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Yves Saint Laurent 12-13AW Collection

Yves Saint Laurentでのスワンソング・コレクションとなったStefano Pilatiによる2012-13年秋冬コレクション。

モノトーンにワインレッドやビリジアンといった豊かで深みのある色味を加えた色彩設計。ショルダーにアクセントをおいたテーラリング・コンストラクションにブランドの美学としてのウエストベルト、精神性の強さを歌うチェーンメイルドレスにRobert Mapplethorpeを示唆するカラーリリーのフローラル・グラフィック、艶かしいレザーはアグレッシブなフェミニティを表現し、ジャンプスーツはドレスと共にダンスを踊る。ドレスはバックショットまでもが美しいですね。
モデルのリップにはブラッディなルージュを引き、それとは対照的に植物の葉をモチーフにしたシルバー・ジュエリーが強さの中にも女性らしさの光を射す。

どこまでもイヴの遺した経典に忠実な女性像は強度の高いシックさとスマートな上品さを持ち、すれ違った時に初めて気付くような北アフリカをルーツにした異国情緒の香りが微かに漂う。ヒストリカルでレジェンダリーな物語は、こうして今も現代の女性をエレガントに描くために紡がれ続けていく。

ピラーティが話すように、今回のコレクションは最後を彩るセレブレーションでも7年間の集大成的なコレクションでもなく、クリエイションの一つの通過点としてのコレクションでしたね。ビジネス的に言えば、Yves Saint Laurentをバッグと靴によって黒字化させることに成功したこのタイミングでのデザイナーの交代劇は何を意味するのか気になるところではあります。

ウィメンズの経験が無いHedi Slimaneに賭ける理由がイマイチ明確ではありませんが、エディとしてはシグネチャ・ブランドを立ち上げるよりもラグジュアリー・コングロマリットの巨大なシステムに再度取り込まれる方を選んだのはビジネスリスクが少ないからというのもあるのかなと思います。Tom FordがAndy Warholの絵を売ってファッションに投資したように、すべて自前で揃えるには多大な投資が必要ですし、彼にはDomenico De Soleのようなビジネスパートナーもいないので。もちろん、ムッシュ・サンローランへの敬慕の念があっただろうことは言うまでもありませんが。
また、LVMHではなく、PPRというのはBernard Arnaultへの当て付け?という見方も面白いですね。少し考え過ぎのような気もしますけれど・・笑。

話をピラーティに戻しますが、彼がフィナーレで受けたスタンディング・オベーションは正当なものだったかなと思います。新しいストーリーを創造するという部分がもっとあっても良かったかなと感じますが、高水準のアベレージを維持する安定した実力は彼の特筆すべき能力ですね。"I love fashion, I probably will love it forever,"ということなので今後もきっとどこかで彼の服を見ることができるかなと思いますが、動向は気になるところです。

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posted by PFM