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Celebrity AD Campaign

Jean-Baptiste MondinoがKristen Stewartを撮影したChanelの2020年春夏キャンペーンが適切に機能していない、とtFSでいろいろと議論がされていますね。
一つのイメージでキャンペーン全体を判断するのは早計ではありますが…。

ブランドが展開するアドキャンペーンの主なミッションとしては、デザイナーによってコレクションで提示された世界観の拡張や、それとはまた少し違った世界観やストーリーをフォトグラファーが二次創作的に提示することで、デザイナーのクリエイションの魅力を最大限に引き出すということがあります。一時期、デザイナー自身がキャンペーンのフォトグラファーを務めることの是非についての議論がありましたが、デザイナーとフォトグラファーの化学反応という点でプロのフォトグラファーに任せるべきというのが個人的な意見でした。

tFSで指摘されているようにセレブリティを起用したアドキャンペーンは、多くの場合、ただブランドの服を着ただけの、ただのアンバサダーとしてセレブリティがそこに写っているだけ、という結果になりがちです。デザイナーのクリエイションとセレブリティのキャラクター性をフォトグラファーが適切にストーリーテリングし、化学反応を起こしているキャンペーンは少なく、セレブの有名性に全面的に頼ったクリエイティヴィティの低い、ただの販促でしかない下品なキャンペーンになってしまうことが多いのが実情です。

セレブリティを自身のクリエイションの中に上手く取り込んで、ストーリーテリングができるフォトグラファーとして個人的に思い浮かぶのが、例えばAnnie LeibovitzやTim Walkerであります。彼らの作品は、セレブリティのキャラクター性や空気感を的確に捉えた上で、自身の世界観の中でその魅力を最大限に引き出し、且つ、衣装として着たデザイナーのコレクションをそのストーリーの中で違和感がなく機能させることができています。

ただ、例に挙げた2人はトップレベルにあるフォトグラファーであり、比較対象として引き合いに出すのは誤っている部分があると思いますが(彼らは作家性がかなり強く、こういった一般的なアドキャンペーン向きではあまりないというのもある。)、あくまでも対極にある分かり易い例として挙げています。

セレブリティを起用したキャンペーンを高い次元で機能させるのは難易度が高いというのは認識していますが、Chanelのようなメゾンには適切なクオリティコントロールを期待したいところですね。

Interview with Rei Kawakubo about "Orlando" by Vanessa Friedman

12月8日にウィーン国立歌劇場で開幕したオペラ"Orlando"のコスチュームデザインについて、Vanessa Friedmanがメールで川久保玲にインタヴューをしたようですね。

川久保にコスチュームデザインの話があったのは今年の5月とのこと。クリエイティヴな女性たちからの依頼であり、Olga Neuwirthは数少ない女性作曲家の一人でウィーン国立歌劇場でオペラを行う最初の女性であるというのが興味深かったようです。そして、Virginia WoolfとBloomsbury Circle、特に"Orlando"は時間と性別を無視するという主要な概念のために常々興味を持っていたと話しています。

6月のComme des Garcons Homme Plus、9月のComme des Garconsのコレクションのテーマが"Orlando"であったのは、時間がなかったからのようですね。オペラでは出演者に36、コーラスや他のグループのために106の衣装が必要であり、残念ながらゼロからオペラのためにコスチュームデザインをすることは無理だったとのこと。よって、オルガに進行中の2つのパリコレクションのテーマを"Orlando"にすることを条件に出したようです。

例えそれがオペラの文脈であったとしても、いつものように新しいものをつくりたかっただけ、と今回のコスチュームデザインの目的について川久保らしく話しています。服はストーリーを語り、感情を表現する、と。

そして、性別を含むあらゆる一般的な概念と障壁を壊すことにいつも興味があると話し、今回破ったルールは、おそらくコスチュームが台本と演出を考慮する必要があるということと説明しています。つまり、オペラの全体像をほとんど共有せずに今回のコスチュームはデザインされており、川久保なりに各ピースがオペラのステージでどのように連携して機能するかを想像しながらデザインされているということ。オルガもこの提案を受け入れており、クリエイションのシナジーと偶発性に賭けているということになります。

