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Dior homme 2014-15 Winter Collection

Tennis Club de Parisにパーケットのランウェイを設置して行われたKris Van AsscheによるDior homme 2014-15 Winter Collection。Front Rowの各シートにはインヴィテーションにもコラージュされていたスズランの花が置かれていたようです。

胸ポケットにスズランの刺繍やブローチがあしらわれたピンストライプのスリーピース・スーツ、13SSコレクションのメタルボタンにも使われていたクレストを用いたチャーム付きのピンホールカラー・シャツ、ジャケットやタイにはスズラン、スター、ハートのアイコンと"30 AVENUE MONTAIGNE"、"CD"といった文字がタイポグラフィされたラインが走る。

ポルカドットやスターを点在させたセットアップ・スーツやシューズ、ロング丈のファー・コート、ムートン・レザー、アメカジ色の強いブルー・デニム、ランニングシューズ、6ポケット・ブルゾンにカーキ色のミリタリー・エレメントなど。ランウェイショーは進行するにつれ、フォーマルの中にインフォーマルな要素を侵入させていくことで多様性を企図していましたね。クリスによれば、"imposing more variety"とのことで、多様性はオータムコレクションから継続のようです。多様性について彼は、「(コレクションには)一つのタイプの男性像ではなく、多くがあります。」「これはクローン(人間)であるということよりも、個々人の個性についてです。」と話していますね。
しかしながら、いつものようにテーラリングのクオリティの高さとそれ以外の要素とのアンバランスさが気になったかなと思います。デニムの使い方は全体的にもう少し研究が必要な感じでしょうか。前任者であるHedi Slimaneや他ブランドのような安易な使い方はしないという彼の姿勢は好きですけれど。ドロップショルダーのオーバーサイズコートは引き続きの提案でしたね。

フォーマルなものにインフォーマルな要素を加えるように、ある要素の中に違う要素を加え、化学反応を起こさせることでエネルギーをそこから取り出すという手法はクリエイションにおいて(使い古された手法ですが)ベターな方法と言える。クリエイションとは速度では無く、加速度であり、加速の際に感じるグラヴィティや化学反応の際に生じる熱量の総和を意味として包摂する。デザイナーは確実なものを不確実なものにし、安定しているものを不安定なものに意図的に撹拌を起こさせる。

安定は我々にルールや秩序、平和を齎すが、いつしかそれは「退屈さ」を惹起するようになる。線形を描く安定した世界は未来を計算可能で推測可能なものにするが、現代社会の高速クルーズの中で昨日と同じ今日が過ぎ、今日と同じ明日が訪れる状況下において我々がその先に希望を感じ取ることは甚だ難しい。多忙で平坦な日々は感情をフラットにし、先の見えた未来の中で人が輝きを帯びて生きることは困難であって、そして、自分の意思とは無関係に肉体は齢を重ね、いつか必ずこの世界から去らねばならぬ瞬間が万人に平等に訪れるという人生の有限性は生きる意味への疑問を加速させる。

ランウェイショーにおいてしばしば青春期のモデルが起用されるのは、未だ何者でもない若者(つまり、何者にでもなることができる若者)が秘める可能性への言及であり、デザイナー自身の作品とこの世界の可能性というフレーミングを孕む。ファッションに限らずモノを生み出そうとする人種は、世界が今とは別の世界で有り得たかもしれないということを夢想し、その可能性の総体とその中心を描こうとする者たちでもある。携帯電話や車といったインダストリアルデザインから電車の窓の外を流れる風景、そして、街行く男性や女性は今よりももっと美しく有り得たのではないか、と。

クリスがInstagramで種明かしをしていましたが、今回のコレクションのピンストライプ・テーラリングはムッシュ ディオールが着ていたサヴィル・ロウのスーツに、モチーフとして用いられていたスズランやスターといった記号はムッシュが愛したガーデンや熱心であった占星術などに由来するものですね。Tim Blanksがレビューしているように、Raf SimonsがChristian Diorのアーティスティック・ディレクターに就任したことにより、コレクションのインスピレーションソースはムッシュ ディオールを源流とするメゾンの神話へと回帰しましたが、それに呼応するようにKris Van AsscheによるDior hommeもChristian Diorのメンズウェアラインとしてムッシュ自身へと回帰したというのが面白かったかなと思います。

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