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Christian Dior 16SS Haute Couture Collection

Raf Simonsがアーティスティック・ディレクターを辞任してから初となったChristian Dior 2016年春夏オートクチュールコレクション。スタジオ・ディレクターのSerge RuffieuxとLucie Meierが中心となって制作されたコレクションのタイトルは、"Couture's new realism"。

16年プレフォールもそうでしたが、基本的にラフがDiorに築いたミニマリズムを踏襲してのコレクションとなりましたね。John Gallianoが馘首された後、Bill Gayttenがガリアーノの方向性を踏襲してコレクションを行っていたのが思い出されます。ガリアーノの豪華絢爛な方向性を踏襲したBill Gayttenのコレクションは情報量が多く、ある意味でクオリティを誤魔化せていた部分があったと感じるのですが、ラフのミニマリズムを踏襲したコレクションではボリューム等での誤魔化しが効かないため、そのままストレートに創り手の力量が出てしまいますね。今回のコレクションのアイデアの一つにネックラインで遊ぶというのがありましたが、全体的にアンバランスで収まりが悪く、機能しているとは言い難かったと思います。

プレフォールも今回のクチュールも個人的な印象は切れ味がとても鈍いということに尽きます。そして、全体は偏りが少なく、平均的ではありますが、それであるが故にクリエイティビティやディレクションが欠けている印象を与えますね。淡い抽象絵画のようなぼやけた輪郭は、服も描かれる女性像もどこか没個性的でアノニマスな香りを帯びてしまいます。

正式なデザイナーが決まるまでの過渡期においては、今までの文脈から外れた個性的なコレクションを発表することができないという縛りもあるのでしょう。ただ、前述のようにラフが遺したミニマリズムをベースとしたリアリティに軸足を置いたクリエイション領域においてクオリティを出すためには、かなりの技術とセンスや経験が必要であることが分かります。今後、2人のヘッド・デザイナーとアトリエの職人たちの呼吸がもっと合うようになればクオリティは上がって行くとは思いますが、このままの方向性で続けるのか、それとも少しずつ変化を付けていくのか、にもよるのかなと思います。

John Gallianoの壮大な世界観から、Raf Simonsのモダンなミニマリズムへの転回。そして、その先を描くことになるデザイナーは余程の強度ある美学を持っていなければならないということを考えさせられたコレクションだったでしょうか。

via dior.com vogue.com wwd.com