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Comme des Garcons 12-13AW Collection

川久保玲によるComme des Garcons 2012-13年秋冬コレクション。
音の無い静寂の世界で行われたランウェイショーは、真空パックのようにフラット化し、エンボス加工されたモデルが描くAラインシルエットによって展開。彼女の言葉少ない説明によれば、今回のコレクションは"The future's in two dimensions"とのこと。
今回のディメンションに関するコレクションを見ていてぼんやりと考えたことは個人的にいくつかありますが、一つは何故かプロダクトデザインについてでしたね。

プロダクトデザインの世界においてプロダクトはその技術革新によって小型化とフラット化が同時に進行していく。デザインとはプロダクトの機能を人間の身体性に沿い近づけ、人間の五感の延長線上にその機能を接ぎ木させることで人間自体の機能拡張を目指すことがその目的の一つにある。人間の肉体が精神の入れ物であるようにハードウェアとは言わば機能の入れ物であってその本質はその外殻ではなく、その中身に存在する。つまり、良くデザインされたプロダクトとは人の目には見えず(意識されず)、その機能だけを人が自然に享受することができるものになる。それをファッションの世界に適用するとするならば、限りなく服が身体性と人間の五感に近づいていくことになり、服は服の存在自体を否定し、究極的には形を持たない「服ではない何か」になると言えるだろうか。
いつしか精神が肉体を離れるように、情報がデジタル化されることで物質上から開放されて世界に遍在できるように、服も服ではない何かになることによって初めて本来意味するものになれるのかもしれない。

一方、プロダクトやファッションが紙のように限りなくフラット化していくことは、それは全体としてデザインがグラフィックデザイン化していくということも表している。今回の川久保のコレクションは、色(柄)と形にフォーカスを当てたディメンションの揺らぎに関するものでしたが、文字通りのグラフィック化とは別に、グラフィックデザイン的な感受性が僅かながらあったような気がしますね。

また、今回のデザインに関して言えばフォルムが単純で空間がたくさんある場合、普通のつくり手はその空間に不安を感じて無駄に情報量を上げて誤魔化すものですが、そうしないのがまた彼女の面白いところだなと思います。未完成感や子供のラクガキのような穢れのないピュアなグラフィックを上手くコントロールできているのは流石といったところ。
多くのファッション・インサイダーがComme des Garconsのショーに招待されてその神託を得たいと思う気持ちがよくわかる、今回もそんなインスピレーショナルなコレクションだったかなと思います。

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posted by PFM