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Reportage mode: Kris Van Assche... Dior homme 12SS Collection Backstage...

2012年春夏メンズコレクションも一段落したので通常更新に戻りたいと思いますが、ファッションウィーク期間中はいつも濃密な時間を過ごせますね。コレクションを見て、いろいろな記事を読んで、考えて、というプロセスがとても楽しく、それによって自分の考えや物事の見方が少しずつ変化していくのを実感できるのが面白いところ。ただ漠然と見ているだけでは、意味の無い自己履歴にしかならないのでその辺は注意が必要ですね。それは写真を撮ったり、文章を書いたりすることなどにも言えることですけれど。

それで、上に載せた写真はGQ FranceのKris Van Assche特集から、12SSコレクションのムードボード。
特集記事の中ではアトリエの写真などもアップされていますね。

Dior homme 12SS Collectionのバックステージ映像がChristian DiorのYouTube Channelにアップされていたので、こちらも是非。

Lanvin 12SS Men's Collection

Lucas OssendrijverとAlber ElbazによるLanvin 12SS Men's Collection。
マスキュリンなLookに戻る時間だったというルカの発言と男性が正装する最適な方法としてのユニフォームというエルバスの発言がありましたが、今回のコレクションは前半にミリタリー・トーンを伴ったLookを配置し、中盤から後半に掛けてテーラリングとカジュアルなLookを配置する流れで構成されていましたね。徐々にリラックスしたスタイルにスライドしていくのが面白い構成だったかなと思います。

"security guard"とルカが呼んだFirst Lookのレザー・ピースはショルダー部分を少し浮かせるテクニックを使っており、彼のお気に入りのアイテムとのこと。ミリタリスティックなレザーやジッパーを用いたコートでショーは進行し、その後、ブランドのサインであるジャージー素材のニットが登場。ランウェイ中盤のテーラリングは、大きく落ちたドロップショルダーのLookが目を惹きましたね。ショルダーバッグを掛けたロングジャケットとレザーショーツなどのLookはストリート感をダイレクトに表現していたのが新鮮な感じ。大概、フォーマリティやミリタリーテイストを混ぜることがLanvinは多かったのですが、今回は違いましたね。足元を飾るサンダルやブーツは多様的で、カジュアルなLookで使われていたネックレスも何種類かあったのが気になりました。

Lanvinのコレクションは常にファブリックとシルエットとテクスチャーについての物語であり、私たちは革命ではなく、発展をより多く信じます、というルカの話がありましたが、彼らは自分たちのすべきことを理解し、それを積み重ねていくというやり方でブランドを表現しているのかなと思います。コレクションの部分と全体のどちらを取っても迷いが無いことが伝わってくるので、それがクリエイションの安定感につながっているような気がしますね。

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Raf Simons 12SS Collection

今から7年前のショーでも使用したことのあるエスカレーターというアイデアを再びランウェイのステージに選んで行われたRaf Simons 12SS Collection。
今回のコレクションはカラーとパターンにフォーカスしたもので、ランウェイショーで目を惹いたのは全く同じアイテムの色違いやパターン違いのアイテムを身に付けたモデルが連続してウォーキングしていたことですね。Tim Blanksはウォーホールのシルクスクリーンのようだったと表現していましたが、確かにそのような感じもしましたでしょうか。

ボトムは最初から最後までスラックスにゴールドチェインで装飾したウイングチップで固定し、トップスで遊ぶという方法論で進行したコレクション。プレードパターンのジャケットにコート、ブルー・オレンジ・レッドのレザーシャツ、身頃の中央で切り返したものやダイアゴナルにダーツやカットが入れられたジャケットにノースリーブシャツなど。今回のショーのインヴィテーションに描かれていたXマークをモチーフにしたアイテムやフラワープリントのものも登場していましたね。

全体的にミニマルな印象があったのでJil Sanderの要素も少しあったコレクションでしたが、基本的にはTim Blanksが書いているように、Raf Simonsらしい若者の青春期に関するメディテーションについてのコレクションだったかなと思います。

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Dior homme 12SS Collection

"Less and More"というタイトルが示すようにこれまでの流れを汲むコレクションを披露したKris Van AscheによるDior homme 12SS Collection。

