This is Not here - *//LIKE TEARS IN RAIN

Christian Dior 2014 Cruise Collection

モナコのモンテカルロで行われたRaf SimonsによるChristian Dior 2014年クルーズコレクション。
シーサイドに特設会場を設営してショーは行われたようですが、天気はあいにくの雨だったようですね。

Raf Simonsによると今回のコレクションは、「私は二つのメインテーマに集中したのですが、それはレースとエネルギーの概念です。」「これは私にとって本当に大きな挑戦でした。というのも私はレースを扱った経験がなかったからです。私はこの織物に固定したイメージから変えたいと思っていました。ロマンティックだとかクラシックだとかアンティークだとかではなく、軽やかで喜びに溢れて現代的なもの、エネルギー溢れるイメージを目指したのです。」とのこと。確かにシースルーのレースは多くのLookで用いられていたので、素材として目を惹く要素でしたね。

ラフらしいグラフィカルなカラーパレットにリゾートらしいリラックス感をスポーティーさによって表現し、Christian Diorのハウスコードを自身のネイティブコードに巧みに組み替えながらランウェイは進行する。
フラワーやストライプのベクター・グラフィックス、ドレスから透けて覗くシャイニーなランジェリー、最軽量化されるBarジャケット、膝まで垂れるロング・スカーフ、アシンメトリーのトラウザーやスカート、膝上丈のクリーンホワイトのコートドレス。コンパクトなクロップド・トップスにはワイドパンツが組みにされ、プレーンで控え目なスイムウェアも登場。多用されるジッパーがカジュアル感とスポーティーさを醸し出し、流動性を帯びるプリーツ・ドレスは爽やかな風をランウェイに運んでいましたね。

サイバーなミラー・サングラスやカラフルなハイヒールもRaf Simonsらしい選択で各Lookによく調和していたかなと思います。ヒールの多色使いは、彼のシグネチャでのadidasとのコラボを想起させますね。

Pat McGrathによるメイクアップは、"It's a mouth in full bloom,"という説明が彼女からあったようにフクシア・ピンクのリップが印象的。Guido Palauによるヘアスタイルは、過度に何かの影響を受けてオーバー・リファレンスにならないように単純なセンター分けのポニーテールを採用し、"sophisticated simplicity"を目指したようです。ただ、Raf Simonsからは1997年の映画「Gattaca」への言及があったようで、少し未来的な何かをヘアスタイルにラフは欲しかったようですね。ミラー・サングラス等を見れば分かりますが、きっとその未来的な何かとは、スポーティーさに通じるような要素のことを指していると推測できます。ちなみに、「Gattaca」への言及とフューチャリスティックな要素とスポーティーな要素の組み合わせと言えば、Kris Van AsscheによるDior hommeの2013-14年秋冬コレクションに通じるものですね。

これまでの過去シーズンからの各要素をクルーズ・コレクションらしくプレイフルにまとめて、Raf Simonsのエレメントを多く注入した感じのコレクションでしたが、描かれる女性像にブレは全く無かったかなと思います。58のLookが提示されましたが、基本的にそれらは彼が信じるある一つの確固たる女性像によって貫かれていましたね。

2006年以降、ニューヨークや上海でランウェイショーを散発的に開催してきたChristian Diorのクルーズ・コレクション。今回はモナコということでChristian DiorとPrincess Graceのヒストリカルな関係性と重ねられるように、Raf SimonsとPrincess Charleneの友好関係が各所のレビューで言及されていましたね。

DiorのCEOであるSidney Toledanoによれば、今後は定期的に海外でコレクションを開催する計画があるとのこと。"For us, this is an extremely important collection - as important as the October ready-to-wear collection. For the designer, showing on a catwalk is absolutely important,"という彼の話はその通りと言えるでしょう。ただ、少し邪推をするとプレコレクションを毎回海外で開催しているChanelを意識しての決定のような気もしますが・・笑。
いずれにしても楽しみが一つ増えるので、定期的に海外でコレクションを行うという計画に反対する人はいないでしょう。開催場所によってクリエイションにも影響は当然出るでしょうから、ね。

via style.com vogue.com tFS

Dior homme 2013 Pre-Fall Collection

一つ前のエントリーでKarim Sadliの写真をポストしましたが、Dior hommeのプレフォール・コレクションがブティックでも立ち上がっていますね。今回は素材としてデニムやシャンブレーをフィーチャーした内容になっており、とても見応えのあるコレクションに仕上がっています。

