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Chanel 12SS Collection

Karl LagerfeldによるChanel 12SS Collectionは、Grand Palaisにフルホワイトの海底を出現させての開催。
Richard Wagnerの"Ride of the Valkyries"のMixと、Florence Welchのライヴによる"What The Water Gave Me"をサウンドトラックにセットして表現されたコレクションは、アクアティック・テーマによるもの。

今回のコレクションのテーマについてKarl Lagerfeldの説明によれば、「(表現において)特にマーメイドを避けました。第一の理由として、人魚は(現実に)存在しないから。インスピレーションは、もっと水中の植物や海草、魚といったものです。」とのこと。直接的で安易なマーメイドを表現として避けるというのが彼らしい選択ですね。そしてそれは、"Chanel makes clothes for daily life,"という発言もあったように、あくまでもChanelは地に足の着いたリアリティのある服を志向するということでもあります。

Coco ChanelのDNAであるパールをボタンやウエストチェーン、モデルの髪や背中にモチーフとして配置。真珠の虹色の光彩や海底に射す微光とその透明度といった光と水のアンサンブルをコレクションを構成する要素の一つとしていましたね。そして、構成要素のもう一つの重要な概念は、ファブリックの軽さの追求にあります。今回のコレクションのアイテムにはポリエステルを僅かにミックスしたり、ナイロンにグラスファイバーを加えたりと、無重力状態を目指すかのような服の軽さが追求されているようです。

ロングドレスは3Lookだけというコンパクトなコレクションは、シンプルなスカートスーツからスタートし、スクウェアなラインが描かれたミニドレスやプレーンなニットなどが登場。リラックス感のあるドロップショルダーのツィードジャケットにエメラルドとブルーのリフレクションが美しいノースリーブドレス、珊瑚を想起させる薄いピンクに貝殻や漂う海草をモチーフにしたドレス、スイムウェアにはトランスパレントなPVCジャケットを組み合わせ、魚のヒレのように薄く層をなしたオーガンザにミルフィーユドレス、後半のオーストリッチ・フェザーのドレスなどはドロップウエストになっているのが特徴的でしたね。
クラッチバックにも真珠や珊瑚、子安貝をモチーフにしていましたが、ジオメトリックな多角形を描くものやプレゼントボックスのようにラップされていたものもありました。靴に関してはフラットなメタリックシルバーのブーティーがメインに使われていましたが、レースアップサンダルの方が春夏っぽい雰囲気で良かったかなと思います。

Peter Philipsによる明るいアイシャドーと光を帯びたリップを特徴とするメイクアップはネオマーメイドとして女性を描いたもの。Sam McKnightによるウェッティーな質感のシニョン・ヘアスタイルは、海から上がったばかりの女性が指を彼女の髪に通すというアイデアを表現したもので、どちらも今回のあっさり目の服との相性は良かったですね。
モデルのキャスティングについては、今回もTaoが起用されていたのが気になったところでしょうか。

テーマがテーマだけに全体的に薄口な印象のコレクションではありましたが、こういうChanelも無くは無いかなと思います。Karl Lagerfeldはシャープさを伴ったクリエイションの方が得意なことは明白ですが、こうして新しいことを彼なりに探求し続ける姿勢は流石ですね。Chanelのデザイナーに就任してから30年近くが経過し、Chanelという枠組みの中で新しいことをすることは疾うの昔に難しくなっているはずですが、それでもなお、フロントラインで服をデザインし続けていることに改めて驚かされるかなと思います。
80以上のLookが提示された今回のコレクションを見ていると、彼にとって服をデザインするという行為は限りなく生理的欲求と近い場所に存在しているような気がしますね。

via style.com wwd.com vogue.com vogue.co.uk nytimes.com runway.blogs.nytimes.com fashionwiredaily.com showstudio.com tFS

posted by PFM