This is Not here - *//LIKE TEARS IN RAIN

Hunger Magazine by Rankin

BoFforbes.comの記事を紹介していましたが、RankinによるHunger Magazineが11月17日にロンチされますね。
Rankinと言えば、Dazed & Confusedの20周年をセレブレートするMaking It Up As We Go Alongも最近話題になっていましたけれど。

Style.comのマガジンやCarine Roitfeldが2012年に雑誌をつくるといったこと等、デジタル化の波の中でも新しい雑誌は生まれてくるものですね。この時代に生まれた雑誌が長生きできるかどうかは不明ですが、いずれにしても言語は英語で誌面のクオリティの高いものしかやっていけないだろうなとは思います。

Chanel 12SS AD Campaign... Cathy Horyn and Sarah Burton... Donatella Versace... Pitti Immagine Uomo 81...

Carine Roitfeld Styles Chanel's Forthcoming Campaign
Carine RoitfeldはChanelの12SS AD Campaignでもスタイリストとして関わっているようですね。
キャンペーンのフォトグラファーはいつものようにKarl Lagerfeldで、撮影場所は今年の5月に2012 Cruise Collectionを行ったフランスのアンティーブにあるHotel du Cap-Eden-Roc。モデルにはSaskia de BrauwとJoan Smallsをキャストし、カールによると今回の写真は"all about athletics and the sea.... It's very modern sportif and in black-and-white,"とのこと。
FendiのAD CampaignのためにArizona Museをローマで撮影すると書かれていますが、こちらも気になるところです。

Watch: Cathy Horyn Reminds Fashion Writers to be Reporters First, Says "It's Not About [Getting Invited to Shows]"
Nowness.comにアップされたCathy HorynとSarah Burtonのムービーについて。ファッション・ジャーナリストがショーに招待されることを目的にしたり、デザイナーがデザイナーであることを目的にしていては話にならないというのは同意ですね。ジャーナリストやデザイナーに限った話ではないですけれど。

Exclusive: Donatella Versace Walks Us Through Her Versace for H&M Collection
Versace for H&Mについて語るドナテラのムービー。fashionologie.comではCMに関するムービーが紹介されていましたが、CMにはLindsey WixsonとDaphne Groeneveldが出演しているようですね。リンジーはハムスター・ホイールの中を走ってますけれど・・笑。

Valentino To Show Menswear At Pitti Uomo
イタリアのフィレンツェで来年の1月10日から13日まで行われる予定のPitti Immagine Uomo 81。
今回はValentinoが12-13AWのメンズコレクションのショーを11日に行うようです。

Karl Lagerfeld Signature Collection... Louis Vuitton First Fragrance...

Karl Lagerfeld to Launch Two Signature Collections, Cut Back on Collaborations
Karl Lagerfeldの新しく開始される二つのシグネチャ・コレクションの話が報じられていますね。
カールのシグネチャはTommy Hilfigerが所有していましたが、現在はプライベートエクイティ・ファームのApax Partners(以前はTommy Hilfigerを所有していたが現在は売却し、昨年、Karl Lagerfeldを所有。)のコントロール下にあるようです。

まず一つ目は、10代後半から20代前半の女性をターゲットにしたロックンロール・フレーバーの"Karl"と呼ばれるマスティージ・ライン。デニムやレザー、フィンガーレス・グローブにLBDといった100ピースによって構成され、価格帯は60から300ユーロとのこと。2012年の1月25日にNet-A-Porter.comが独占的にプレロンチし、2月28日にはkarllagerfeld.comのECサイトでもロンチするようですね。ちなみにこのラインにはメンズウェアも2012年の秋に加わるようです。

そして、二つ目がハイエンドラインとなる"Karl Lagerfeld Paris"。プライスタグは300から2500ユーロ。こちらは1月25日にお披露目されるようですが、実際に利用可能になるのは2013年になるとのこと(来年後半にパリに最初のエクスペリエンス・ストアをオープン予定)。イタリアのIttierre SpAのライセンスによるディストリビューションでの展開となるようですね。