裏地にシャンブレーを用い、袖を折り返して着るジャケット(着丈は13SSのLook 1と同じく短め。)やベージュのコットンパンツで裾をロールアップさせて穿くスタイリングを提案しているもの。ノースリーブのデニムブルゾンやバイカー・デニムジャケット。ピーコートの襟の後ろにシャンブレーを用いたもの(襟を立てると良い感じ)。

シャンブレーシャツには前身頃にプリーツをあしらったものとプレーンな胸ポケット付きの2型があり、プリーツ型のものは10万円を超えるお値段ですがエレガントでモード感があって良い感じでした。プレーンな胸ポケット付きの方は、シャツの裾がスクエアボトムになっており、カジュアル感があります。Diorで胸ポケットがあるシャツも珍しいですね。同じく胸ポケット付きのシャツはホワイト+ブルー・ステッチとブラック+ブルー・ステッチのシャツもあります。こちらのシャツも裾はスクエアボトムになっていましたね。
デニムパンツもいくつかの型が入っており、定番のノンウォッシュ・デニム(19cm)を赤ステッチにしたものが使いやすそうな感じでした。スニーカーにもシャンブレーをあしらったもの等がありましたね。

いくつかのアイテムはKris Van Assche x Leeっぽさがあるものもありましたが、トータルではDior hommeのクオリティに仕上がっていたと思います。プレコレクションは本コレクションの間の繋ぎ的な意味合いが強いコレクションですが、ここ最近のDior hommeはアイテム数も多く、SSやAWの本コレクションと同じように力を入れて展開されていますね。一般的に言えば、プレコレクションは本コレクションよりも使いやすいアイテムが多い傾向にあるかなと思います。

本コレクションはランウェイショーで半年前に披露されるので事前にどういった内容のコレクションなのかが分かりますが、プレコレクションは基本的にデリバリーがあるまであまり詳細が分からないので、ブティックでの第一印象は結構インパクトがありますね。気分は既に秋冬コレクションだったのですが、気が付いたら買い物をしてしまっていたので(笑)。

近々、秋冬コレクションのプレビューもありますが、季節はどんどん過ぎていきますね。

Interview Magazine May 2013: Yohji Yamamoto by Wim Wenders

Interview MagazineのサイトにWim Wendersによる山本耀司のインタビューがアップされていますね。
Y-3に関する話題の件が個人的に面白かったので少し書いておきますが、adidasとのコラボレーション・プロジェクトであるY-3の端緒となったのは彼が2000-01年秋冬コレクションのためにadidasの「スリー・ストライプス」をあしらったトレーナーをadidasから借りようとしたことにあったようですね。なぜスリー・ストライプスに彼が興味を持っていたのかと言えば、日本においてadidasのスリー・ストライプスは街の至る所で見掛けるものであり、若者たちは寝る時さえもそれを脱がなかったからとのこと。そして、彼がadidasに電話をしたところ、彼の予想(彼はadidas側が拒否をするだろうと思っていた。)とは裏腹にadidas側がYesと回答したことが事の始まりだったようです。

Y-3の"Y"はYohji Yamamotoを、"3"はadidasのスリー・ストライプスを意味し、間にある"-"は両者の結びつきを表現している訳ですが、上記の話によればY-3はエピソードがそのままブランド名になったような感じなのですね。
そして、スポーツ(ウェア)の世界とそのテクノロジーは、実用性と機能性を追求し、無駄をそぎ落としていくが、いわゆるファッションの世界はそれとは正反対のものである、と2つの世界の違いを彼は的確に説明していますね。

