This is Not here - *//LIKE TEARS IN RAIN

Creative works beginning to be influenced by generative A.I.

画像は、Stable Diffusionで生成したChanelをイメージした架空のコレクション。
どこかで見たことあるような、無いような。でも、やっぱりどこかで見たことあるような、そんな感じになっているかなと。

ハイファッションの世界のような洗練と純化されたイメージは、元々CGやAI画像と相性は良いんですよね。

AIによって生成されたアートが既にクリエイティブワークに変化を起こし始めているという記事がNYTimesに出ていましたね。
AIとオートメーションによって反復的な肉体労働を伴うブルーカラー労働者がその職を失うというのがAI脅威論の広く流布されたイメージでしたが、クリエイティブクラスにその波が予想外に来ている、と。

GPT-3といったAIによるテキスト生成ツールを端緒に、画像を生成するDALL-E 2、Midjourney、Stable Diffusionと続き、現在は音楽や映像にまで"generative A.I."の波が押し寄せようとしている状況にあります。現時点でDALL-E 2は150万人を超えるユーザーがおり、毎日200万枚を超える画像を生成。Midjourneyは公式Discordサーバに300万人を超えるメンバーが登録しています。

"generative A.I."が変化を齎しているクリエイティブワークとして、"Twofer Goofer"を制作しているブルックリンのゲームデザイナーであるCollin Waldochの例では、人間のアーティストを雇う予算のない小規模プロジェクトではAIによるイメージ生成は有効であると説明されています。最初から人間のアーティストを雇う想定がなかったプロジェクトであれば、AIを使っても誰かの仕事を奪うということにはならないということ。これが意味するのは、AIがクリエイティブ業界全体の底上げに寄与するということですね。

サンフランシスコのインテリアデザイナーであるIsabella Orsiは、オフィスや自分の部屋の画像をアップロードしていろいろな雰囲気のインテリアイメージを生成することができる"Interior AI"を用いてクライアントにモックを作成したとのこと。AIはプロジェクトの初期段階でのアイデア出しに役立つと話しており、誰かがレンダリング画像の良し悪しを見分ける必要があるため、結局、AIが発達したとしてもデザイナーは必要になると話しています。

"Westworld"等で知られるシドニーに住むフィルムメーカーのPatrick Clair。いつも彼はコンセプトアートの情報源としてGetty Imagesを使っていたが、DALL-E 2を用いて生成した大理石像は自分が欲しかったイメージにGetty Imagesよりも近かったとのこと。AIはコンセプトアーティストを置き換えたり、ハリウッドの特殊効果の魔法使いを解雇したりするのではなく、全ての映画製作者のツールキットの一部になるだけと話しています。
「電卓が暗算ではできない方法で数字を処理することができるのと同じように、Photoshopは手ではできないことを行うことができます。しかし、Photoshopは決してあなたを驚かせることはありません。」「一方、DALL-Eは、真に創造的なもの持って帰って来てあなたを驚かせます。」

ニューヨークの広告代理店"Wunderman Thompson"のエグゼクティブであるJason Carmelは、クリエイティブなブレストにおいてAIが役に立つのではないかと話しています。そして、AIが全ての広告代理店のクリエイティブプロセスの一部になると予想しつつも、それによって代理店の作業が大幅にスピードアップしたり、アート部門を置き換えたりするとは考えていないとのこと。
AIが生成した画像の多くはクライアントに見せるには不十分な品質であり、正しいプロンプトを定めるには多くの時間を浪費する。あくまでもAIは、スケッチツールである、と。

ロンドンのサービスデザイナーであるSarah Drummondは、改善しようとしているカスタマープロセスを視覚的に表す「店舗のレジに並ぶ顧客たち」といったモノクロのスケッチにAIを使い始めているとのこと。"blob drawings"と呼ばれる手作業に何時間も費やす代わりに、DALL-E 2やMidjourneyを用いて彼女は画像を生成しています。ただ、AIは複雑なスケッチや同じキャラクターで複数枚の画像を作成するのが苦手である、と。
他のクリエイティブ・プロフェッショナルと同様に、AIが人間のイラストレーターを置き換えるとは彼女も考えていません。あくまでもAIはヴィジュアルデザイナー、建築家、都市プランナーといった、あらゆる種類のデザイナーがあるフェーズで行う描き捨てるようなスケッチ(ラフなスケッチ)のためのもの。つまり、AIはスケッチツールと彼女も言う。

このように欧米では"generative A.I."が多くの分野に侵入し始めている状況のようで、日本国内もこの流れになるのは必定と言えるでしょう。そして、いずれの話も「現時点でのAIの役割」を説明しているに過ぎないですね。クリエイティブワークの初期から中間までの生成物はAIで、最終成果物は人間が仕上げるという役割分担の割合も技術の進化でどんどんと変わっていくことが予想されます。既にAIで生成した画像がアートフェアで賞を受賞するに至っているので。2人の審査員はMidjourneyがAIであることを知らなかったとのことですが、もし知っていたとしても賞を授与したと話しているのは面白いですね。

先週の月曜日にサンフランシスコで行われた(オープンソースでStable Diffusionをリリースした)Stability AI社の1億100万ドルの資金調達を祝うパーティーには、Googleの共同創業者であるSergey BrinやAngelListのNaval Ravikant、エンジェル投資家のRon Conwayらが集まったとのこと。

英国出身のStability AIのファウンダーでCEOのEmad Mostaqueは、オックスフォード大学で数学とコンピューターサイエンスの修士課程を修了したあと、コンサルファームのアナリストやヘッジファンドマネージャー等の経験を経てStability AIの設立に至ります。ソフトウェアエンジニアとしては大学卒業後にMetaswitch Networks社で1年程度あるようですが、大部分はコンサルや投資家としてキャリアを積んできた人物のようです。

彼は一部の企業がAI技術を独占することに反対し、他とは異なり、オープンソースでStable Diffusionをリリースしたのが大きいですね。パーティーでもGoogleとFacebookのターゲット広告を"manipulative technology"として非難し(Sergey Brinがいるのにもかかわらず。)、Stability AIは「パノプティコン」を構築しないと述べたようです。

人々とコミュニティを信頼し、透明性に価値を置き、民主化を進めることである種のユートピアを実現しようとするその行為。
過去に何度か耳にしたフレーズのような気がしますが、AIの進化がクリエイティブワークを含めた産業全般に及ぼす影響というのは今後の気になるトピックの1つになるでしょうね。

posted by PFM