メゾンのヘリテージとアトリエのノウハウ、そして、リアルワールドとの対話が始まりだったというコレクションは、アトリエワークで使用するトワルをイメージしたLookからスタート。いつものようにテーラリングにフォーカスしたコレクションは、クリスのシグネチャと同様にスクウェア・シルエットのジャケットにクロップド・トラウザーのセットアップを中心に展開していましたね。ノースリーブのジレジャケットやシャツジャケットはミリタリー・ユニフォームから引用したシルバーリングを使用し、襟元のボタンで留めていたのが特徴的。アイテムによってはリバーシブルボタンになっているようですね。インナーシャツやダブルのジャケットにも使われていたのが目に付きました。
あとアイテムではピーコートなども登場しつつ、テーラリングのフォーマリティの中でストリート感を与えていたレザーリストバンド、11-12AWコレクションから引き続き出演しているアーミッシュのようなハットやメダリオンで装飾されたレースアップシューズがありましたね。

アイキャッチとしてキャメルカラーのラムスキン・レザーをラペルやベルトに用いていましたが、Style.comのレビューでも指摘されているようにシャツなどはCelineの香りがあったかなと思います。Front Rowでショーを観ていたオーストラリア人女優のEmily Browningが「ほとんどCelineのメンズ・バージョンのようだったわ。」と話しているのも全体的にかなりミニマルなコレクションになっていたので理解できますね。

今回はアトリエのトワルを引用していましたが、クリスが"the art of tailoring"と呼んでいるアイデアは過去のシーズンでも目にする技術。アトリエでの制作プロセスで用いられるテクニックをそのままデザインとしてクロージングに反映させるアイデアで、それによってクチュールハウスのアトリエの技術力を賛美するという考えですね。ちなみに11-12AWコレクションでは糸が前身頃に打ちっぱなしになっているシャツやコートがありますが、あれは確か裏地か何かを制作する際のアイデアだったはずです。

11SSコレクションからスタートしたファブリックのボリュームと流動性に関する調査は、流れるような滑らかなストリームラインを描くシルエットや質感表現としてミニマリズムという領域に収斂した感がありますね。新奇性や革新性という部分は弱さがありますが、ソフィスティケートされた上品さがあることは確かかなと思います。

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Ann Demeulemeester 12SS Men's Collection

存在しない空想上の砂漠の地をイメージしたというAnn Demeulemeester 12SS Men's Collection。
アンによればそこは多文化的な場所で、東洋と西洋、未来を伴った現在と過去がミックスされているとのこと。いつものように自由と詩に関するコレクションは、クロージングによって保護されるフラジャイルな青年たちを描いていましたね。

ベージュやブラウンは砂をイメージし、ブラックは夜を、ホワイトは光を意味するカラーパレット。ショールカラーを多用したジャケットやコート、レイヤリングされるベストにストール、7分丈のパンツにレースアップブーツやグラディエーターサンダル、ベールのようでもあったシースルーの素材使いは春夏らしく爽やかな印象で、East meets Westのマルチカルチャーのランウェイショーは仄かにアラビアンな雰囲気が漂っていたかなと思います。レザーハットは少し旅をしているかのような空気感もありましたでしょうか。
ジャケットの袖に異素材を用いたり、リネンとシルクを組み合わせることなどによってファブリック間の緊張関係をつくり出したかったとアンが話しているように、コントラスト・ファブリックというアイデアもありましたね。

Ann Demeulemeesterのコレクションは基本的にレピティションではありますが、アンの描く美しさはある種の普遍性があるかなと思います。新しさはあまり無いかもしれませんが、新鮮さをいつも感じさせてくれるのが彼女の素晴らしいところ。今回も透き通った青年の心象風景をポエティックに描ききっていましたね。

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Givenchy 12SS Men's Collection

Riccardo TisciによるGivenchy 12SS Men's Collection。
"Bird of Paradise"のプリントをフィーチャーして行われたコレクションは、11-12AWから続いているプリンティング・コレクションの流れを汲んだものですね。

過去のメンズウェアコレクションではダークネスを見るだけだったので、闇の中でライトネスを見つけたかったというランウェイショーはカラーパレットにブラックを一切使用せずに展開。ティッシによると極楽鳥花はロマンチシズムとセクシャリティ、Light and lifeを意味しているとのこと。
トップスにはスウェットシャツやテーラリング・ジャケット、メッシュTシャツなどを配置し、ボトムスには背面にプリーツの入ったスカートやショーツという構成でしたが、スカートはフェミニティが少し強い印象でしたね。ショーツとレギンスの組み合わせはいつものようにストリート感がありましたが、極楽鳥プリントやサンダルによってストリートギャングinハワイアンな雰囲気もあったかなと思います。ディテールでは首から提げたアクセサリーや大きなイヤリング、スパンコールの使い方やスウェットのショルダー部分に付いたジッパーも気になる感じでした。上にもフォトをピックアップしましたが、Mariacarla BosconoとDaphne GroeneveldのLookは靴も含めてスマートにまとまっていて良かったですね。

