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Rick Owens 12SS Men's Collection

自身の最も反対側にあるファブリックであるシアサッカーにフォーカスを当てて行われたRick Owens 12SS Men's Collection。
いつものように彼がメンズウェアについて通常考える要素、高潔さや賢明さ、厳粛さといったものを宗教性を伴って表現し、今回はそこにフェミニティの要素がありましたね。

カラーパレットはブラック、ホワイト、グレーにベージュ。フロア丈のロングシルエットを描くジャケットとスカートによるフォーピース・スーツはドレープがフェミニンな空気を出しており、ドレスのようでもありました。ファブリックの表面積が増えるほど女性性が強調されていくのが面白いのですが、単純に可愛らしさへ着地しているのではなく、男性性の範囲内でそれらが機能しているのが何ともRick Owensらしいですね。直線的なカッティングが大胆な男性性を、ドレーピングが柔らかな女性性を表現し、それらが対等な位置関係で同居している感じが素晴らしい。彼のように同じサーキットを周回するタイプのデザイナーは新しさを見つけられず、反復的でロストしがちなのですが、自分のテリトリーの中で適切に新しさを探せているのが良いですね。

トレードマークのボリューミーなブーツはスニーカーのようなシルエット。リックはレースアップではなく、ジッパーを使うのですが今回もそうでしたね。Jim Jonesのようなカルトのリーダーであって欲しかった、とリックが話しているサングラスも存在感がありました。全体的にコレクションは仄かにマルジェラ・フィーリングが流れていたかなと思います。

tFSでは女性のパンツと男性のスカートを比較して議論がされているのですが、女性がスカートではなく、男性のようなパンツを穿くようになったことの歴史的な理由には実用性があったからであって、もし仮に世の中の男性のワードローブにスカートを加えることを目的とするならばプラクティカルな要素が必要になるだろうと書かれていますね。クリエイションの爆心地であるパリで提示されるデザイン案(草案)は不完全さと極端さを伴ったとても濃いものであって、それが世の中に溶け込んでソサエティに影響を与えていくには長い時間が掛かるものですが、そこにはリアリティと機能性が必要になるというのはその通りかなと思います。

via style.com wwd.com latimesblogs.latimes.com dazeddigital.com showstudio.com

posted by PFM