二つのラインはKarl Lagerfeldのブティックの他に、主要都市にポップアップ・ストアをオープンさせて取り扱う予定があるとのこと。マスティージ・ラインはデジタルメディアと親和性が高い若者向けということで、あくまでもウェブ・ベースという考えがあるようです。


Louis Vuitton Is Getting Into The Fragrance Game With A Fancy Perfumer
Louis Vuittonが初のフレグランスをデビューさせるというお話。パフューマーはJacques Cavallier-Belletrudとのこと。
「Louis Vuittonは最近、フランスで(フレグランスに使われる)ほとんど絶滅した花について調査をしていた。」という話があるようで、天然素材を使うスペシャリストと言われるJacques Cavallier-Belletrudがどのような香りをつくるのか?といったところでしょうか。

2013 Spring/Summer Fashion Week Conflict...

少し前から話題になっている来年9月に行われる予定の2013年春夏コレクションのスケジュール問題について。
ミラノ側が折れて収束するかと思っていたのですが、今のところそういう感じにはなっていないですね。

ニューヨーク・ファッションウィークは2月と9月の第2木曜日にスタートするのがここ数年の慣例となっており、来年の9月は13日から20日までの予定、そして、ロンドンは9月21日から25日までの予定になっているとのこと。しかし、今回、ミラノが9月19日から25日までというスケジュールを出して来たのでコンフリクトが起きてしまっているというのが現在の状況ですね。事の発端には2012年の9月3日がアメリカでは労働者の日であることがあり、また、ロンドンでは来年、オリンピックとパラリンピックがあることもこの問題に絡んでいるようですけれど。

ファッションウィークのスケジュールに関する協定は2008年に結んでいたのですが、CNMI PresidentのMario Boselliの主張によるとそれは3年間のみ有効だったとのこと。CFDA PresidentのDiane von FurstenbergやBFCのHarold Tillmanはそれを否定し、Conde Nast InternationalのChairmanであるJonathan Newhouseも(ミラノがリスケしなければ)ヴォーグのエディターをミラノコレクションには出席させないというメッセージを出すもミラノ側は譲歩する意思は無いようですね。

問題点は"second Thursday rule"の定義自体が曖昧であることと、その協定の有効期間にある感じでしょうか。
いずれにしても認識違いがあったということですが、最終的にこの問題がどうなるのかというは気になるところです。

FASHION'S NIGHT OUT 2011... Vogue Archive... Conde Nast Entertainment... Gary Card...

All the International Vogue Editors Will Hang Out Together for the Very First Time Next Month
11月5日に行われる予定の日本のFASHION'S NIGHT OUT 2011について。日本で4人が一堂に会するというのは後にも先にも無いような気がするのですが、guardian.co.uktelegraph.co.ukでは4人のみならず、Vogueが出版されている18ヶ国のエディターが集結するのでは?といった論調で報じられていますね。Vogue.co.jpではそこまで書かれていませんが、そのうち情報が出たりするのでしょうか。いずれにせよ、今の日本にわざわざ来日してくれるのは嬉しい限りですね。

Hamish Bowles on Vogue's New Website, Fantasy Retirement, and Going Tieless
少し前に噂が流れていたVogue Archiveの話は事実だったようですね。他の国のVogueも続くと良いのですけれど。
具体的にどのような形になるのか気になるところです。

Conde Nast Names First President of Entertainment
コンデナストのエンターテイメント・ディヴィジョン設立の話。
fashionologie.comでも書かれていましたが、広告モデルの依存度を減らすのが目的という理解で良いのでしょうか。

Gary Card on his headpieces for Comme des Garcons S/S12
先日のComme des Garcons 12SS CollectionのヘッドピースはGary Cardが関わっていたようですね。

Chistian Dior New website Coming Soon...