グラフィックプリントのみでコレクションをドライヴさせるという方法論自体がとても難しく、クリエイションの思案プロセスにおけるインテリジェンスが感じ辛くなってしまっているかなと思います。スカートの使用もそうなのですが、制約の多いメンズウェアではセオリーから外れると極端にクオリティが低下する問題がありますね。

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Comme des Garcons Homme Plus 12SS Collection

川久保玲によるComme des Garcons Homme Plus 12SS Collection。テーマは、"tailoring for punks"。
テーラリングのフォーマルな要素にダークで不穏な空気を与えての進行でしたが、彼女にしてはすごくウェアラブルな感じのコレクションでしたね。

テーラリングとしてのバイカージャケットやトレンチコートにピーコート、クロップド・トラウザーにショーツ、ブラックレースのテールコート、そして、アクセサライズされた冠と有機的なクリーム色のハットなど。グラフィックは使用せずにポルカドットにチェッカーボード、ピンストライプにウィンドウペイン・チェックといったパターンが主だったので描く男性像の年齢も少しだけ大人な印象がありましたね。個人的には直接的な表現よりも、フォルムやアイテムの組み合わせによってさり気無く醸成される間接的な表現の方が好きなので良かったと思いますが。

Cathy Horynも書いているようにジャケットやコートのポケットの上の部分を垂直にカットするアイデアはちょっと面白かったですね。あと、ショーツやジャケットの袖の表面がラッフルのようになっていたのも目を惹いた要素かなと思います。

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Kris Van Assche 12SS Collection

ロサンゼルスのサンタモニカのビーチで見たというBMXで遊ぶクールガイから影響を受けたKris Van Assche 12SS Collection。
スポーツウェアのミックスによるテーラリングのスポーティフィケーションはクリスの不変のテーマですね。

カラーパレットはホワイト、ブラック、ベージュにグレーベージュ、そして、アクセントとして使われていたレッド。ナローラペルでスクウェアなジャケットにクロップド・トラウザー、ジャケットのインナーなどにも使用されていたオーバーサイズのポロシャツ、トレンチコートとホワイトスーツには快適で動き易いジャージー素材を用い、2Lookだけ使われていたバッグはEastpakとのコラボによるもの。トリルビーとバグ-アイ・サングラスもLookに上手く調和していた感じだったかなと思います。最近のクリスはDior hommeでもそうですが、トラウザーにベルトをしないことが多いですね。

ユース・カルチャーをインスピレーションソースとしていますが、彼のつくるものは基本的にフォーマリティが勝ることが多いかなと思います。ある意味で潔癖的な部分があると思うのですが、それによって上品に仕上がるとも言えますね。ただ、クリエイションにおける不確実性が排除されてしまっているのも事実。ウェアラブルで実際に着たいと思える服は多いのですけれど・・ね。
11-12AWからシグネチャにおいてもDior hommeの工場を使い始めていますが、本当の意味で二つは円環をなす状態に成りつつある感じでしょうか。

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Yves Saint Laurent 12SS Men's Collection

Stefano PilatiによるYves Saint Laurent 12SS Men's Collection。
Tim Blanksがレビューで書いているように、今回はサンローランの出生地である北アフリカへ再訪しているかのようなコレクションでしたね。ピラーティは新しい何かをするというよりも毎回ブランドのDNAの再解釈がメインとなるのですが、本コレクションもその方向性での展開でした。

カラーパレットはブラック、ネイビー、ホワイト、そして、サンド(砂)カラーのカーキ。クラシカルなダブルブレスト・セットアップにミリタリー・トーンのスペンサージャケット、メッシュ素材のインナーシャツ、滑らかな質感のトレンチコート、同メゾンのサインであるサファリジャケットからはクリスクロス・レーシングをフィーチャー。乾燥した砂丘に生息していそうなスネークはジップ・ブルゾンやショーツ、ベルトにローファーに使われていましたね。控えめなランウェイショーにおいてこの辺は少し変化があって個人的には良かったかなと。あと良いと思ったのはフルホワイトのLookが爽やかでしたね。

