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How Zara Grew Into the World's Largest Fashion Retailer

Zaraなどを所有するスペインのInditex社に関するNYTimesの記事がとても面白かったので、いつものようにエディットして書いておきます(原文がかなり長いので結構な量になってしまいましたが・・)。今年、創業者兼CEOのAmancio Ortega GaonaはBloombergのBillionaires indexでWarren Buffettを抜いて世界第三位の資産家になったとのこと。

Inditex社は1年につき8億4000万着の衣類を生産して世界85カ国で約5,900のショップを持っており(つい最近では、ヨーロッパに約4,400のショップを持ち、スペイン単独で約2,000ある。)、Topshopを所有するイギリスのアルカディア・グループは約3,000、スウェーデンのH&Mは約2,500という順になっている。ファストファッションは基本的に最新のファッションを模倣して安価なバージョンのものをいち早く提供することが重要で、Inditex社の場合は週に2回の配送によってショップのアイテムが常にフレッシュな状態となっており、11日以内にすべてのストックが入れ替わるという。
Inditex社は派手なAD Campaignやハイブランド・デザイナーとのコラボレーションをするということをせず、Zaraのデザイナーは完全に匿名のままにされる。そのことをある人は、Zaraのデザイナーはデザイナーではなく、コピー機だから、と言ったりもする。

広告などに予算を使わない同社はマーケティングとして不動産に多額の投資を行う。PradaがGucciの隣に、GucciがPradaの隣にいたいように、ラグジュアリーブランドのリテール戦略はZaraのようなショップから距離を置こうとするが、Zaraの戦略は可能な限りラグジュアリーブランドのブティックに近い場所にショップを開くことにある。Inditex社は歴史ある建物や特別なビルにショップを開くことを好み、近年ではニューヨークの666 Fifth Avenueのロケーション(マンハッタンで一番高価だったビル)に3億2400万ドルを支払っている。

スペインが財政危機で苦しむ間、Inditex社は過去5年間で全体的な売上高を1年につき94億ユーロから138億ユーロに増大させ、利益を1年につき約20億ユーロにまで引き上げている。同社の広報責任者のJesus Echevarriaによれば、その成功の理由は常にカスタマーのリクエストが商品の生産を決定していることにあると言う。消費者の行動に適合させることができるビジネス・モデルは国家の財政危機を共有せずにいられる、と。
Inditex社のセールス・スタッフは売り場で消費者の反応をモニターし、消費者から各商品の好き嫌いのコメントを引き出すために訓練されている。ストア・マネージャーは毎日その情報を本部へと報告し、それがインハウス・デザイナーの巨大なチームへと渡される。そして、素早く新しい商品がデザインされ、工場へと送られて即座に生産が行われる。

ロンドンのTank MagazineのMasoud Golsorkhiによれば、Zaraはファッション業界の100年続いていた年2回のファッションサイクル(春夏と秋冬という年2回のコレクションサイクル)というものを解体したのだという。現在のラグジュアリーブランドは年2回ではなく、年に4から6回のコレクションを発表しているがこれはZaraなどのファストファッションの影響が強いとのこと。11日間でショップのアイテムが入れ替わるファストファッションのようにラグジュアリーブランドも年に複数回のコレクションを発表することでブティックのアイテムの入れ替わる速度を上げ、顧客にブティックに足を運んでもらう機会を増やし、その時にしか買えないという状況を意図的につくり出すことで衝動買いを促そうとしている、というのは確かにそう考えることもできるだろうか。

