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WSJ Magazine e-mail interview with Rei Kawakubo

WSJ Magazineのサイトに川久保玲のメールインタビューがアップされていますね。
例によって面白いと思った部分のみピックアップして簡単に書いておきたいと思います。
詳細やカットしている部分(Dover Street Market関連の話など)は原文をご参照頂くということで。

WSJ MagazineのサイトではMarc JacobsとRobert Duffyの二人の関係についてのインタビューも面白かったので、気になる人は読んでみると良いかなと思います。

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従来からあるスタンダードな美しさに疑問を呈し、服をつくるというよりもアイデアを表現することに重きが置かれている川久保玲によるComme des Garcons。怒りや希望など、そのとき感じている様々な感情を表現したいという彼女のコレクションは、それ故に常にアブストラクトで多層的なものをその出発点にするという。特定の歴史や地理的なものをリファレンスとしないので、人々にとってComme des Garconsのコレクションはとてもコンセプチュアルなものに映る。

「私の仕事はアーティストとしてこれまでありませんでした。"クリエイションを伴うビジネスをする"ということだけを今までずっと続けるだけで、それは私の最初でただ唯一の重要な決定でした。そしてその決定とは、過去に存在しなかった何かをクリエイトすることであり、そうすることでそれはビジネスになることができるのです。私はビジネスウーマンであることとデザイナーであることを切り離すことができません。それは私にとって全く同一のものです。」
ビジネスとクリエイションの関係性についてそう語る彼女によれば、Comme des Garconsのビジネスを拡大するためには多くの戦略が必要であり、そして最も重要な戦略の1つは、新しいクリエイションと成り得るソースを見つけることにあるという。

H&Mとのコラボレーションの目的はComme des Garconsがどのようにマスマーケットに訴求できるかを見ることにあり、再びそれを行うことは無いが、しかし、それは大きな成功を収め、若い顧客に非常に人気を博すことができたと彼女は話す。そして、Junya Watanabeもそのような会社の拡張戦略の一部である、と。コラボレーションには他の誰かの仕事が自分の仕事と出会うときに化学反応が起こることを彼女は望んでおり、1+1が2以上にならなければコラボレーションは意味を持たないという。
事業戦略という点でCDG傘下にあるJunyaとTaoのコレクションには全面的に自由を与え、ショーの当日のみ彼らのコレクションを見ると話す彼女。CDGの価値については当人たちが心に留めるものであり、そこにはジュンヤとタオへの信頼があるという。

今日のファッションの状況について彼女は、「ファッションに対してエキサイティングさを感じません。人々が強さのある新しい服を必ずしも望むというわけではないことを心配しています。人々はチープでファストな服を望み、他の皆と同じような格好をして満足しています。創造の炎は少し冷たくなり、現状に変化とエネルギーをもたらす熱意と情熱を持った感情は弱まっています。しかし、私がファッションに関してまだ好きであることは、馬鹿馬鹿しい行為やオドケテ見せること、セレブリティ・デザイナーであることがファッションビジネスにおいて不可欠で必要な部分であるということです。そして、クリエイションを無くしてファッションは進歩することができないので、クリエイションは私を興奮させます。」と話す。

多種多様なビジネス・モデルは多種多様なニーズを満たすのに必要であり、我々には強い作品性を持った服からファストファッションまでの多くのものが必要であるが、ファッションの全てにおいて完全に民主化が進行するとするならば、そのデモクラタイゼーションによって起こりえることは最低限の同じようなファッションの標準化(lowest-common-denominator syndrome)であり、それは絶望的な状況であるとも言えるだろうか。

「新しい何かを見つけることを目的とし、それに取り組むプロセスは本当に厳しいものです。それは今まで常に厳しいものでした。人々が何かを与えられるのを感じるために、人々に何かを感じさせるためにクリエイトすることは非常に難しいです。それを目的とするならば、プレッシャーが激しいのは当然のことですけれど。」とクリエイションについて正直に話す彼女の言葉には、もの作りへの誠実さが伺える。

「ファッションとはあなたが身に付けることによって、そのインタラクションを通してその意味は生まれます。アートと違い、それを着ることなく意味を持つことはありません。人々が今それを着たいので、今それを買いたいので、それはファッションです。ファッションには(過去でも未来でもなく)今しかないのです。」という言葉にはファッションが時代の空気を反映するものであり、デザイナーとして、ビジネスウーマンとしての彼女の側面を見ることができると言えますね。

posted by PFM