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Junya Watanabe Man 12SS Collection

インヴィテーションには草深い農地と青い地平線が描かれていたという渡辺淳弥によるJunya Watanabe Man 12SS Collection。
聾学校の庭で行われたランウェイショーは、George Harrisonの"My Sweet Lord"をBGMとしていたようです。

ダンガリーにコットンチェックやタータン・ファブリック、ピンストライプにフラワーやペイズリーのパッチワークといったどこか牧歌的で温か味のあるテクスチャーを中心に、彼らしく再訪されるオーバーオールやウエリントンブーツなどのワークウェア。描かれるファームボーイルックは素朴な魅力がありますね。服の向こう側にある自然の豊かさや植物の美しさが連想されます。Lookに関しては、テーラード・ジャケットの使い方やフィナーレのホワイトシャツにブラックのオーバーオールを組み合わせていたのが目を惹く要素だったかなと思います。

ハイファッションの概念を捨象し、ここまでノーマルでリアリティのある服を提示されると逆にモードについて考えさせられますね。(ファッションに限らず)変化することを是とし、オリジナリティやクリエイティビティを強要される世界の問題点は報じられているJohn Gallianoの裁判などを見ていても思うところがあったりするので。

あと今回のコレクションを眺めていて思ったことは、美しさとは案外自分の身近にあるものなんだよね、ということ。気付けるか、気付けないかはその人の心の在り方次第といったところでしょうか。

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Yohji Yamamoto 12SS Men's Collection

インドネシアン・ミュージックをサウンドトラックにセットして行われた、山本耀司によるYohji Yamamoto 12SS Men's Collection。
彼によればそのサウンドトラックの選択は、民族的な感じを与えたかったからのようですね。BGMとしては三味線も使われていました。

アジアの文化に影響を受けたというコレクションは、ティピカルなYohji Yamamotoといった感じ。多様なモデルをキャスティングし、彼らしいオーバーサイズのアイテムによって描かれる緩やかなシルエット。袴キュロットはCdGと言われても違和感が無かったですね。レイヤリング・トラウザーや捩られたダブルのベルトなど、ウエストにネクタイが付いたLookもありつつ、明確な意味や国籍を持たないファブリックのパターンがコレクション全体に混沌とした雰囲気を与えていましたね。
クロージングに関してアジア的であるということを誤解を恐れずに言うならば、それは服に対してある意味、無頓着である態度だと言えるかなと思います。

耀司によると現代のYohji Yamamotoが描く男性像は、"He is someone who lives in the city, and on the street; sometimes he creates a movie, and sometimes he writes. He is a free man."とのことです。

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Rick Owens 12SS Men's Collection

自身の最も反対側にあるファブリックであるシアサッカーにフォーカスを当てて行われたRick Owens 12SS Men's Collection。
いつものように彼がメンズウェアについて通常考える要素、高潔さや賢明さ、厳粛さといったものを宗教性を伴って表現し、今回はそこにフェミニティの要素がありましたね。

カラーパレットはブラック、ホワイト、グレーにベージュ。フロア丈のロングシルエットを描くジャケットとスカートによるフォーピース・スーツはドレープがフェミニンな空気を出しており、ドレスのようでもありました。ファブリックの表面積が増えるほど女性性が強調されていくのが面白いのですが、単純に可愛らしさへ着地しているのではなく、男性性の範囲内でそれらが機能しているのが何ともRick Owensらしいですね。直線的なカッティングが大胆な男性性を、ドレーピングが柔らかな女性性を表現し、それらが対等な位置関係で同居している感じが素晴らしい。彼のように同じサーキットを周回するタイプのデザイナーは新しさを見つけられず、反復的でロストしがちなのですが、自分のテリトリーの中で適切に新しさを探せているのが良いですね。

トレードマークのボリューミーなブーツはスニーカーのようなシルエット。リックはレースアップではなく、ジッパーを使うのですが今回もそうでしたね。Jim Jonesのようなカルトのリーダーであって欲しかった、とリックが話しているサングラスも存在感がありました。全体的にコレクションは仄かにマルジェラ・フィーリングが流れていたかなと思います。

tFSでは女性のパンツと男性のスカートを比較して議論がされているのですが、女性がスカートではなく、男性のようなパンツを穿くようになったことの歴史的な理由には実用性があったからであって、もし仮に世の中の男性のワードローブにスカートを加えることを目的とするならばプラクティカルな要素が必要になるだろうと書かれていますね。クリエイションの爆心地であるパリで提示されるデザイン案(草案)は不完全さと極端さを伴ったとても濃いものであって、それが世の中に溶け込んでソサエティに影響を与えていくには長い時間が掛かるものですが、そこにはリアリティと機能性が必要になるというのはその通りかなと思います。