写真はVogue.comから。Louis Vuittonのラストルックを飾ったKate Moss。
いつものようにWallpaper.comVmagazine.comにもバックステージフォトがアップされているので、好きな方はこちらも是非。

2012年春夏シーズンのコレクション・レビューは一区切り付いたので通常更新に戻りたいと思いますが、WWDでDiorがWeb siteを水曜日にリニューアルすると報じられていますね。現状のサイトは一旦クローズした状態になっていますが、リニューアル後は1つのアドレスでファッション(ジュエリーを含む)とビューティーをまとめて閲覧できるサイトになるようです。コンテンツとしては、高解像度のイメージと他にはアトリエワークのビデオなども観ることができるようですね。

デザインはダークグレイのフレームで統一されるようですが、その中でも各セクションによって微妙にトーンに変化が付いているとのこと。例えばDior Hommeのセクションでは、より直線的でミニマリスティックな感じになっているようです。

今年後半にはデジタル・マガジンも計画しているようで、こちらもどんな感じになるのか気になるところですね。

Chanel 12SS Collection

Karl LagerfeldによるChanel 12SS Collectionは、Grand Palaisにフルホワイトの海底を出現させての開催。
Richard Wagnerの"Ride of the Valkyries"のMixと、Florence Welchのライヴによる"What The Water Gave Me"をサウンドトラックにセットして表現されたコレクションは、アクアティック・テーマによるもの。

今回のコレクションのテーマについてKarl Lagerfeldの説明によれば、「(表現において)特にマーメイドを避けました。第一の理由として、人魚は(現実に)存在しないから。インスピレーションは、もっと水中の植物や海草、魚といったものです。」とのこと。直接的で安易なマーメイドを表現として避けるというのが彼らしい選択ですね。そしてそれは、"Chanel makes clothes for daily life,"という発言もあったように、あくまでもChanelは地に足の着いたリアリティのある服を志向するということでもあります。

Coco ChanelのDNAであるパールをボタンやウエストチェーン、モデルの髪や背中にモチーフとして配置。真珠の虹色の光彩や海底に射す微光とその透明度といった光と水のアンサンブルをコレクションを構成する要素の一つとしていましたね。そして、構成要素のもう一つの重要な概念は、ファブリックの軽さの追求にあります。今回のコレクションのアイテムにはポリエステルを僅かにミックスしたり、ナイロンにグラスファイバーを加えたりと、無重力状態を目指すかのような服の軽さが追求されているようです。

ロングドレスは3Lookだけというコンパクトなコレクションは、シンプルなスカートスーツからスタートし、スクウェアなラインが描かれたミニドレスやプレーンなニットなどが登場。リラックス感のあるドロップショルダーのツィードジャケットにエメラルドとブルーのリフレクションが美しいノースリーブドレス、珊瑚を想起させる薄いピンクに貝殻や漂う海草をモチーフにしたドレス、スイムウェアにはトランスパレントなPVCジャケットを組み合わせ、魚のヒレのように薄く層をなしたオーガンザにミルフィーユドレス、後半のオーストリッチ・フェザーのドレスなどはドロップウエストになっているのが特徴的でしたね。
クラッチバックにも真珠や珊瑚、子安貝をモチーフにしていましたが、ジオメトリックな多角形を描くものやプレゼントボックスのようにラップされていたものもありました。靴に関してはフラットなメタリックシルバーのブーティーがメインに使われていましたが、レースアップサンダルの方が春夏っぽい雰囲気で良かったかなと思います。

Peter Philipsによる明るいアイシャドーと光を帯びたリップを特徴とするメイクアップはネオマーメイドとして女性を描いたもの。Sam McKnightによるウェッティーな質感のシニョン・ヘアスタイルは、海から上がったばかりの女性が指を彼女の髪に通すというアイデアを表現したもので、どちらも今回のあっさり目の服との相性は良かったですね。
モデルのキャスティングについては、今回もTaoが起用されていたのが気になったところでしょうか。

