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L'amour Fou

Pierre BergeとYves saint Laurentのドキュメンタリー映画「L'amour Fou」が4月23日から公開されていますね。ベルジュがサンローランを支えていくという内容も面白かったのですが、個人的にはコレクションを重ねる毎に精神的に病んでいくサンローランを観ていて、クリエイションとはそういうものだよね、と相槌を打ちながら映画を観賞しました。

ファッションの世界に限らず、素晴らしいものをつくる人間は「追い詰められていく」というよりも、自ら自分をそういう環境下に置いて何かを生み出す傾向にあるかなと思います。クリエイションに対する誠実さとストイックさに比例して深く深く自分を追い込んでいき、その結果として作品が光り輝くということ。それはある種、神か悪魔と契約を交わすことであって、サンローランの場合は終わることなく繰り返されるコレクションの中で出口の無い暗いトンネルを孤独にどこまでも走り続けるという条件と引き換えにファッションに対する"insanity"が彼の中に宿り、素晴らしき作品が創造されたのだと思います。気の休まる時が年2回のコレクション発表後の数時間しかなかったという話がありましたが、彼が「生」というものを本当に感じることができた瞬間はそこしか無かったのだろうと想像することができますね。

多かれ少なかれ現代の最前線で活躍しているデザイナーも似たような状況下にあると思うのですが、創造というものを志す人間にとって人々からの賞賛や経済的な成功というものが救いにはなり得ないことを再認識させられます。創造というものに一度でも取り憑かれてしまうとそこから引き返すことができなくなってしまうということ。そういう意味で言えば、この映画はクリエイションの深淵を眺めることができる映画でもあったかなと思いますね。

posted by PFM