This is Not here - *//LIKE TEARS IN RAIN

Christian Dior 13SS Haute Couture Collection

夏季休暇中に読んだというChristian Diorの自叙伝に書かれていたムッシュ・ディオールの庭に咲く花や植物への愛情が今回のコレクションの端緒になったというRaf SimonsによるChristian Dior 2013年春夏オートクチュールコレクション。
チュイルリー公園の特設テントのランウェイには、ベルギーのランドスケープ・アーキテクトであるJacques Wirtzの息子のMartin Wirtzによるガーデン(庭)をセットしての開催となりましたね。

"the very idea of spring,"というラフの発言があったように、「春」が表現されるランウェイショーは穏やかな色と柔らかい光に溢れたフレッシュなコレクションとして進行していく。ベビーブルーのビスチェドレスにバー・ジャケットのセットアップスーツ、アシンメトリーのLBDに花弁があしらわれたストラップレス・ドレス、バルーンドレスには多くの花が咲き、花や植物の造形と色が無限のインスピレーションを服たちに与える。ランウェイ終盤にはStephen Jonesによるボンネットと共にスプリング・ブライド(春の花嫁)の輝きがLookとして表現されていましたね。
多くのドレスで目を惹く要素となっていたビーズ、スパンコール、シルクやオーガンザを用いた(立体)刺繍は、昨年7月にDior社が買収をした歴史ある刺繍アトリエの"Vermont"(1950年代にJean Guy Vermontによって創立される)によるもの。その伝統と技術を保護することを目的としたアトリエの買収は、Chanelが"Paraffection"プロジェクトによって実現していることであり、Diorも同じような動きを見せているのはとても興味深いことですね。

ドレスがフェミニンな趣きを見せるのとは対照的にボーイッシュなヘアスタイルはGuido Palauによるもの。Hamish BowlesはJean Sebergと評していましたが、ラフとしてはAudrey Hepburnがインスピレーションソースの一つとしてあったようです。
そして、Pat McGrathによるメイクアップは、スワロフスキー・クリスタルを散りばめたリップがとてもインパクトがありましたね。

彼がChristian Diorのデザイナーに就任し、上手く力を発揮するには数シーズン掛かるかなと個人的に思っていましたが、現時点で既にかなりの完成度であることは間違いないですね。アトリエの職人たちとのコミュニケーションも作品を見れば上手くいっているのが何となく分かる感じでしょうか。
モダニズムとロマンチシズムを両輪としたミニマリズムによって知的な女性を描くRaf Simonsのクリエイションは、オートクチュールにも多くのリアリティを齎しますが、そのリアリティとは現実の世界で着用できるという文字通りの意味と、これが2013年のChristian Diorのオートクチュールコレクションであるという確かな説得力の2つの意味を有しているかなと思います。時代の空気とメゾンの歴史に沿った説得力のあるクリエイションを実現できるのは、創り手のヴィジョンとテクニックが高い次元で存在していることの証左であると言えますね。

via style.com wwd.com vogue.com nytimes.com dazeddigital.com tFS

posted by PFM