テーマがテーマだけに全体的に薄口な印象のコレクションではありましたが、こういうChanelも無くは無いかなと思います。Karl Lagerfeldはシャープさを伴ったクリエイションの方が得意なことは明白ですが、こうして新しいことを彼なりに探求し続ける姿勢は流石ですね。Chanelのデザイナーに就任してから30年近くが経過し、Chanelという枠組みの中で新しいことをすることは疾うの昔に難しくなっているはずですが、それでもなお、フロントラインで服をデザインし続けていることに改めて驚かされるかなと思います。
80以上のLookが提示された今回のコレクションを見ていると、彼にとって服をデザインするという行為は限りなく生理的欲求と近い場所に存在しているような気がしますね。

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Yves Saint Laurent 12SS Collection

伝統の強さとサンローランの教義はドラムビートのような正確性と衰えることの無いモダニティによって現代へと急速に進められる。歴史に名高いエレガンスとクチュール・スピリッツの痕跡は、レースが合成ジャカードへと翻訳され、ボリュームがマラケッシュ・シルクによって表現されるコレクションにおいてスポーツウェアのエネルギーと結合する。ピラーティのコンストラクションとフォルムへの献身は、Aラインコートやゴデットスカート、シンチバックのVネックブラウスといった幾何学と規律によって促進される。

今回のランウェイショーのステートメントからもわかるように、パリ第16区にあるHotel Salomon de Rothschildで行われたStefano PilatiによるYves Saint Laurent 12SS Collectionはブランドのヘリテージへの言及とその賛歌。通常、ピラーティのコレクションはYSLのクラシック・コードへの忠誠として行われますが、今回もそのような形での表現ですね。

シックなカラーパレットはローデンやナイルグリーン、セピアグレーから始まり、ブルーサテンにチェリーといった光沢のある豊かな色へと移行し、中盤からは後半はブライトホワイトにバブルガムピンク、ブラックにゴールドを加えての展開。
スカーフをモチーフにした背中が大きく開いたストラップレス・ドレスを中心に、Aラインを描くクラシカルなコートや膝上丈のゴデットスカート、テーラリングはダブルのクロップドジャケットにサンローランらしいスリムなパンツ、トラディショナルなジャンプスーツにボリュームのあるドレスは仄かにボヘミアンな香りを含む。素材としては、ステートメントにも書かれていたように合成ジャカードや(サンローランと馴染み深い)マラケッシュと呼ばれるシルクをキーにしていたようですね。

そして、コレクションの中で注目を集めていたのは何と言っても靴でしょうか。ゴールドのプレートは靴がサングラスを掛けているようだ、とtFSで書かれていたのが面白かったのですが、正にそのような趣き。Guido Palauがヘアスタイリングに使用した、同じくゴールドのメタル・ヘアオーナメントはこれと対にされていた感じですね。その他、ウエストを飾るジュエリーやアウターのジッパーなど、ゴールドの使い方はモダンでYSLらしさに溢れていたかなと思います。

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Givenchy 12SS Collection

サーファー、マーメイド、シャークといった海からのインスピレーションにテーラリングを組み合わせて提示されたRiccardo TisciによるGivenchy 12SS Collection。

ランウェイショーはティッシがキューバ、コスタリカ、プエルトリコ、ブラジルを旅行した際に見たという美しい夕暮れ時の淡いパステル調のピンクからスタート。その後はホワイトにブラックとスパンコールのシルバー、そして、海藻のようなグリーンを加えての進行。
位置の低いピークドラペルのマスキュリンなテーラリングにカスケードダウンのようなシフォンブラウス、波打つペプラム付きのトラウザースーツにイールスキンによって光沢を加えたブラックのタキシード・スーツ、人魚の鱗のようなスパンコールは夕暮れ時の海の煌きを表現し、多くのLookで見られたレギンスライクなパンツはウェットスーツをリファレンスとしているようでしたね。鮫の歯を模したシルバー・ペンダントはプレーンな比翼シャツと相性が良かったかなと思います。
モデルのキャスティングに関しては、Natalia Vodianovaで始まり、Gisele Bundchenで終わったのも目を惹いた要素でしたね。

