Virginia Woolfが1928年に発表した"Orlando"は、Karl Lagerfeldのお気に入りの小説であり、先日、パリのGrand Palaisで行われたカールをトリビュートするためのイベント"Karl For Ever"においてTilda Swintonが演じた役柄である。Tilda Swintonは1992年のSally Potterによる同名の映画においても同じ役柄を演じており、また、7月11日まで彼女がキュレーションした同名の写真展がニューヨークで開催されている。
12月にウィーン国立歌劇場で上演するOlga Neuwirth(150年の歴史を持つウィーン国立歌劇場における初の女性作曲家。)によるオペラ"Orlando"の衣装を川久保玲が手掛けることが報じられたが、今回のComme des Garcons Homme Plus 2020年春夏コレクションのテーマも"Orlando"。川久保によればそれは"Transformation and liberation through time."とのこと。時間(歴史)の経過に関するジェンダーやセクシャリティの変容とその解放に関する調査がコレクションに存在する。
キルティング・ノーカラージャケットに真珠のネックレスとジュエリープリント・カットソー、レースシャツに階層化されたスカート、多用されるフラウンスにフェイクレイヤードのボリュームスリーブなど、エリザベスやヴィクトリア、エドワードといった16世紀から18世紀前後のフェミニン・エレメントをテーラリングの男性性にミックスすることでジェンダーの揺らぎを企図している。
性差の境界線を無くした各Lookはプリュスとしてはお馴染みといったところ。さり気無く足元を飾るスニーカーがNikeとのコラボレーションとなるAir Max 95というのも、急に歴史の世界から現代に引き戻された感じがして面白いだろうか。
パリにあるリュクサンブール公園の温室を会場に、Jean-Luc Godardの"Alphaville"の詩を読むAnna KarinaのオーディオクリップとAnne Clarkの"Elegy For A Lost Summer"をミックスしたFrederic SanchezによるサウンドトラックによってショーをスタートしたKris Van AsscheによるBerluti 2020年春夏コレクション。
メタリックディティール付きのAlessandroオックスフォードや、ヘムにスリットジッパーの付いたスラックスなど、コレクションは2019-20年秋冬シーズンからの継続としてワードローブを拡張し、その特質を増幅する。
サンライトイエロー、オレンジ、パープル、ブルー、シルバーグレーにパッションピンクからミントグリーンまで、高彩度の配色からDior Homme時代に見せたバーガンディのような繊細な色使いを含んだカラフルなカラーパレットはデフィレのテンションを上げ、多くの華をランウェイに咲かせる。Piergiorgio Del Moroがキャストしたメンズからウィメンズ、若者からシニアまでの多様な人種によって構成されたモデルたちは、コレクションの漸進主義的拡張とカラーパレットの広がりと同じくダイバーシティの歌を歌う。
「それがメンズブランドであることに疑いようはありませんが、誘惑と戯れることでBerlutiの男性像を私が以前取り組んでいた男性像よりもセクシーにするのも良いのです。これは明確により大人で、よりセクシーです。それは誘惑と美しさに関するものです。」と今回のコレクションに関してヴァンアッシュは説明する。多くのウィメンズモデルのキャスティングに関しては、「世界は美しさを必要としているので、世界で最も美しい女性を連れてきて。」とPiergiorgio Del Moroに依頼したと言い、「強い女性が男性の背後にいると思いたい。」のだとその意図を語る。
Kris Van AsscheによるBerlutiは、スニーカー等のスポーティーな軽快さとレザーのビターな重さ、2つの異なる要素がアクセルとブレーキとして存在しており、コレクションに抑揚を与えているでしょうか。重厚な表情で魅せるレザーはその存在感ゆえ、時としてそれ特有のアクやクセをコレクションに運びます。相反する2つの要素をバランスさせ、均衡点を探るのが今の彼のクリエイションとなっていますね。