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Gucci 12SS Men's Collection

Frida GianniniによるGucci 12SS Men's Collection。彼女によると今回のコレクションは、「とてもリラックスしたスポーティ・アティテュードを伴った"British Gentleman's Club"について」だったようですね。キーワードとしては、俳優のMichael CaineやテーラーのTommy Nutterがあったようです。

クラシック・エレメントとしてのウェールズチェックを用いたブリティッシュ・サルトリアル、乗馬キュロットの影響を受ける裾にスリットの入ったスリムなトラウザー、フェンシングの感化を受けたキルティング・ボンバージャケット、ハーフトレンチにマッキントッシュ、サマー・セーターにカーディガン、ノーネクタイにノーソックス、そして、ブランドのサインであるホースビット・ローファーなど。
デイウェアは英国のダンディなクラシカル・ムードによってGucciの(そして、フリーダの)特色である艶が程よく中和されていて、ウェアラブルな感じになっていましたね。イヴニングではウィンドウペインチェックのタキシードにシルクファイユ・パンツとボウタイなどによってワンナイト・ロックスターな雰囲気を出していましたけれど。

グラフィックなども使用せず、全体的にプレーンでコンパクトにまとめていた印象ですが、これはこれで大人しいGucciといった感じで良かったかなと思ったコレクションでしたね。

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Prada 12SS Men's Collection

会場であるVia Fogazzaroに芝を敷き詰め、600のハードスポンジ・キューブを並べて行われたMiuccia PradaによるPrada 12SS Men's Collection。自身が嫌悪するものから影響を受けるというミウッチャが選んだテーマは、「ゴルフ」。彼女によれば、コレクションにエキセントリックな空気感を出すための口実としてゴルフを使用したようですね。そして、「たとえ私がゴルフが嫌いで、ゴルフをしないとしても、それは完全にインターナショナルなものなのです。」とも話していたようです。

50から60年代の空気を含んだコレクションは、クラシカルなダブルブレスト・スーツからスタートし、ノーブルなスカーフやカシミア・カーディガン等と対にされるフローラルやカートゥーン・プリントがキッチュでシュールな雰囲気を漂わせていましたね。半袖シャツやバッグ、靴を飾るラインストーンはイージーな感触があったかなと思います。
ショーツなどのレトロなチェックパターンやパステル・トーンのカラーによって表現される、古き良き時代の牧歌的でのどかな魅力。平穏なスポーツとしてのゴルフに他の要素をミックスし、ミウッチャらしく、ユーモラスでウィットに富んだものへとトランスレートしていたかなと思います。コレクションにおいて彼女がよく使用する、要素の結合による魔法がありましたね。

Giorgio ArmaniがPradaとDolce & Gabbanaを揶揄する発言をしていましたが、彼とミウッチャが立っている場所も方向性も違うのでちょっと違うのでは?といったところ。ただ、PradaのIPOに関して言えば、ブランドの将来のことを考えるとリスクファクターに成り得るとは思いますね。

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Burberry Prorsum 12SS Men's Collection

デジタルメディアの活用によってビジネスを拡大しつつも、コレクションではクラフトマンシップを賞賛することにフォーカスを当てたChristopher BaileyによるBurberry Prorsum 12SS Men's Collection。ブランドのコアには人間の手や感覚による真摯なモノづくりがあり、その周辺にマーケティングツールとしてのデジタルメディアがあるのであって、その順番を忘れてはいけないですね。

11-12AWコレクションでもあったフェミニン・フィーリングを残しつつ、ハンドクラフトを意味する(インターネットでは感じることが出来ない)手触り感のあるマテリアルとしてラフィアをフィーチャー。トートバッグやコルクソールのモカシン、タモシャンター帽やコートの襟などにラフィアがモチーフとして多用されていましたね。アースカラーのパレットと民族的なイカットパターンは温もりのある豊かさを表現。ランウェイには仄かに土の匂いが漂っている感じがあったかなと思います。
ホワイトシャツの胸にあったイメージとTシャツやニットに付けれられたプレートによるパターンはアクセントが効いていました。春夏シーズンですが、ニットやアノラックなどのコートが多く登場していたのが印象的。デニムが使われていたLookは爽やかな空気を運んでいたかなと思います。