ロットワイヤーなどによる(ある意味単純な)プリンティング・コレクションから一転して甘さのある方向性への転換は軽さを感じさせるものの、良い選択と言えるかなと思います。個人的にGivenchyにはもっと緊張感のあるコレクションを期待してしまいますが、Riccardo Tisciのロマンチックサイドに関するクリエイションはクチュールとより関連付けて行われると面白くなりそうな気がしますね。

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Comme des Garcons 12SS Collection

"White drama"と題された川久保玲によるComme des Garcons 12SS Collection。
コレクションのタイトルについて川久保自身の説明によれば、"All of life's drama in a white dress,"とのこと。Adrian Joffeが更に、"Everything that makes you happy and sad in life."と説明していますが、これはつまりTim Blanksが書いているように、birth, marriage, death, transcendenceについてということですね。

フルホワイトのコレクションは、60年代のオートクチュールからの影響を感じさせながらの展開。膝下まであるロングスリーブに花の装飾、フラジャイルなレースにクロッシェ、クリノリンにストリートアートからのタギングを加え、サテンのドレスは立体的なフォルムを描く。
出生、婚姻、死といった宗教的に意味付けされた人生の式典の詩的で美的な感受性を彼女らしくひねりを加えて表現されるコレクションは、なぜ人は宗教性のある儀式的なものに美しさを感じるのか?という問いを思い起こさせますね。

精神世界を描くことを通常とするComme des Garconsの目的とするところは、奇妙な美しさに出会うことにあると言えるでしょうか。ランウェイショーは腕を結ばれたLookから始まり、そして同様のLookで終わる。記号性と意味の間にある美しさに関する調査は彼女らしいコレクションですね。

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Junya Watanabe 12SS Collection

渡辺淳弥による2012年春夏コレクション。それを一言で表すとするならばそれは、ある初夏の爽やかな風の吹く日に少女が旅して出会った美しい花の咲く大地と不思議な鳥の住む世界。

ブラックのアンダーガーメントの上に着たシースルーのシンプルなドレスには、ギピュールレースやフラワー、孔雀の羽などのモチーフを。昨シーズン、クチュールへの言及を見せたブランドのシグネチャとなるバイカージャケットはボレロのようにクロップドされ、ラッフルによって甘い雰囲気が与えられていましたね。ショーの後半に登場したトレンチコートは同じくクロップドされているLookもありましたが、Cathy Horynによるとトレンチコートは驚くほど軽く柔らかにつくられているとのこと。加茂克也による雄鳥の羽などを用いたヘッドドレスは上手くLookの中に溶け込んでいて、適度な主張と一体感が素晴らしいの一言ですね。

薄明かりで行われたランウェイショーは3.11以降の日本と関連付けてレビューされたりしていますが、実際のところはどうなのでしょうね。政治性を帯びたコレクションでは無かったと思いますが、夜景の消えた東京という感覚はあったのかもしれません。

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Yohji Yamamoto 12SS Collection

フランス文化省からLegion d'Honneurを授与された山本耀司によるYohji Yamamoto 12SS Collection。
カラーパレットはYohjiらしく白と黒を中心に用い、今回はモデルのルージュにも引いた差し色としての藤色が目を惹きましたね。紺から青、そして、紫まで広がりがありましたが、この色の使い方が見ていてとても気持ちの良いコレクションだったと思います。

誇張された螺旋を描くビッグサイズのハットに引き摺るほど長いトレイン。前身頃がカットされ、ラペルと袖のみになった燕尾ジャケットにプリーツシャツ。ピーカブー・スリーブのようにショルダー部分がカットされたシャツは、シンプルながらもそこに変化を与えていて良い空気感を出していましたね。ダーンドルやアンダーなどのスカートはギャザーやプリーツをフェミニティとして機能させていたのが印象的。マニッシュな雰囲気の中にそういった要素が対置されると、そのコントラストによって相乗的に美しさを増すことができますね。
最後に登場した花嫁がフラットなスニーカーを履いていましたが、描かれる女性像から類推すればあの選択以外には考えられないといった感じでしょうか。

