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Cultural Appropriation

Johnny DeppをフィーチャーしたDiorのメンズフレグランス"Sauvage"において、ネイティヴ・アメリカンのダンサーを起用した最新キャンペーンが「文化の盗用」として非難を浴びているようですね。結果、金曜にSNSに投稿したキャンペーンの投稿を数時間で削除することになったとのこと。

BoFで書かれているように、Diorは2018年11月に展開した2019年クルーズコレクションのキャンペーンにおいても、メキシコをテーマとしたコレクションにも関わらず、非メキシコ人のJennifer Lawrenceをフィーチャーしたことで非難を浴び、また、今年4月にモロッコのマラケシュで行われた2020年クルーズコレクションでは、アフリカの植民地支配の歴史からコレクションが文化の収奪として非難を浴びています。

2020年クルーズコレクションに関しては、Vanessa Friedmanが指摘するようにMaria Grazia Chiuriは文化の盗用のリスクを事前に理解しており、そのエクスキューズとして、ファブリックとしてアフリカンワックスを用いるためにUniwaxと、他にもイギリス人の母とジャマイカ人の父を持つイギリス人デザイナーのGrace Wales Bonner、アフリカ系アメリカ人であるアーティストのMickalene Thomas、そして、アフリカ人デザイナーのPathe Ouedraogoとコラボレーションを行い、Dior側の一方的な解釈にならないように配慮をしています。ただし、アフリカンワックスの歴史にもいろいろと問題が内包されていますが。

そもそもChanelやDiorがクルーズやプレフォールにおいて、世界各国の都市と文化に共鳴したコレクションを発表するのは近年の状況を考慮するとかなりハイリスクと言えるでしょうか。"Cultural Appropriation"をGoogle Trendsで調べてみると分かりますが、このキーワードは2013年頃から徐々に検索ボリュームが増加し始め、年々人々の関心を集めていることが分かります。ちなみに、tFSには2011年に立ったスレッドがあったりしますね。
こういった現状を踏まえると、世界中を飛び回ってコレクションを開催する行為は文化を収奪するために世界中を飛び回っていると受け止められてしまうリスクがあるでしょう。クリエイションは時代と共に変化することが求められますが、こういった部分も再考すべき時期に来ているのかもしれません。

話を戻して今回の"Sauvage"の件ですが、ネイティヴ・アメリカンというのはそもそも可燃性が高く、Victoria's SecretのショーやChanelも2013年12月にアメリカのダラスで行われた2014年メティエダールコレクションにおいてネイティヴ・アメリカンのヘッドドレスを用いて物議を醸し、謝罪しています。
"Sauvage"のキャンペーンに際し、ネイティヴ・アメリカンの権利の保護と促進を目的としたAmericans For Indian Opportunityと協力したというエクスキューズがあったようですが、結局は受け手側にその論理は通用しなかったようです。

Vanessa Friedmanが昨年末に書いているように、ファッション業界のスピードは年々早くなっており、新しいものを今すぐマーケットに投入しなければならないプレッシャーやコレクションをハイペースで回していく必要があるため、こういった問題に対するチェック機能がファッションハウス内に存在したとしても機能し辛い傾向があるでしょう。

文化の盗用での炎上を機に、H&MはCDO(Chief Diversity Officer)を新しく雇ったようですが、それは単なる対症療法という意見には同意ですね。解決策についてはいろいろと議論がされていたりしますが、現時点では着地点が見えず、そう簡単に解決される問題ではないことが分かります。
Vanessa Friedmanが言うように、それはビジネス、企業、クリエイティヴのあらゆるレベルで対応が必要な問題であり、誰か個人の仕事なのではなく、全員の仕事の一部という意識が必要であることに疑いはありませんね。

posted by PFM