ここ数シーズン続いていた濃いミリタリー・トーンが少し抜けて全体的に軽くなり、リラックス感が出て来ましたね。全体的にカジュアルな要素が多かったので、テーラリングなどを用いてもう少しコレクションに緊張感があっても良かったかなと思ったりしますがどうでしょうか。

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Jil Sander 12SS Men's Collection

過去2シーズン続いていたネオンカラーから離れ、ダークトーンのカラーパレットによって描かれたRaf SimonsによるJil Sander 12SS Men's Collection。モデルのヘアスタイルでも表現されていたように、油膜のようなリキッド・テイストを伴ったコレクションはJil Sanderの領域よりもRaf Simonsの領域でのクリエイションといった感じでしたね。

スクールボーイのようなハイウエスト・ショーツにRaf Simonsが"urban scout wear"と呼んだパイソン・テクスチャー等によるボディバッグ、曲線を描くクロッシェセーター、PVCコートにジャケットなど。彼の選択だということが一目で分かる抽象性を含んだそれらの組み合わせは、未完成な感覚をコレクションに与えていたかなと思います。今回のコレクションはRaf Simonsの領域に留まるものでしたが、未完成感という要素はミニマリズムにおいても重要なファクターですね。それは不確実性としてコレクションの中で機能させることができます。

一般的にミニマリズムとは対象から情報を省いていき、極端な単純さや単純化されたパターンの反復性によってある空間や領域において逆説的に何かの存在を感じさせるという表現手段であって、それらは基本的にニュートラルでナチュラルな性質を保有し、ある意味で言えば中立性を支持する概念だと思います。ただ単にベーシックでプレーンなものをミニマリズムと呼ぶことがありますが、ミニマリズムとは基本的にvisibilityの向こう側に何かが存在していなければならないですよね。
今回のコレクションのように暗く生々しさのある方向性で、ピュアな中立性や穏やかさも失われた条件下において成立し得るミニマリズムがもし仮に存在するのならば・・ということは何となくコレクションを見ながら思ったことです。

WWDによるとRaf Simonsの契約は更新されたようなので、Jil Sanderでの彼のクリエイションは今後も引き続き観れそうですね。彼の代わりになるデザイナーは自分の中では思い付かないので、クリエイティビティという側面から言えば契約更新の判断は間違いではないと思いました。

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Dolce & Gabbana 12SS Men's Collection

Domenico DolceとStefano GabbanaによるDolce & Gabbana 12SS Men's Collection。
"The Net"にフォーカスを当てて表現されたコレクションは、インターネットにおけるソーシャルネットワークやシチリアの漁師が使う網などのメタファーのようでもあったといくつかのサイトではレビューされていましたね。

ノーラペルのテーラリング・セットアップからスタートしたランウェイショーは、メッシュ素材のレイヤリングを多用しつつの展開。タンクトップにオーバーショーツ、ジャンプスーツにサファリジャケット、コートにパーカーなど。クロージングだけではなく、バッグやベルト、靴にもメッシュがあしらわれていましたね。ウエストが伸縮性になっていたシャツは少し変化があった感じで、サングラスはランウェイのライトが反射していて存在感が出ていたかなと思います。カラーパレットに関しては、中盤から後半に掛けてのグレーとホワイトが春夏っぽい雰囲気を出していましたね。ムードメイクとしてのDavid Gandyはいつもの感じでした。

SHOWstudio.comのレビューにもあるようにパーフォレーションは多くのブランドにおいて繰り返されるアイデアであって、今回の彼らのコレクションにはもう少し捻りがあっても良かったかなと思います。コレクション毎の単調さをカバーする何かが欲しいところですね。

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What is the Fashion Critic?

少し前にパーティーも開かれたようですが、1985年からTelegraphに関わるようになり、26年間に渡って活動を行ってきたHilary Alexanderは今月末で退任となりますね。英国の年金制度に関する法律では65歳を過ぎるとフルタイムの仕事ができなくなるようです。

コレクションをトランスレートして言語化し、その背景知識や思想性を語りつつ、ブランドの過去から未来へと続くヒストリーや物語を紡ぐというFashion Criticの重要性は彼女やSuzy Menkesといった批評家の文章に触れているとよく感じることですね。そういったものが無ければファッションは本当に上辺だけの軽薄なものになってしまうことは簡単に想像できます。