30年ものキャリアを積み重ねてきた山本耀司によるコレクションはそのすべてがYohji Yamamotoのコレクションとして完璧であり、その世界観が確立され過ぎていることが逆説的に言えば問題点と言えるかなと思います。不確実性や不確定性はクリエイションに変化を与えるために必要な要素なので、そういったものがもっと内包されたコレクションが個人的には見てみたいですね。

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Lanvin 12SS Collection

翼を持った女性を夢見ていたというAlber ElbazによるLanvin 12SS Collection。
その翼をショルダーパッドに変え、40年代や80年代ではない方法でそれを表現したかったようですね。

ダークトーンのランウェイに、いつものようにブランドのアイデンティティであるドレスにフォーカスしたコレクションはショルダーにポイントを置く。それにクロップドジャケットやペンシルスカートを加え、シャツやコート、パンツのサイドシームなどにあしらったスリットは暗いランウェイの中にも春夏の空気感を演出。ビージュエルドなドレスは強さとエレガントさを高い次元で実現し、他には無いLanvinらしい輝きを放つ。
ショーの終盤にはドレープが素晴らしいシックなパステルカラーのピンで留めたプリーツドレスが登場。ラストのドレスは神話の世界に入っている雰囲気が少しあった感じでしょうか。

ラインストーンやプリントにはモチーフとしてスネークをメインに用い、他には十字架やイーグルなどをペンダントやベルトのバックルでフィーチャーしていましたね。アクセサリーに関しては、チョーカーが多くのLookでさり気無く使われていたのも気になったところ。
モデルのキャスティングに関しては、(Diorでもそうでしたが)Miranda Kerrが歩いているのが気になった感じですね。

Tim Blanksが"modernity is beauty."というエルバスの信念について書いていますが、一貫してシンプルなドレスにフォーカスしてコレクションを行うことは時間の風化に耐えられる美しさを獲得しようとする試みでもあります。作品の永続性というものは多くの創り手がそれぞれのアプローチで到達しようとするものであり、その実現のために必要なことはその本質にどれだけ迫れるかに掛かっていますね。

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Christian Dior 12SS Collection

2011-12年秋冬クチュールコレクションに引き続き、Bill Gayttenによって提示されたChristian Dior 12SS Collection。
クチュールコレクションの災害の後、今回は安全なカードを切ったといった感じのコレクションでしたね。

いつものようにRodin Museumの特設テントで行われたランウェイショーは、クラシカルでスウィートな方向性での展開。エアリーなガザル・スカートにオーガンザによるブラウス、バー・ジャケットはワイドネックによってモダンに表現。Stephen JonesのクローシュをLookに加え、タイルパターンや薔薇のモノクロプリントを用いた膝丈のミニドレスを中心にデイウェアを構成し、イヴニングはランジェリーライクなレースのひだ飾りなどによるチュールドレスをフィーチャーしていましたね。
若さとクラシカルさを兼ね備えたライトなコレクションは面白さや新しさはほとんど無く、至ってノーマルな感じですが、ビジネス的に言えば(デザイナー不在の現在の状況を考えると)ベターなコレクションと言えるかなと思います。

John Gallianoの解任以降の状況を見ていると、それは単純にChristian Diorというブランドのデザイナーが決まらないという問題だけでなく、オートクチュールを源流とした重厚長大路線の終わりというコンテキストが見え隠れしている感じがあります。コンパクトでハードルの低い、ある意味でインスタントな方向性への変化はファッションだけに限らず、多くの分野で進行していることではありますが、安易で軽薄なものというものは面白さを全く感じないので個人的にこの流れは好きでは無いですね。

