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From Greenwashing and Greenhushing to Vegan Leather

過去10年間に渡ってH&Mが地球環境に配慮した製品を"Conscious"コレクションとして展開してきましたが、当局によるグリーンウォッシングの取り締まりの強化の影響で製品を撤去したとBoFで書かれていますね。

ここ数年、蔓延している曖昧で根拠のない誤解を招くようなサステナビリティ等を謳ったエコ・マーケティングは、終わりを迎えようとしている。英国のAsosとBoohooは、実際よりもエコ・フレンドリーであるかのように見せかけるマーケティングを行ったとして調査を受けており、また、H&Mは米国で集団訴訟に直面しています。

過去5年間、ラグジュアリー・コングロマリットであるKeringのFrancois-Henri Pinaultは、自社ブランドとサプライヤーに対して"inherent to luxury."と呼ばれるサステナビリティに沿った原材料の調達と製造のベストプラクティスへと導く基準を発表しています。これはブランドからの要望の高まりに応えるとともに、ヨーロッパで進む規制の波に先行することを意図したものです。

よりエシカルで環境に配慮した製品を求める消費者の需要がエコ・マーケティングに拍車をかけているとの指摘がありますが、それが実際の消費者の購買行動を必ずしも反映しているとは言えないのが現状です。つまり、エコ・マーケティングは想像よりもビジネスに繋がり辛い。そのため、当局による規制の強化によってエコ・マーケティングにリスクが高まるのならば、グリーンハッシング(企業が環境に配慮した製品かどうかを公表せず、黙ったままにする行為。)を企業が行うようになり、本質的なサステナビリティへの貢献からは逆に遠ざかってしまう可能性があります。

同様の話題として"Vegan Leather"の問題があります。「ヴィーガン」や「植物性由来」といったマーケティング用語で宣伝される製品は、実際は組成が想像とは大きく異なる場合があります。

現在、市場に出回っているレザーの代替品の大半は従来の合成樹脂のバリエーションに過ぎません。Z世代に人気のTelfarの"Bushwick Birkin"もポリエステルとポリウレタンのブレンドであり、Stella McCartneyのようなリアルレザーを一切使用しないブランドにも当てはまります。McCartneyは石油由来の合成繊維をヴィーガン素材としてリブランドすることに貢献しましたが、同ブランドは他の選択肢を模索しています。

Stella McCartneyだけでなく、PangaiaやRalph Laurenとも協業している米国のNatural Fiber Welding社による石油由来ではない植物由来の代替レザー"Mirum"。既にStella McCartneyの製品で使われている米国のBolt Threads社による茸の菌糸体からつくられた代替レザーの"Mylo"。イタリアのSqim社も同じく茸の菌糸体からつくられた代替レザーの"Ephea"を開発しており、Balenciagaの2022-23AWコレクションで発表されたフルレングスコートで使われています。

ただし、現状、これらの素材が利用できる製品は限られており、また、これらのカテゴリ内でも素材と特性にばらつきがあります。"Mylo"は菌糸体と植物由来の繊維を混合し、水性ポリウレタンで仕上げたものであり、"Ephea"はグリーンケミストリーを用いて安定化させた純粋な菌糸体です。

マーケティングとして顧客にこれらの複雑な素材を説明し、訴求する方法はとても難しく、前述のグリーンウォッシングのエコ・マーケティング問題と絡んできます。

現時点での結論としては、企業がグリーン・クレームに実際に沿っているかどうかを裏付ける客観的な統一基準が生まれない限り、当局からの風当たりは強いままになるということ。誰がどのように統一基準を定め、その基準の達成を誰もが検証可能な状態にするトレーサビリティと透明性の確保。そういったことが実現されてはじめて空虚なエコ・マーケティングではなく、本質的なサステナビリティは実現されると言えるでしょうか。

posted by PFM