This is Not here - *//LIKE TEARS IN RAIN

Marc Jacobs 13SS Collection

トライアングル形のステージをランウェイにして行われたMarc Jacobsによる2013年春夏コレクション。午後8時に始まったショーは、7分数秒という短い時間でフィナーレを迎えていましたね。Marc Jacobs曰く、「毎シーズン、ショーのスピード・レコードを破ることに挑戦し、理想を言えば、あなたが席に着く前にもう一回ショーを催したいね。」とのこと。

guardian.co.ukによれば、キャットウォークの速度を早くするというアイデアを初めて発明したのは今から65年前のChristian Diorまで遡ると言う。それまではモデルがパレードのように堂々としたウォーキングをすることが基本だったようですが、ムッシュ ディオールはそのスタイルを変え、よりきびきびしたウォーキングを発明したのだとか。その意図するところは、ショーのオーディエンスにもっと作品を見ることに集中して欲しかったからのようですね。
モデルの歩く速度が早くなると必然的に観衆は1つのLookさえも見逃さないように緊張感を持ってショーに集中することになる、というのは確かに理にかなったアイデアだと思います。今の時代のようにインターネットですべてのLookの写真とショー映像が繰り返し誰でも見れる時代ではなかった訳ですから。作品にもアウラというものが今よりも多くあった時代だったでしょうし。アウラに関しては、今でもFashion Weekのオフィシャル・スケジュールで行われる一回性を持った儀式としてのランウェイショーには多く存在すると個人的には思いますけれど、ね。

そんなマークの実験を含んだランウェイショーは60年代の空気をベースにしつつ、デッキチェア・ストライプやジラフ・プリントといった単純化されたパターン、クロップド・ミッキーマウス・セーターやシースルーシャツによるヘソ出しルック、そして、Cathy Horynが指摘するように90年代中盤のAlexander McQueenによる"bumster trousers"を想起させる腰履きされたプリーツ・スカートなどによって展開。イヴニング・パートではマイクロ・スパンコールによるオプアートドレスが登場していましたね。
Lookによって、とても短いサイハイ丈であったり、フロア丈であったりと緩急があったのも目を惹いた要素だったでしょうか。

目にインパクトを置いたFrancois NarsによるメイクアップとGuido Palauによる髪を横に流したレトロなヘアスタイルは、Edie Sedgwickをインスパイアしたもの。Marc Jacobsは否定したようですが、ヘアスタイルは少しだけAndy Warholのようにも見えましたね。

Cathy Horynが書くようにデザイナーには大別すると二つのタイプが存在する。一つはただただ美しいドレスをつくるタイプのデザイナー、もう一つは服に新しい意味や物語を吹き込もうとするタイプのデザイナー。もちろん、自分が興味があるのは後者のデザイナーであり、そういうタイプのデザイナーとは創作の延長線上に社会の変革を多かれ少なかれ意識をしている。
今回のマークのコレクションは、彼から"Young girls need to learn that sexiness isn't about being naked,"という説明があったように現代のセクシャリティに関するものでしたね。Marc Jacobsというデザイナーは新しい意味や物語を希求しつつも、トレンドの回遊性と回帰性を高める方向に行ってしまうことが多いかなと思います。Rachel Feinsteinが「毎回、カメレオンのように彼は趣向を変える。」という感想を述べたように、その様が大きな物語を構築するのを妨げていることは明白と言えるでしょう。Hamish Bowlesが彼のことを"Fashion Alchemist"と評していたのは色々な意味で納得できるレビューだったかなと思います。

via style.com wwd.com vogue.com nytimes.com fashionwiredaily.com tFS

posted by PFM