Christian Diorというブランドにはスペシャルな何かを期待してしまうものであって、それは言い換えれば、お誕生日の日にバースデーケーキを少女の前で開けた時の少女の微笑みや驚きのようなものを女性に対して与えられるかにある。tFSでも書かれていましたが、ショートケーキの上にあるストロベリーのようなスペシャルな何か。それを表現できるデザイナーがChristian Diorには必要ですね。ブティックでショッピングをする女性が求めているものは、プレゼントの箱を開ける前の少女のトキメキやバースデーケーキのロウソクの火を吹き消す瞬間のような喜びなのですから。

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Rick Owens 12SS Collection

"a gateway to heaven"と呼ばれる光の壁をランウェイにセットして行われたRick Owens 12SS Collection。
モデルが光の壁を横切る際、暗闇の中で一瞬浮かび上がる演出がRick Owensの世界観にとても合っていましたね。

ブランドのシグネチャであったゴシックトーンや宗教性を帯びたストリート感は形を変え、ここ数シーズンがそうであるように今回もオートクチュール・インフルエンスによってコレクションを駆動。描かれる女性像は厳粛で気高く、威厳に満ちた優雅な香りが漂います。
今回のコレクションでメインフォーカスされたのは、リックが"pillar"と呼んだロングでテーパーの掛かったスカートやドレスのシルエット。それらにコクーン型のアウターを組み合わせるのをベースとし、シンプルで静かな美しさを表現。ウエストのドローストリングや終盤に登場したベルカフスは単純ではありますが、Lookの中に変化を付けていて適切に機能していた感じがありましたね。ショーの最後のグラフィック・パッチワークは(モダンさよりも)ストリート感が少しだけ顔を出した印象です。

ミニスカートなどに代表される露出の多い安易なセクシャリティではなく、壮麗なエレガンスを。
ラディカルなシルエットがランウェイだけに限定されることなく、常にアクセス可能であることを。
彼のクリエイションのコノテーションはつまりそういうこと、ですね。

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Ann Demeulemeester 12SS Collection

19世紀後半に北アフリカを旅したスイス人作家のIsabelle Eberhardtから影響を受けたというAnn Demeulemeester 12SS Collection。今回もメンズコレクションと同じく、ランウェイには砂漠のように砂を敷いての開催。ちなみにアン自身は今まで砂漠には行ったことはないようですね。

彼女のシグネチャであるArthur Rimbaudのポエティックな空気感、ダークでメランコリックな香りに、ロマンチックな強さと儚い美しさを兼ね備えたマスキュリンでフェミニンな女性像。シアーなシフォンのレイヤリングによって描かれる女性の柔らかさと精神の透明度。タッセルをテーラリングからドレスにまで多用し、オープンワークニットはジャケットのような雰囲気が印象的。オンブレ効果を使用した淡いグラデーションは、アンの空想上の砂漠の民が具現化されたような感じがありましたね。フロッピーなレザーハットはヴィンテージな佇まいが雰囲気を出していたと思います。モデルのヘアスタイルもムードがあって素晴らしいの一言。Ann Demeulemeesterの世界観とそのストーリーが適切にランウェイでは語られていました。

息を飲むような純化された美学によって写し出される、変わることの無い凛とした女性のメンタリティ。鏡のような水面に反射した曇りのない風景のように、静かに美しさを放つコレクション。その美しさに対していつまでも耳を澄ましていたいと感じさせてくれる感覚が彼女の描く女性像にはあるような気がしますね。

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Balenciaga 12SS Collection

ランウェイショーの開始前に会場のベンチがいくつか壊れるというハプニングから、ゲストが全員スタンディングでの開催となったNicolas GhesquiereによるBalenciaga 12SS Collection。
ショーでベンチが壊れるというのは初めて聞きましたが、基本的に一発勝負なのでハプニングは付き物といったところでしょうか。結果的にStyle.comのNicole Phelpsがレビューで書いているように、ショー会場は教会の礼拝堂のような趣になったようですね。

