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Does Twitter as a Rich Media Platform Dream of Personalization?

Twitterは速報性をコアにしたフロー型のアテンション・メディアであり、ユーザーをどこかのWebサイトやコンテンツに誘導するという役割や簡易なコミュニケーションを得意としたメディアでした。Twitterのタイムラインは、即時的な言葉の破片をノーコンテクストに滝のように流し続けます。

従業員との約1時間行われたQ&AセッションにおいてElon Muskは、Twitterへの決済や送金機能等の導入を検討していると話しており、既に決済業務を行うための事前申請を米国のFinCENに書類を提出しているとのこと。これはクリエイターがコンテンツをTwitter上でマネタイズすることができるようになるという話とも繋がり、また、WeChatのようにメッセージングからコンテンツの消費、決済まで、日常生活に必要な多くの機能を統合したスーパーアプリ化構想の一端であると言えます。

フロー型のメディアがその速度を落とすことなく、コンテンツのストックとマネタイズ機能を兼ね備えることができるのかは、根本的なサービスの設計思想から再考が必要になります。また、マスクが話しているようにクリエイターの収益の取り分を増やすのみで、クリエイターがコンテンツのアップロード先をYouTube等の既存のストック型サービスからTwitterに変更してくれるかは未知数です。

そもそもクリエイターはユーザーとの関係性によって既存サービスにロックインされており、コンテンツもYouTubeではミッドロール広告を意識して動画が8分程度の長さになっている等、そのサービスのアーキテクチャに依存したつくりをしています。ユーザーも既存サービスでは自分の趣味趣向が既に学習されているため、パーソナライズ化が実現されており、Twitterが新しくリッチメディアのコンテンツプラットフォームを開始したとしてもコンテンツの乏しさとユーザーの趣味趣向の未学習による貧弱なパーソナライゼーションに苦しむことになります(リッチメディアのコンテンツプラットフォームにはCDNを含むストレージや転送量という問題もありますが。)。

以前から個人的に思っているのは、Blog記事をXMLでエクスポートできるように、自分のパーソナライゼーションデータを既存サービスからエクスポート(ckptファイルやdiffusersモデルのように。)できて、他のサービスに移行可能にして欲しいというのはあります。これはAmazon等のECサイトのパーソナライゼーションデータにも言えますし、SpotifyからApple Musicに音楽サービスを変更するといった時も自分の趣味趣向データを移行できたら便利というのはあります。AIでは学習モデルが重要になっているように、パーソナライゼーションデータは個人資産として保持できる方がこれからの時代にはフィットしているのではないでしょうか。

マスクと従業員とのQ&Aセッションの中で、ホームタイムラインではユーザーの意図を把握するのが難しいと従業員が話している箇所があります。
YouTubeやAmazon等の既存サービスでは、ユーザーは自分が見たい動画や商品を一覧ページから選択し、詳細ページへ遷移して閲覧、または、購入に至ります。動画であれば最後まで閲覧されたか、途中で離脱をしたか、商品であればカートに入れたか、購入されたか、といったことからユーザーの趣味趣向の深さを推測することができます(もちろん、キーワード検索や過去の閲覧履歴等、ユーザーが起こすアクション全てからそれらはある程度の推測が可能です。)。

文章プラットフォームではスクロール量、ゲームであればプレイ時間等で同じように当該コンテンツとそのユーザーの関係性の深さ(どれぐらいそのコンテンツに興味があるか。)を推測することができますが、Twitterはホームタイムラインを上下に眺めるだけで大半のコンテンツを消費することができてしまうため、他のサービスに比較するとユーザーの行動データが取得しにくく、パーソナライズ化が難しいというのは従業員が話している通りと言えます。

一覧ページ、詳細ページ、カートページ、購入完了ページといったように下層ページ(Z軸方向)にユーザーを奥へ奥へと誘導させる設計になっているストック型のサービスやユーザーのキーワード検索をトリガーにするサービスはパーソナライズ化は比較的実現しやすく、逆にTwitterのようなフロー型のサービスは深度やユーザーアクションが乏しいため、パーソナライズ化は実現しにくいという構造上の問題があります。

また、YouTubeにはチャンネルという概念があり、ゲーム実況や釣り、ガジェット紹介といったように趣味趣向別にクリエイターが複数のチャンネルを持つことができ、ユーザーはそれらをチャンネル登録して購読するというスタイルのため、ユーザーの興味関心を把握することもし易い設計になっています。翻って、Twitterにはチャンネルという概念が無く、配信者とコンテンツ(ツイート)がダイレクトに繋がっている設計になっており、コンテンツがカテゴライズできないため、YouTubeのように複数の話題を扱うためには複数のアカウントを持つ以外には難しいという状況があります。

レコメンド機能や広告の精度を上げるには、ユーザーの趣味趣向、その時に置かれているユーザーのシチュエーションや心理の把握が不可欠になりますが、現状のTwitterはこれらが難しい傾向にあるでしょうか。

良くも悪くもElon Muskにはダイナミズムがあるので、この辺をどのように解決していくのかが個人的に気になっているところであります。

posted by PFM