また、彼の長年のキャリアに関する質問のところで、"I feel like I'm doing the same thing every year."と答えているのが興味深いところ。自分の型ができてしまった後は、それの焼き直しやバリエーションでつくり続けることになるのは多くの創り手に言えることですが、それを自覚し、インタビューで素直に話せるというのは結構すごいなと思いましたね。

Saint Laurent: Freja Beha Erichsen by Hedi Slimane

Freja Beha Erichsenをキャンペーンで見ても新鮮さを何も感じなかった自分に少し戸惑いを感じてしまいましたが・・、つまりそれはファッション業界は時間の流れがとても早いということなのでしょうね。メディアへの露出が減るとあっという間に他のモデルに取って代わられるのは、次から次へと次世代のモデルが出てくるということにも理由があるでしょう。久しぶりにキャンペーンやエディトリアルで見掛けても、そんなに時間は経っていないはずなのに、ずいぶん時間が過ぎてしまったような感覚にとらわれてしまうのが不思議だなと思います。

モデルの世代交代が早い理由は、やはりコレクション・サイクルの速度と不可分ではありませんね。ランウェイショーで産声を上げた服たちは、キャンペーンやエディトリアルを通して成長し、ブティックに並ぶ頃にちょうど成熟を迎える。生まれた瞬間から死に近づいていく人間のように、モードの世界のファッションは時間の経過と共に時代遅れという名の死に向かって刻々と近づいていく運命にあるとも言えるでしょうか。そういう意味では、ランウェイショーはデザイナーがファッションに生命の息吹を吹き込むための大切な儀式とも言えますね。
逆に、ペシミスティックにモードの世界を概括すれば、それは絶えず寄せては返す反復的で単調な波のように、終わりの無いラットレースのストリームでしかないとも言えるでしょう。

最後に、Hedi Slimaneのフォトグラフィーは、他の写真家の作品と比較すると圧倒的に時間の概念が希薄であるという特長がありますね。ストロボスコープを当てた回転体のように完全に被写体が静止している写真は、シャッタースピードを上げた写真のような動きの無い無機質で硬質な写真になっています。なので、彼の写真からは高速度撮影(ハイスピード撮影)された写真と同じような香りが仄かにするのですよね。そういった手法を上手く自分のものにして、静寂と孤独を彼らしく表現していると思いますけれど。
ただ、そういったフォトグラフィーをブランドのキャンペーンに連用していくと、どの写真がどのシーズンのモノなのかが一目では分からなくなってしまうという問題点があるのですけれどね。

時間の流れが早いこの業界の中で時間の概念を希薄化し、圧縮することをエディは結果的に行っているんだな、と今回のFrejaの写真を見ながらなんとなく思ったので書いてみましたが、そういう見方をすれば彼の写真も少し違った受け取り方ができるかもしれませんね。

Chanel 2014 Cruise Collection

シンガポールのDempsey HillにあるLoewen Clusterで行われたKarl LagerfeldによるChanel 2014年クルーズコレクション。
前日にはRaffles Hotelで、"Once Upon a Time..."の上映会が行われていましたね。

ランウェイショーは、ショートフィルムの中でKeira Knightleyが着用していたCoco Chanel自身が着ていたもののレプリカとなるクリーム・カラーのジャージー素材によるエアリーでルーズなチュニックとトラウザーのLookからスタート。大きく開いた胸元にパールのネックレスが重ね付けされていたのは、シャネルらしいスタイリングでしたね。今回のコレクションでは、チョーカー等のネックレスがスタイリングとして効果的に使われていた印象です。

ネクタイにオーバーサイズのVネック・プルオーバーニットを合わせたスクールボーイのクリケットスタイルはシンガポールのイギリス植民地時代の残響として表現され、Joan SmallsやCara Delevingneの肩出しルックは東南アジアの特産品である「バティック」のようなジャカード・カシミアニットによって構成される。
スタンダードなシャネル・スイムウェアに、アジアの気候に合わせてローカライズされたショートスリーブのシャネル・ツイードジャケット。スパンコール刺繍によるシークインの光沢が眩いVネックニットに、水着ライクなワンピースにはカジュアルにレースアップ・スニーカーを合わせて。ボトムスには、ラップスカートを重ねてフロント部分を開けたスカート(脚を露にするというアイデアは、13-14AWでもあったものですね。)やリゾート感のある踝丈のワイドパンツが組みにされる。

