cocktail"が行われます。

ブティックのグランドオープンに際し、2014年スプリングコレクションが先行発表されるとのことですが、限定アイテムというのはスプリングコレクションのアイテムになるのでしょうかね。今後は年4回のコレクションをデリバリーする体制になるというお話は、プレコレクションに力を入れて今よりも独立させるということですね。今シーズンの2013年オータムコレクションも力を入れていましたが、ああいう感じでやっていくのかなと思います。プロモのクリエイティブ・ディレクションはM/M Parisで、フォトグラフィーはKarim Sadliでしたので。今までの流れで言えば、デフィレのあるコレクションはWilly VanderperreやKarl LagerfeldがADを撮り、それ以外をKarim SadliやBruno Staubが撮っていましたが、今後はどんな感じになるのか気になるところです。

デリバリーが増えることについては、必然的に商品鮮度が上がるので顧客がブティックに足を運ぶ回数が多くなりますね。そして、デフィレを行わないコレクションは使いやすいアイテムが多い傾向にあり、また、ファストファッションがトレンドをコピーし難いという利点もあるかなと思います。
ただ、日本の春と秋はかなり短くなってきているので、どうなんだろうか?ということと、顧客のバジェットには限りがあるということ。また、メンズの服はウィメンズとは異なり、服のバリエーションを多く展開できないので、コレクションの数を倍にしてデリバリーを増やすことにどれだけ意味があるのか?(各シーズンの違いを明確に打ち出せるのか?)というのも個人的には気になるところですね。

ちなみに、セールが無くなったのもこの「4シーズン制」導入の影響なのかな、となんとなく思っているのですが、どうなのでしょうか。