最後の質問として、別のオペラのコスチュームデザインを手掛ける可能性について問われると、おそらくやらない、と答えていますね。

Chanel Pre-Fall 2020 Metiers d'Art Collection

コレクションに名付けられた"Paris-31 Rue Cambon"が示唆するように、Grand PalaisにGabrielle "Coco" Chanelのアパルトマン且つ、サロンであった鏡の螺旋階段を再現して行われたVirginie ViardによるChanel 2020年プレフォール・メティエダールコレクション。
セットデザインにはSofia Coppolaが関わったようですね。また、Hamish Bowlesが書いていますが、Cocoの実際のアパルトマンはJacques Grangeによってリノベーションが計画されているようです。

巨大なシャンデリアが頭上から下されるとランウェイは明るくなり、刺繍ウエストベルトとカフスに力点をおいたクラシックダブルブレスト・ブラックコートを着たVittoria Ceretti(ショーのオープナーとクローザーを務める。)が螺旋階段を降りる。肩に羽織ったフリンジ付きのロングコート。白黒スプライスのジャケットとバッグを持つAmanda Sanchez。赤と青のカラーブリーディング・シャイニーカラーのコートにはレースラッフルのブラウスを合わせる。

Cocoと親交のあった画家たちを連想させる滲んだ絵の具のような効果を持つセットアップスーツに、鮮やかなブルーとオレンジの透け感のあるグラデーション・レースドレス。Cocoが幸運のお守りとした小麦の穂は、スパンコール刺繍としてチュールジャケットにあしらわれる。
スタンドカラーのキルティングコートに、滑らかなオフホワイト・シルクは優しく女性を包み込む。

カメリアやパール、No.5のパルファムボトルやスターモチーフのCCネックレスといった同メゾンのシグネチャー・アクセサリー。
ブラックとゴールドのインターレースチェーンは多くのLookにおいて多用され、2.55ハンドバッグのミニヴァージョンやランウェイで目を惹いたCocoに由来するバードケージバッグに留まらず、ノーカラーのラペルレスジャケットのパイピングといった部分にまで用いられている。足元もそれに呼応するように、リボンストラップのパンプスはゴールドとブラックのツートンカラーになっている。

Lucia Picaによるメイクアップは、アクセサリーやジュエリーが多用されるメティエダールコレクションに合わせて目元に顔料やクリスタルを用いてシルバーの煌めきを与えることで同様の効果を齎す演出をしている。また、いくつかのLookではブルゴーニュの光沢のある深い赤ワインをモチーフにした唇が描かれている。

Sam McKnightによるヘアスタイルは、ウェットな質感によるボーイッシュさとフレンチツイストを特長としたもの。また、ミディアムからロングまでのナチュラルヘアのLookでは女性がリアルに着けているようなヘッドバンドが用いられ、ロー・ポニーテールのLookではカメリアとブラックネットで装飾が施されている。

Jenny Longworthによるネイルは鏡の階段からインスパイアされたもので、光を反射する夢のような効果を齎すクリスタルとChanelのクラシックカラーにエレガンスベースのフェミニンさを加える。1つはChanelのモノグラムネイル、もう一つは底部にクリスタルをあしらったヌードネイル、最後は、底部にゴールドのクリスタルをあしらったLucia Picaが描いた唇に合わせた深いワインレッドのルージュネイルとなる。ダブルCはChanelのクラシックコードへの頷きであり、ディティールに注意を払うメティエダールコレクションそのものへのオマージュでもある。

18回目を迎えた今回のメティエダールコレクションは、タイトルが指し示すようにChanelというブランドの全体宇宙のグラウンドゼロへの帰還であり、Karl Lagerfeldから継いだVirginie Viardが改めてChanelを再訪したもので、デフィレの中で何度もリフレインされるハウスコードがその証左となる。