Nicolas Ghesquiereによる今シーズンの研究対象は、オーバーサイズ・コンストラクションに関するもの。ニコラによるとボディとファブリックの間に存在する空間についての考え、それは正にCristobal Balenciagaのための概念であるとのこと。フローティングされ、流動性を帯びたファブリックは、ボディの上にアーキテクチャルな構造体を建造する。

シックなカラーパレットを用い、ネオプレンのような質感のシルクによる構築的なジャケットや目の粗いシルクによるトラックショーツ。スペインの宗教的なモチーフをあしらったヴィヴィッドなグラフィックにテーラリングとしてのデニムジーンズ。無造作に付けられたフラップポケットはLookの抽象度を上げ、ショーのラストに登場したパッチワーク・ファブリックやティンセルスカートによるドレスは大きく楕円を描くつばを持ったバイザー(1967年のBalenciagaの作品であるウエディングドレスからの引用)が存在感を放っていましたね。

Nicolas Ghesquiereらしい偶発性と変則性の余剰、アノマリーの総和として提示されるコレクション。
今回は実験結果の生データや中間生成物をそのまま提示されている感触がありましたが、彼の新しさに関する強迫観念性は毎回目を見張るものがあります。Cathy Horynが"That's why during a show you sometimes feel as if you are in a little boat moving away from a familiar shore, into a sea of weird or ugly clothes."と書いていたのが分かり易くて理解し易いレビューだなと思いましたね。

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Gareth Pugh 12SS Collection

ここ数シーズンはウェアラブルな方向性でコレクションを重ね、11-12AWではLookに色を取り入れていたGareth Pughでしたが、2012年春夏コレクションでは少し昔に戻りましたね。彼の話によると今回は少しだけ過去を振り返ったコレクションで、ランウェイショーはハードなLookから始まり、後半に掛けて徐々にソフトなLookへと変化させていったようです。終盤のブラックとホワイトで構成されたセクションについては、相反するエネルギー(ネガティブとポジティブ)をLookの中に精製し、それらをクロージングの中で機能させるというアイデアだったようですね。

Crystal RennをフィーチャーしたRuth HogbenによるFashion Filmからショーはスタート。ケージのようなホリゾンタル・ストライプにメッシュや直線的なカッティングといったGareth Pughらしいグラフィックエレメントによって進行し、ソフトなLookになるにつれて彼のアイデンティティとコマーシャリズムの均衡が取れていっていましたね。

Gareth Pughによればミニドレスやローブに使われたモノクロストライプはそれらが揺れ動くとき、ブラックがすべての色を吸収し、ホワイトがリフレクトすることで一種の虹を描く効果があり、そのエフェクトが彼はとても好きとのこと。スタティックなイメージだけでなく、動きによって表現され得るものまでコントロールすることは服をつくる上で重要なことでもあります。
ショーのエンドに登場したダークパープルのインセクティバルなSF甲殻戦士は、Philip Treacyによるグラスファイバーを用いたヘッドピースがドレスよりもエッヂを効かせていたかなと思います。Tim Blanksがレビューしているようにヒューマニティが排除されているので少し嫌悪感がありますが、Gareth Pughのサブテキストとしてはパーフェクトな表現でしたね。

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Nicolas Andreas Taralis 12SS Collection

いつものようにモノクロームカラーパレットで表現されたNicolas Andreas Taralis 12SS Collection。
ゴシックトーンを帯びた空気感にソフトでシアーなコットンファブリック。洗いがかったようなシワ加工のベストやジャケットに、プロテクターのようなアウターやブラックレザーのアイテムが登場。サンダルとブーツを組み合わせたフットウェアはRick Owensの香りがありましたね。
各所で書かれているように、全体としてはHelmut Langなどの90年代ミニマリズムと自身のザラついた質感表現を組み合わせた感じでしょうか。個人的な感想としては、もっと表現に対するラディカルさが欲しいといったところですね。

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