創作物のクリエイティビティとは第三者が創作物からその痕跡を観測して初めて発現するものであって、制作者の作為や意識された何かによって意図的に醸成され得るものでは無いことには注意が必要かなと思います。制作者が創作の現場において唯一できることは自分がつくろうとしているものに対してただ誠実であることだけであって、クリエイティヴであろうとしたり、何か格好をつけたりするという不純な考えは本当の意味での創作の現場においては存在し得ないということ。当然ではありますが、クオリティとは泥臭いことの積み重ねでしか担保できないということです。

そうして創作されたコレクションを観測者として、クリエイティビティの欠片のようなものをつぶさに観察し、その意味と感じた感覚の一つ一つを言葉に置き換えて詳述していくという作業。縦軸(ファッションやブランドの歴史と文脈など)や横軸(他のブランドや他の創作物など)の比較を通じて対象を浮き彫りにしていくといったことがファッション・ジャーナリストやエディターの役目になるかなと思います。今ではインターネットによって誰もが批評家のようになれてしまう時代ではありますが、多くのFashion Bloggerはただ単に可愛いやカッコいい/好き嫌いといったレベルでしか物事を語れないのが実状なので、専門知識を有したファッション・ライターの必要性はまだまだありますね。Suzy Menkesに関してはこちらの記事の中でOscar de la Rentaが「多くの批評家は自身の趣味をレビューにおいて切り離すことができないが、彼女(Suzy Menkes)は自身の好みをレビューのベースにおきません。」と話しているのが印象的です。

時に厳しいレビューをすることでショーに招待されなくなったりする訳ですが(Suzy MenkesとLVMHCathy HorynとGiorgio Armaniなど)、自身の好みでもブランドやデザイナーに媚びる訳でもなく、自分の言うべきことを自覚してそれらを発信していくという姿勢はビジネスとマーケティングが全盛の今の時代においては更に貴重になっていくような気がします。ただこれは、言うべき時に言うべき事を適切に言うことに価値があるという話であって、単に空気を読まない否定的なレビューに価値があるという話では無いですね。人間の感情の原理として否定と肯定では否定の方が相対的に表出し易いと思っているので、安易な否定的なレビューは読むに値しないと個人的には思っています。
コレクションレビューの公平性という観点からかはわかりませんが、前述のSuzy Menkesの記事の中で彼女はファッション・プレスの多くのメンバーと違い、ファッション・ハウスから贈られるギフトを受け取らないと書かれていますね。彼女はそれを「女の子は花束とチョコレート以外は受け取ってはダメなの、と信じるように育てられたから。」と話しているのが素敵です。

余談になりますが、コレクションレビューを好まないデザイナーという観点で言えば最近ではTom Fordが挙げられますね。彼がランウェイショーを行わずにエクスクルーシヴなプレゼンテーション形式でコレクションを発表していることの理由の一つにはレビューによって自身の作品を解体され、シーズン到来までに消費されたくないからということがあります。個人的にその気持ちは理解できますが、Tom Fordのコレクションはそこまで強度の低いものでは無いと思うので少し神経質過ぎるのでは?と感じますがどうでしょうか。

Hilary Alexanderの後任はThe TimesのLisa Armstrongと彼女の代理を務めるLuke Leitchとのことですが、二人がTelegraphで書き始める理由にはThe TimesのPaywall(課金の壁)が影響しているかも?といった指摘もあって、なるほどねといったところ。ヒラリーの後任を務めるのは大変だと思いますが、面白い文章を期待したいですね。

Fashion Criticの系譜に関して言えば、Suzy Menkesの前任者に当たるHebe DorseyやEugenia Sheppardといった偉大な批評家も忘れてはならないですね。スージーの後任の話も遅かれ早かれ出てくる話ではありますが、可能な限り面白い文章を書き続けて欲しいなと個人的には思っています。

Louis Vuitton Core Values Campaign feat. Angelina Jolie

Angelina JolieをフィーチャーしたLouis VuittonのCore Values CampaignのフォトがWWDで公開されていますね。
彼女の長男(Maddox)の故郷であるカンボジアで、自身の服を着て、ノーメイクで、自身の美しく使い込まれたAltoバッグを持って撮影を行ったようです。フォトグラファーはいつものようにAnnie Leibovitz。

水曜日にはティザーサイトがオープンし、今月後半には彼女のインタビューを公開するようですね。内容は、カンボジアへの彼女の訪問と第三世界の貧困に関する話のようです。ちなみにLouis Vuittonが契約のために彼女に支払ったと噂される数百万ドルは、チャリティーに寄付されているとのお話。