ラガーフェルドのメティエダールコレクションはParaffectionの高度なアトリエの技術を最高水準まで解き放ち、賛歌を捧げることに主眼を置いていた。テクニカルなコレクションはしばしば過剰さを伴うものであり、相対的にメティエダールは細かいディティールの装飾性が強く、情報量の多いLookの完成度はどこまでも上がっていく。ラガーフェルドとアトリエのクリエイティヴィティの丁々発止な駆け引きは、時に王室的なエレガンスやある種の宗教性を発露するに至った。

翻って、ヴィアールのメティエダールコレクションはこれまでのコレクションと同様にプラグマティックでウェアラブルである。
偏りが少なく平均的であり、アトリエワークの何かをフィーチャーし、全面に押し出すといった部分はかなり少ない。漂う空気感もリアルなB.C.B.G.レベルに留まり、アーティスティックな何かを感じさせる突き抜けたダイナミズムはそこには存在しない。

メティエダールコレクションはラガーフェルドがChanelに遺した大切なコンセプチュアルコレクションであり、他のブランドにはないものである。デザイナーを裏から支え、Chanelの本質を定義するものは普段、スポットライトを浴びることのないアトリエの職人たちであり、それをいつまでも忘れないために年に一度の祝祭空間として設定されている。

Chanelに期待することはラガーフェルドがそうであったように、地に足をつけつつもファンタジーを描くことにある。
もちろん、ラガーフェルドと同じことを繰り返す必要はない。同じことができる人間なんてものは現代にほとんど存在しないのだから。必要なのは未来から過去を振り返った時にラガーフェルド期とは違ったヴィアール期という識別可能な未来のヴィジョンを伴うストーリーを語ることにある。

最後に、2020年の第三四半期にパリ北部のポルト・ドーベルヴィリエにParaffectionの11のアトリエが入居し、600人ほどの職人が勤務することになる"19M"(デザインはRudy Ricciotti。)がオープンする。「19」は19Mの住所となるパリ19区とCocoの誕生日(8月19日)に由来し、「M」はフランス語のMetiers d'art(クラフト)、Mode(ファッション)、Main(手)、Maison et Manufacture(メゾンとマニュファクチュア)を意味する。

これはBruno Pavlovskyが説明するように、アトリエの職人たちに対するChanelの絶対的な愛情を証明する建築物である。
アトリエを集約したこの拠点がChanelにとって将来的に重要な場所になることは間違いなく、Chanelとアトリエの職人たちの長い恋物語はこれからもずっと続いていくことを意味しているのでしょう。

via wwd.com businessoffashion.com tFS

T Magazine interview with Kris Van Assche

T MagazineにKris Van Asscheのインタヴューが載っていますね。
今年のBerlutiのプレフォールコレクションはインドのチャンディーガルにあるPierre JeanneretによるGandhi Bhawanで撮影した写真が使われていましたが、Pierre Jeanneret繋がりということでパリのLaffanour Galerie Downtownと協力し、Pierre Jeanneretのファニチャー17点をアップデートしたという話題から始まっています。

クリスが自分のために購入した最初のアート作品はRobert Mapplethorpeの"White Gauze"だったというアートに関する話題や、パリで一緒に住んでいる猫(左上の写真)のFridaについてなど、話題は多岐に渡っています。ちなみに猫はFridaとDiegoの2匹おり、彼のInstagramでよく見かけますね。名前は、Frida KahloとDiego Riveraから取られています。

中央下の写真は、クリスのRoyal Academy of Fine Arts時代の学生証ですね。12か13歳の頃にファッションデザイナーになると決めたとき、最初にデザイナーとして意識したのはJean Paul GaultierとThierry Muglerだったとのこと。

右上の写真は、アントワープにあるFrituur No.1というフライドポテトのファーストフード店。お気に入りのようで、学生の頃から通っていると話していますね。今も同じ女性店員が働いているとのことです。