ショーの後半には、トロピカル・アクセントとしてラフィア織りの黒い光沢のあるセットアップ・スーツ(サングラスの反射も服にあわせられていましたね。)に、東南アジアの伝統的な衣装である「ケバヤ」を思わせるモノクローム・フラワーをあしらったナローラペルのショールカラー・スモーキングジャケットやドレスが登場。Chanel No.5のボトルをモチーフにしたバッグは遊び心があって面白かったですね。モノクロのフェザードレスは、ブラックのパターンの入れ方をもう少し工夫してもっと繊細さが欲しかった感じでしょうか。

Karl Lagerfeldが説明するように今回のコレクションはある特定のテーマに基づいたものではなく、Chanelというブランドのアイデンティティを核とし、そこに東南アジアの漠然としたインスピレーションを混成して展開されたものとなっていましたね。カールが1880年代のシンガポールの漁師の写真を指して、彼はシャネル・ジャケットを着ている、と冗談を言っていたようですけれど(笑)。

東南アジアの高温多湿な気候に対してChanelがどのようなアプローチをとるのか、というのを個人的にはもう少し見てみたかったかなとも思います。もう少しエキゾチックな感じでも良かったかなと。ただ、シンガポールに住むChanelを買うような富裕層が好むのは(日本人がそうであるように)今回のようなオーソドックスなヨーロピアン型のコレクションだと思いますが。

プレコレクションらしいウェアラブルで使いやすいアイテムは多くの女性が望むものであり、一見すればビジネスとして正解に見えるでしょう。もちろん、それはChanelというブランドがグローバルに世界を覆い尽くす前の戦略として見た場合の正しさであることは忘れてはいけませんけれど、ね。

via style.com wwd.com vogue.com tFS

via annecombaz.com

"Once Upon A Time..." - A FILM BY KARL LAGERFELD

Karl Lagerfeldによるショートフィルム"Once Upon A Time..."が公開されていますが、いつものようにモデルの知識がある人は一層楽しめるつくりになっていますね。主演のKeira Knightleyよりもそっちに目がいってしまい、思わず笑ってしまいます。
シンガポールでのクルーズコレクションもどんな感じになるのか気になるところですね。

Nicolas Ghesquiere to Appear on 032c Cover

System Magazineに続いて032cでのNicolas Ghesquiereの特集記事がWWDで報じられていますが、既存のファッション業界のシステムに疑問を呈するような話が出ていますね。メガブランドから特別待遇を受けてデザイナーをするのとは別に既存のルールに縛られないような方向で新しいことをしたいという気持ちもあるようです。ただし、彼自身も話していますが、それはとてもリスクが高い選択だと思いますね。

既に水面下で何かは動いているようなので、それらが発表されるまでは静観といった感じでしょうか。LVMHの潤沢な資本でシグネチャをやるにしても、インディペンデントで自由に小さくやるにしても、あるいはどこかのブランドでデザイナーをやるにしても彼が納得できる選択が一番重要かなと思います。そして、そこで彼が存分に力を発揮でき、多くのファンが笑顔になれることを望みますね。

Dior homme in Beijing

北京で行われたDior homme 13-14AWのランウェイショーのバックステージ・フォトグラフィーがアップされていたのでご紹介。
Dior Magにもイベントのムービー等がアップされていますね。

Dior関連ということでついでに書いておきますが、六本木ヒルズの森美術館で現在行われているLOVE展には協賛としてChristian Diorが参画しており、来週は顧客だけの貸切イベントが行われますね。ギャラリストの経歴を持つムッシュ ディオールにちなんで、といった感じでしょうか。