Zara本部のリージョナル・セールス・マネージャーは、世界各地から日々送られてくる商品発注からそれが世界的な流行の傾向であるかどうかを探る。例えば、「顧客が赤いトラウザーを求めている。」というリクエストがイスタンブールとニューヨーク及び、東京の各ショップからあったとすればそれは世界的なトレンドを意味するので、彼らはより赤いトラウザーを生産するのだと言う。ファッションに関して、国籍や住む地域が異なれば流行や好むテイストも異なるという意見は一見正しいように思えるが、現実はそうでは無くなりつつある。
ブラジリアン・ガールが鮮やかな色を好み、パリジャンがより黒を多く使うというような違いはあるが、一般化すればファッション・トレンドというものはグローバルなのだと言う。そして、ニューヨークの5番街と東京の銀座、SoHoと渋谷のように各国の各地域はトレンドを互いに共有しつつ、更に、ZaraとZara Kidsのように子供のためのトレンドは大人と同じことを意味するのだとか。

Inditex社は他のデザイナーのデザインをコピーしていることを否定している。Christian Louboutinがレッド・ソール訴訟において負けたように、彼らは著作権法の網をくぐるのに十分な程度デザインに変更を加えている。ラグジュアリーブランドにとって彼らはコピーキャットでしかないが、ラグジュアリーブランドも互いにコピーを行うことがあるので、結局は誰も独創的では無いという結論になり、この問題提起自体が無効化される。H&Mは最新のトレンドを模倣しつつも有名なファッション・デザイナーのオリジナルコレクションを提供するが、Inditex社はそれを行う必要が無いことを発見した。

コロンビア・ビジネス・スクール教授のNelson Fraimanによれば、Inditex社が行ったことはプロダクト・イノベーションではなく、プロセス・イノベーションなのだという。しかし、スペインのLa Corunaにある工場やヨーロッパに集中するロジスティックスは同社の拡大戦略に脅威をもたらす。

世界中で多くのショップをオープンさせる予定を持つ同社は、アメリカでは45のショップしかオープンさせる予定を持っていない。マドリードにあるI.E.S.E.ビジネススクールのJose Luis Nuenoが指摘するように、Laura Ashleyが閉店し、Benettonでさえも下落傾向にあるアメリカはヨーロピアン・リテーラーの墓場と言われている。人里離れた場所にショッピングセンターがあるアメリカはとても複雑で、ファッショニスタたちは東/西海岸に面して住み、その他の人たちはGapとWalmart、T.J.Maxxの服を着る。もし本気でアメリカをカバーしたいのであれば300のショップをオープンさせることが必要であり、すべてのエネルギーをそこに集中させなければならない。
更に、アメリカには服のサイジングの微妙な問題もある。Zaraはヨーロピアン・スタイルのためのヨーロピアン・ストアであり、アメリカ人のサイズにそのままではフィットしないという問題を抱える。そしてそれは、より大きいサイズの服を生産しなければならないことを意味し、そのまま生産の複雑化に直結する。

翻って、中国において同社は400以上のショップをオープンさせる計画を持つ。"Overdressed: The Shockingly High Cost of Cheap Fashion,"の著者のElizabeth Clineによれば、アメリカ人は1年につき200億着の衣類を買い、平均すると一人当たり64アイテムになるいう。中国人が同じ割合で服を買うとすれば、1年につき800億着以上の衣類が必要になることになる。

Tシャツの価格が200ユーロだろうと1ユーロだろうと1着のTシャツを生産するには700ガロンの水が必要であり、それは地球にとって同一の負荷が掛かる。過去、我々は1年につき3着のTシャツがあれば満足できたがファストファッションのある今日では30着を必要とする。時々、それらは洗濯をするよりも使い捨てた方が安いことがあるが、そういう状況は間違いでなければならない。地球の資源はファストファッションの持続可能性を担保しないため、London College of FashionのAlex McIntosh曰く、それはとても脆弱なビジネスモデルなのだと。
長期的に見れば、そういった状況において生産コストはより増大し、低価格をウリにしてきた企業たちはその追加コストを吸収するためのマージンを持っていないため、消費者に更に多くの服の消費を求める必要に迫られるという。現在のファストファッションという業態の好調振りがいつまで続くのか?という話は以前から言われていることだが、今後も引き続き気になるところと言えるだろうか。

posted by PFM