英国人夫婦の三人の子供のうちの一人としてパリで生まれた彼女は2歳になる前に英国へと戻り、ロンドン郊外のハローで育つ。不動産管理士をしていた父親はファッションに全く興味が無かったが、グラフィック・デザイナーで後年、アート・ディーラーをしていた母親はYves Saint Laurentへ彼女を連れて行ったりしていたという。
10歳の頃からスクール・レオタードをMadonnaのようにカスタマイズしてみたりしていたという彼女。数年後、両親は彼女にミシンを買い与え、そして彼女は自分自身の服をつくり始める。
Celineのクリエイティブ・ディレクションの全権限と自身の生活の自由をLVMHとの契約によって手に入れた彼女はパリにあるCelineの伝統的なデザイン・スタジオではなく、家族の住むロンドンのキャベンディッシュ・スクエアにあるジョージアン・タウンハウスでコレクションをデザインしている。パリには月に2、3日行く程度でその際はRitzにキャンプを張るという。ちなみに彼女のクリエイティブチームはYves Saint LaurentやBalenciagaといったブランドから引き抜いたスタッフとChloe時代に彼女の下で働いていたスタッフによって構成されている。
それまでブランドとしてのアイデンティティを確立できないでいたCelineは、彼女のクリエイティブ・ディレクションによって大きく変化を遂げていく。Celineの新しいブランド・アイデンティティにブティックのショッパー、ショーのインヴィテーションなどのデザインは、ニューヨークをベースに活動している英国人デザイナーのPeter Milesによるもの。彼はフォトグラファーのJuergen Tellerと20年ほど一緒に働いた経歴を持つデザイナーで、Marc JacobsのADキャンペーンやSofia Coppolaの過去3作品(Lost in Translation, Marie Antoinette, Somewhere)のタイトルシーケンスからポスターまでのデザインをも手掛けており、また、雑誌のthe journalのデザインにも関与している。彼のデザインの特徴はそのシンプルなタイポグラフィが示すように「ミニマル」である。
Peter MilesによればPhoebe Philoほど物事を細かく見る人とは今まで一緒に働いたことがなかったとのこと。彼女は顕微鏡で物事を見るようで、ロゴの位置などをミリ単位で調整する依頼を彼に何度もしてきたという。
Karl Lagerfeld Calls Newsweek 'a Sh-tty Little Paper'
例のNewsweekに掲載されたRobin Givhanによる記事についてのKarl Lagerfeldの反撃。
パークハイアットで行われたKarl Lagerfeldの記者会見でインドネシアから来ていたジャーナリストからの質問ということですが、こういうところでも日本不在なのがなんとも・・。まぁ、日本人ジャーナリストに同じような質問をして欲しかったとも思いませんけれど。
Pierre Berge Gives Hedi Slimane His Stamp of Approval for YSL
米国のDenver Art Museumで3月25日から始まるYves Saint Laurent retrospectiveについて話をしたPierre BergeがHedi Slimaneについても言及したようです。
Yves Saint Laurentのデザイナーを務めることは、「天才の仕事を再びクリエイトすることは非常に難しく、大きな問題です。それは、フォークナーを書き直そうとするようなものです。」とのこと。Hedi Slimaneについては、「Yves Saint Laurentの精神と遺産を保持することができる才能ある人物」とのことで、今回のエディのデザイナー就任はベルジェのお墨付きなのですね。以前から彼らは仲が良かったので予想通りではありますが。Hedi Slimaneのつくるドレスはあまり想像できませんが、スモーキングやサファリルックを自在に操ってコレクションを展開するのは容易に想像できますね。
WWDで今回のChanelのイベントに関する記事が出ていますが、カールによると約10年前の日本人よりも今の日本人はケーキやスウィーツによってbiggerになったとのこと。"It's the kind of beauty you get from junk food,"というのもfashionista.comが書いているようにイマイチよく分からないカールらしいコメントですね(笑)。
砂糖や肉を摂らないカールにとって日本のキッチンはパーフェクトですが、ライスが嫌いとのこと。過去に病気からリカバーするために11日間のライスのみのダイエットをしたことがトラウマになっているようです。
そして、今回の来日においてショッピングをする時間は恐らく無いと言いつつも、新しいComme des Garcons Dover Street Marketはチェックしてみたいと話していますね。
ChanelのオフィシャルサイトにKarl LagerfeldとCarine Roitfeldによる"THE LITTLE BLACK JACKET"のメイキング映像がアップされましたね。今回の本のために100人以上のセレブリティを撮影したとのこと。来週から日本で写真展が始まりますが、Sarah Jessica Parker, Georgia May Jagger, Alice Dellalといった名前が挙げられていますね。ちなみに日本からは蒼井優、菊地凛子、水原希子、玉木宏、平井堅らが撮影に参加しているようです(ここやここ、この辺を参考に)。