既にディスコンになっている撮影で使用されたAlto carryallは、re-editされるかもしれないようですね。

LADY DIOR AS SEEN BY

Peter Lindbergh

Nan Goldin

Patrick Demarchelier

Bruce Weber

Mikael Jansson

Craig McDean

Tim Walker

and more LADY DIOR Photography on ladydior-art.com

Tom Ford 11-12AW Collection Preview

Tom Fordの11-12AW Collectionのプレビューがオフィシャルサイトにアップされていますね。
レースなどの透け感のある素材使いにファーのボリュームなど、いずれのLookもシック且つセクシー。
ゼブラパターンはアクセントがあって良いです。

個人的にはランウェイショーが見たいのですが、Tom Fordはこのままずっとエクスクルーシヴな感じでいくのでしょうかね。

memorandum...

最近はセールのお知らせが届いたりして今シーズンもそろそろ終わりといったところですが、LUISAVIAROMAでは秋冬のアイテムが早くもアップされていたりしますね。

Franca Sozzani Hopes the Three Plus-Size Models on the Cover of Italian Vogue Make the Industry Reconsider Its Obsession With Teenagers
少し前から話題になっているItalian Vogueの6月号について。Franca SozzaniはBlogでもいろいろ書いていますね。
なぜスキニーモデルが今日の美しさのプロトタイプであり得るのか?、という議題は面白いテーマだと思います。

Riccardo Tisci interview by Donatella Versace - Interview Magazine
音楽に関する話題のところでドナテラが、「音楽が感情を喚起するように、衣服もそうすることができるのよ。」と話しているのが良いですね。ティッシの「愛している人に初めて会う時のような胸の高鳴り」という表現はわかりやすくも的確だなと。クリエイションにおける新鮮さという感覚はこの辺にある気がします。

Chanel Couture After Dark...
7月5日の22時からパリのGrand Palaisで行われる予定のChanel 11-12AW Couture Collection。
コレクションの内容もそうですが、ショーの演出も気になるところですね。

HIT AND MISS: Marion Cotillard
Marion CotillardはMiss DiorのADにも登場するのですね。

2011 CFDA Fashion Awards - Exclusive behind-the-scenes footage
Inez van Lamsweerde and Vinoodh Matadinによる撮影の舞台裏。映像が良い感じです。

Carine Roitfeld: Irreverent
Carine Roitfeldの自伝本がAmazon.co.jpでも予約できるようになっていますね。
10月4日発売。

Northern Women in CHANEL

スタイリストのIngela Klemetz-Faragoと彼女の夫でフォトグラファーのPeter FaragoによるChanelとのアート・プロジェクト。
Chanelのアーカイヴを使用してArctic plainsやAncient forestsなどで約300のLookを撮影した384ページのポートフォリオはノルディック・ビューティーをフィーチャーしたもの。Vogue.comによると出版される書籍の序文はKarl Lagerfeldが書いているようですね。収益の一部はSave the Childrenに寄付されるとのお話。

FARAGO PUBLISHINGのサイトによるとフィーチャーされているモデル45人は、

Freja Beha Erichsen, Helena Christensen, Filippa Hamilton, Louise Pedersen, Carmen Kass, Frida Gustavsson, Kirsi Pyrhonen, Suvi Koponen, Ginta Lapina, Edita Vilkeviciute, Siri Tollerod, Caroline Brasch Nielsen, Egle Tvirbutaite, Dorothea Barth Jorgensen, Giedre Dukauskaite, Agnete Hegelund, Amanda Norgaard, Julija Steponaviciute, Rasa Zukauskaite, Jenny Sinkaberg, Caroline Winberg, Sunniva Stordal, Elin Skoghagen, Josephine Skriver, Ieva Laguna, Inguna Butane, Dovile Virsilaite, Elsa Sylvan, Hanna Rundlof, Ilda Lindqvist, Johanna Jonsson, Julia Hafstrom, Linn Arvidsson, Linnea Regnander, Malin Persson, Katlin Aas, Kelli Lumi, Tiiu Kuik, Mimmi Soderstrom, Mona Johannesson, Sara Blomqvist, Theres Alexandersson, Vicky Andren, Sigrid Agren & Iselin Steiro

とのことで、エキシビジョンツアーは7月1日からストックホルムのFotografiskaで始まるようですね。