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Jil Sander 12-13AW Collection

Raf SimonsにとってJil Sanderでのラストコレクションとなった2012-13年秋冬コレクション。
彼の説明によれば、女性の家庭生活の日常とその美しさを描くことが今回のコレクションのフォーカス・ポイントだったようですね。

ラフの友人でアントワープのMark Colleによるラン、バラ、チューリップを用いたモダンなフラワー・アートをランウェイの上に飾り、ショーは静かにスタート。淡いピンクやベージュのロマンチックな色合い、重さを感じさせないオーバーサイズコートの柔らかいシルエット、胸元で優しくコートを押さえる女性の繊細な仕草、ドレスやコートとフレンドリーなランジェリーにジャンプスーツ、アシンメトリーなスカートの抑制のきいた表情、PVCファブリックの前衛的な響き。
朝の寝室のベットから夜のディナーに出掛けるまでの女性の日常をモーニング・ランジェリーからカクテルドレスといったLookでランウェイに表現していましたね。ランウェイを彩ったガーデン・フラワーは、モダンな住居のダイニングテーブルの上に飾られた切花のようにも見えたかなと思います。

過去三シーズンに渡って紡がれた「クチュール三部作」から蒸留された純度の高いミニマリズム、そして、これまでコレクションを積み重ねて深めた技巧のレベルと確固たるブランドの美学によって、ランジェリーやドレスとコートのロマンチシズムの揺らぎの中でミニマリズムはその過飽和点を超える。時代に限定されないモダニズムとインテリジェンスを持って描かれるフェミニティはどこまでも澄んだ穏やかさを持ち、比類なき優雅な美しさをピュアな女性の内面性に発芽させる。
ランウェイというキャンバスの上にデザイナーによって描かれるある種の理想形。ファッションというものの本質はその内面性にあることをいつも教えてくれるデザイナーの一人がJil SanderでのRaf Simonsでしたね。

旅路のクライマックスに相応しいコレクションと、フィナーレの後の鳴り止まないスタンディング・オベーション。2005年以降のJil Sanderでの密度の高い約7年間は彼にとって血よりも濃い関係性をブランドと、そして、そのファンとの間に築くには十分であった。Jil Sanderというブランドに出会えたRaf Simons、Raf Simonsというデザイナーに出会えたJil Sanderというブランド。過去の点と点を線で結んでみるならば、互いが共鳴し合いクリエイションを深めていくそのプロセスは相思相愛だったと誰もが認めるでしょう。

ブランドにはヒストリーがあり、ランウェイにはストーリーがあるように、ファッションにはいつの時代もドラマがある。別れというものはいつの時もビター・スウィートな瞬間であるが、神のいたずらとは面白いものでJil Sanderというブランドにはまた創業者によってその歴史を紡ぐというドラマが待っていた。こうしてこの世界はまた流転し続けていく。

Raf Simonsの今後はまだ正式発表されていませんが、今までJil Sanderでのステキなコレクションを観れたことは個人的にとても幸せに思います。レディスのコレクションに関して言えば、もう少し観ていたかった気もするのですけれど・・。
彼とJil Sanderの今後については、引き続き要注目といったところですね。

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posted by PFM