Grand Palaisに巨大なクリスタルをセットして行われたKarl LagerfeldによるChanel 2012-13年秋冬コレクション。
スモーキークォーツにアメジストといった水晶や深成岩などの鉱物、そして、地層などをリファレンスにしながら今回のシャネル・オデッセイは地球の自然が膨大な年月を掛けて形成した世界を旅していく。
ピラーティが話すように、今回のコレクションは最後を彩るセレブレーションでも7年間の集大成的なコレクションでもなく、クリエイションの一つの通過点としてのコレクションでしたね。ビジネス的に言えば、Yves Saint Laurentをバッグと靴によって黒字化させることに成功したこのタイミングでのデザイナーの交代劇は何を意味するのか気になるところではあります。
ウィメンズの経験が無いHedi Slimaneに賭ける理由がイマイチ明確ではありませんが、エディとしてはシグネチャ・ブランドを立ち上げるよりもラグジュアリー・コングロマリットの巨大なシステムに再度取り込まれる方を選んだのはビジネスリスクが少ないからというのもあるのかなと思います。Tom FordがAndy Warholの絵を売ってファッションに投資したように、すべて自前で揃えるには多大な投資が必要ですし、彼にはDomenico De Soleのようなビジネスパートナーもいないので。もちろん、ムッシュ・サンローランへの敬慕の念があっただろうことは言うまでもありませんが。
また、LVMHではなく、PPRというのはBernard Arnaultへの当て付け?という見方も面白いですね。少し考え過ぎのような気もしますけれど・・笑。
話をピラーティに戻しますが、彼がフィナーレで受けたスタンディング・オベーションは正当なものだったかなと思います。新しいストーリーを創造するという部分がもっとあっても良かったかなと感じますが、高水準のアベレージを維持する安定した実力は彼の特筆すべき能力ですね。"I love fashion, I probably will love it forever,"ということなので今後もきっとどこかで彼の服を見ることができるかなと思いますが、動向は気になるところです。
川久保玲によるComme des Garcons 2012-13年秋冬コレクション。
音の無い静寂の世界で行われたランウェイショーは、真空パックのようにフラット化し、エンボス加工されたモデルが描くAラインシルエットによって展開。彼女の言葉少ない説明によれば、今回のコレクションは"The future's in two dimensions"とのこと。
今回のディメンションに関するコレクションを見ていてぼんやりと考えたことは個人的にいくつかありますが、一つは何故かプロダクトデザインについてでしたね。
また、今回のデザインに関して言えばフォルムが単純で空間がたくさんある場合、普通のつくり手はその空間に不安を感じて無駄に情報量を上げて誤魔化すものですが、そうしないのがまた彼女の面白いところだなと思います。未完成感や子供のラクガキのような穢れのないピュアなグラフィックを上手くコントロールできているのは流石といったところ。
多くのファッション・インサイダーがComme des Garconsのショーに招待されてその神託を得たいと思う気持ちがよくわかる、今回もそんなインスピレーショナルなコレクションだったかなと思います。
ショーは、Joey AriasとPaper MagazineのKim Hastreiterらと共にAlber Elbazが"Que Sera Sera"を歌うパフォーマンスでフィナーレを迎えていましたが、エルバスによれば今回のコレクションは"It's been a special 10 years. But tonight is about the past and also the future. Looking at romance in a new way,"とのこと。
Yves Saint Laurentで辛酸を舐めた後、この10年間で彼はLanvinのエスプリの効いた女性像を定めることに完全に成功しましたね。"Que Sera Sera"は彼の人生に準えての選曲といったところでしょうか。未来のことは確かに誰にもわかりませんが、背中にファスナーの付いた曲線美のドレスがこの先も美しくあることは何となく分かる気がするコレクションだったかなと思います。
Rick Owensが見せる柔らかさやフェミニティへの頷きは、無骨な人が時折見せる優しさや笑顔に似ているかなと思います。少し不器用かもしれませんが、そこには純粋さがあるという。彼のそういうセンシティブな一面が厳かな強さを持った女性を描く瞬間が個人的にとても好きで、彼の作品に惹き付けられる理由はそういうところにあるのかなと思いますね。
ジャケットのカッティングにおけるカーブや直線、開きに集中するために色やプリントなどの装飾性を完全に排除。ブラックと"the color of night"とアンが呼んだミッドナイト・ブルーのカラーパレットを用い、スカーフのようにラペルと襟が一体化したアシンメトリーなファンネルネック・ジャケットの複雑な鋭さとレザーパンツによって冷たくクールな女性像をランウェイに描く。羽の髪飾りと刃のように尖ったヘアスタイル、ロングレザーグローブにニーハイブーツはディティールを明確にし、シンプルでエレガントなドレスはコレクションに緩急をつけつつ、影のある女性像のフェミニンサイドを適切に表現する。